20231104
ローリング・ストーンズでWhole Wide World。
ローリング・ストーンズの新作はいろいろな形でこの番組の中で紹介したりしてますけども、「Hackney Diamonds」がリリースされたので、聴いてらっしゃる方も多いかと思いますけれども、この番組ではやっぱりがっちり紹介していかなければいけないだろうというところで、すごいですよ。18年ぶりですからね。下手すればもう18年の間って、バンドをデビューして、若いバンドなら一回ピークを迎えて解散して、それから再結成してみたいなそれぐらいの時間帯のタイム感がありますけれども、その中で久しぶりに出たのはこれ。いやあ、もうオジサンたち大喜び。そんな状況が展開されておりますけれども、みんなが言ってますけれども、この作品ができたすごく重要な要素は、アンドリュー・ワット(Andrew Watt)という非常に売れっ子の32歳のプロデューサー。ミックジャガー(Mick Jagger)にこれを紹介したのは、あのいつもローリング・ストーンズを助けてくれるドン・ウォズ(Don Was)が忙しかったらしくて、どうしようかなって言った時にポール・マッカートニー(Paul McCartney)が「アンドリュー・ワットっていうすごくいいプロデューサーがいるので、やってみたらどうなんだい」っていうそういうアドバイスから人選が行われたらしいのですが、アンドリュー・ワット自身も大ストーンズファンで、もうやりたいやりたいすごい俺にやらせろみたいな感じで、いかに自分がストーンズを好きかっていうことをアピールするために、もう何百回ライブ行ったとかって言うと何か不気味がられるから、スタジオに行くたびに、いっぱいツアーに行っているので、そのツアーで買ったTシャツを毎回毎回変えて着て来たっていう。かわいい奴ですよね。ストーンズに気に入られるだろうっていうそういうキャラが非常によく分かりますけれども、彼の大いなる貢献によってこのWhole Wide Worldのような非常にアグレッシブな、ストーンズのある意味すごい若々しい曲面みたいなのが前面に出たナンバーが作られたりしているのですけれども、全12曲。どの曲もすごく素晴らしいのですが、これは前に児島さんから紹介を受けた情報ですけれども、ポールが参加して、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)が参加して、レディー・ガガ(Lady Gaga)が参加して、エルトン・ジョン(Elton John)が参加して、エルトン・ジョンなんてピアノ弾いてるだけですからね。勿体ない使い方で歌わせりゃいいじゃないかと思うんですけれども、そしてストーンズファンにとってはビル・ワイマン(Bill Wyman)の参加というのもすごく大きい要素なんですけれど、そんな中でポール・マッカートニーがベースを弾いている、これもアンドリュー・ワットが仲介したそうですが、この曲でポールにベースを弾かせるっていうのもなかなかすごいなというそんなナンバーでございます。ザ・ローリング・ストーンズでBite My Head Off。
ポール・マッカートニーすごいベース弾いてましたね。メンバーはこの曲をパンクだって言っているのですけれど、この曲がパンクかどうかはあれなんですけれども、ポール・マッカートニーのベース。ものすごく音を歪ませて、「これこれ。これ最高じゃん。この曲にぴったり」っていうことで、ポールもノリノリで。ベースソロありましたね。でも、ただゲンゲンゲンってやってるだけでノリノリです。80のおじいちゃんが集まってこのグルーブ。恐ろしいですね。で、今回のアルバム。これもいろいろなところで言われていますけれども、チャーリー・ワッツ(Charlie Watts)が演奏している音源が使われている曲がありまして、そのうちの1曲を今から聞くのですけれども、ダンスナンバーで、これを最初キースは「こういうのをやるの」みたいなノリだったらしいですけども、「まあ、とにかくやろうぜ」ってロン・ウッド(Ron Wood)がキースにけしかけて、チャーリー・ワッツもこういうディスコ乗りっていうのは好きじゃないんだろうけれどもっていうところで、チャーリー・ワッツがこれを叩いてる時の話をキース・リチャーズがこう言っているのですよね。
「俺はチャーリーのことをわかっているから。彼はディスコビートを特に気に入っているわけではなかったけれども、でも1度ノリになったら、この曲を聴くたびに少し口を歪めて笑うチャーリーの顔が目に浮かぶんだよ」
って。いやぁ、おじさんこういう話大好きですね。最高のエピソードだと思うのですけれど、こういうコメントとシーンを思い浮かべながらこれを聞くと、大変思いやるなぁということで、ローリング・ストーンズ聞いてください。Mess It Up。
もうおじさんファンとしては大変満足できる素晴らしい作品で、18年というインターバルはいろいろありますけれども、「俺たちは少しサボりすぎたんだ。ちゃんと作ろう」って言って、メンバーの心意気がすごく感じられていて、ただその時はもう本当に曲の断片ばかりがあって、100個ぐらいピースがあったみたいで、これは誰がまとめるんだっていうなった時に、このアンドリュー・ワットっていう若い才能が現れて、見事にそのパズルを組み合わせて、素晴らしい作品を作り上げた、そういうアルバムだと思います。で、概ね好評ですし、イギリスでは初登場1位という素晴らしいチャートを獲得したのですけれども、僕がわりと見ているいわゆるアメリカの一番ある意味有名なレコードレビューサイトみたいなのがあるんですけれども、そこでですね。なんと普通のアルバムは7点台、良くて8点台ぐらい取って、今月のベストだと9点台ぐらい取るのですけども、このストーンズの最新作は4点台の点を付けやがって、ものすごく腹が立ってですね。違うだろうって。確かに名前がでかけりゃとにかく喜ぶお前らおやじじゃなくて、やっぱりちゃんとクールに批評しようよっていうその姿勢はいいけれども、失礼でしょ。やっぱり駄目なものはダメって言うその姿勢は素晴らしいけれども、いいものはいいっていうその勇気もやっぱり必要なんじゃないかなと私は思ってですね、すごい腹が立ったんですけれど、まあ皆さんはそんなことは気にしないと思いますが、素晴らしい作品を作ってくれてうれしいと思います。おやじだってそんなに甘くはなくて、良くなけりゃそんなに買わないし、視聴しないし、いいとやっぱりちゃんと評価するっていう、それはちゃんとリスナーというのはそういう判断基準を持っていると思います。
アルバム最後に彼らのバンド名の由来になったマディ・ウォーターズ(Muddy Waters)のRollin' Stone。この曲をミックとキースがやっているんですよね。なかなかすごいです。ザ・ローリング・ストーンズでRolling Stone Blues。
これは意図的にモノラルで録音されていて変だぞと思った方もいるかもしれませんが、これはこういうものです。このRolling Stone Bluesみたいなのを最後にやるとみんな「これ最後のアルバムってことなんですか」みたいなことを聞かれるけれども、そういうことを俺たちは40年間質問されてきて、何言ってんだと思ったんだけれども、「関係ないよ」と。ローリング・ストーンズは一言一言が重いですけれども、彼らの発言なのでやっぱり素晴らしいなと思ったのは、キーズが、「もはやローリング・ストーンズというは自分たちを超えているんだ」と。自分たち個人を超えて存在している、そういうものなんだと。だから続けなければいけないんだと。本当にロックバンドというかポップミュージシャンというかそういうものって、そういう気概を持って進んでいかなければならないんだなという意味で、ストーンズ偉いと思いました。
cf.この回が現状、渋谷陽一氏の最後の放送です。渋谷氏も「もはや渋谷陽一というのは自分を超えている」存在なので、ワールドロックナウは今年3月いっぱいで終了ですが、元気に復帰していただきたいですね。