音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

    

ケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)、カマシ・ワシントン(Kamasi Washington)、フライング・ロータス(Flying Lotus)の音の印象は、サンダーキャット(Thundercat)の音であった説

20170303 

中村明美「サンダーキャットというアーティストをご紹介します。最近西海岸で革命的ともいえるような音楽が多く生まれてきていると思うのですが、例えばヒップホップではケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)とか、ジャズではカマシ・ワシントン(Kamasi Washington)、エレクトリックシーンならばフライング・ロータス(Flying Lotus)とかこれまでなかったような音楽を取り入れながらどんどん前進している、画期的な音楽シーンが各ジャンルにあるんですが、このサンダーキャットというアーティストはこの三人と仕事をしていて、コラボレーションをしています。もともとは音楽一家に生まれていて、すごく楽器も何でも弾けて、ジャンルもいろいろなものがこなせるということで、R&Bからソウルからエレクトリックからメタルまでやってしまうというすごく器用な面があるので、そういうことも生かされて、こういういろいろなジャンルの人たちと仕事をしているんだと思います。彼の作った最新作のすばらしいところは、そういういろいろなジャンルというものを自分ひとりでやってしまっている所で、このアルバムはR&Bもあるし、エレクトリックもあるし、ジャズフュージョンもあるけれども、少しずつそれが異端である。超メジャーというわけではないのですが、カッティングエッジというか、すごくクールなバージョンをやっているのが彼の音楽なんですけれども、この音楽の聴きどころといいますか良いところは、ケンドリック・ラマーだとかファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)とか、彼がこれまで一緒にやってきた優秀なアーティストがこのアルバムに参加しているという所と、ケニー・ロギンス(Kenny Loggins)とかマイケル・マクドナルド(Michael McDonald)みたいなアーティストとも一緒にコラボレーションをして、そういうものをかっこよくしてしまえる才能があるというか、そこが面白いところだと思います。最近は、カニエ・ウェスト(Kanye West)から始まったと思いますが、ビヨンセ(Beyonce)なども最近の若いインディーロックバンドなど才能ある人達とコラボレーションをしながら音楽を前に進めてきたようなところがあるので、彼もその一端にいるということで、注目していただければいいと思います。」

渋谷陽一「ジャケットを見たんですけれども、すごく笑えるジャケットで、水から目だけボコッと河童みたいに顔を出しているというもので、きっとこの人面白い人なんだろうなぁと。これだけいろいろな人と合うということは、音楽的なこともさることながら、キャラが親しみやすいんだろうなぁと思ったりしたんですけれどもね。」

中村「そうでしょうね。そういうこともあっていろいろな人とコラボレーションができると。」

渋谷「それでもサンダーキャットを聞いてください。Where I’m Going。」



渋谷「今回のアルバムはわりと歌ものというか、彼自身が歌っているんですけれども、そういう方向性にアルバムのコンセプトはふられているんですけれども、でもやっぱりベースを聞きたいですよね。超絶ベース聞いてください。Uh Uh。」



渋谷「今回のアルバムの特徴的なのは、一曲一曲が短い。全部で24曲入っているんですけれども、それでも十分な世界が表現されている所を聞いてください。3AM。」



渋谷「本当にこの作品はジャンルもいろいろ超越していて、そして一曲の短さとか構成とか、ありとあらゆるものに冒険、そして実験が試みられております。そうした意味でいろいろなジャンルを超越して不思議な世界に行っているこの曲が一番象徴的だと思うんですけれども、アルバムのクロージングナンバーでマック・ミラー(Mac Miller)がフューチャーされたナンバーです。Hi。」



渋谷「サンダーキャットがどういうアーティストとやっていたのかを中村さんに紹介していただきましたけれども、ケンドリック・ラマーもカマシ・ワシントンもフライング・ロータスも音の印象はこのサンダーキャットのベースの印象だったんだなぁと。どのアーティストの作品にもめちゃくちゃクリアにサンダーキャットのベースの刻印がおされていて、これほどキャラの立ったベースはすごいし、今のモダンな非常にボーダレスなブラックミュージックの一つのテイストを作っているのがこのサンダーキャットなんだと。よくいろいろな音楽的なジャンルがクロスオーバーをして、ロックとかジャズとかソウルとかそういうような区分けだけでは語れないどんどんそういうポップミュージックが作られていっているという話をしたことがありますけれども、そうした意味でこのサンダーキャットの存在はすごく象徴的な感じがします。今回このアルバムにはマイケル・マクドナルドとかケニー・ロギンスとかそういう彼にとってはちょっと遠い存在のアーティストがフューチャーされていてビックリしたんですけれども、僕は一種の洒落なのかなぁと、マイケル・マクドナルドって僕は苦手だなぁと、きっとサンダーキャットもそんなに好きではないんだろうなぁと思っていたら、資料を読むと、「僕はマイケル・マクドナルドみたいなミュージシャンになりたんだ。彼こそが僕の目標なんだ。」と書いてあって、「えっ、マジ・・・。」と。私的にはせっかくのドゥービー・ブラザーズ (The Doobie Brothers) を破壊した男マイケル・マクドナルド。AORにしてしまった男マイケル・マクドナルドで敵キャラだったんですけれども、もっと広く心を大きくもって、通常のジャンルなど考えずに音楽の面白さや楽しさを見ているサンダーキャットにとっては、自分のアーティストの目標がマイケル・マクドナルド。なんかすごく私的には反省を促されました。要するに音楽というのは従来的な思い込みからどんどん離れていろいろな形に変化していくんだなぁと、それをサンダーキャットに教わる渋谷陽一、そんなところでございました。」

 参考)、ドゥービー・ブラザーズ (The Doobie Brothers) はマイケル・マクドナルド(Michael McDonald)が加入してドゥービー・ブラザーズではなくなった説


ジーザス&メリー・チェイン(The Jesus and Mary Chain)に学ぶ、再結成バンドはどのような音作りをすべきなのか

20170224

児島由紀子「なんと19年ぶりのニューアルバムを出すジーザス&メリー・チェインについてです。2007年に再結成していたんですね。過去数年、「Psychocandy」の30周年記念ツアーということで、ライブはちょくちょくやっていたんです。ジム・リード(Jim Reid)とウィリアム・リード(William Reid)のリード兄弟が久々に会って、いろいろ曲も生まれたらしいんですけれども、だったら新しいアルバムを作ってしまおうということで作ってしまったそうです。」
渋谷陽一「すごいですね19年ぶりって。でも最近こにパターンって驚かなくなりましたよね。」

児島「そう。だから最後に残っているのはレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)とザ・スミス (The Smiths) でしょう。絶対再結成しないだろうというか。」

渋谷「でもレッド・ツェッペリンは一瞬やったからね。」

児島「でもあれは再結成っていうんですかね。」

渋谷「まあ一応再結成で。でも、19年ぶりのアルバムというか、久しぶりの再結成でも熱く迎えてくれるファンがいるっていうことはすばらしいですね。」

児島「いるんですよ、未だに。っていうか、ジーザス&メリー・チェインって80年代以降のUSオルタナティブ勢に非常に影響を与えているんですよ。だから、それ以降もUKで人気が落ち着いてきたころでも、アメリカの方では人気があったんですね。ツアーもアメリカできちんとやっていましたし。」

渋谷「彼らのわかりやすいロックというのは、時代的な普遍性を持っていますよね。」

児島「シューゲイザーの、いわゆるノイズ、音響系の元祖じゃないですか。だから、日本でも根強い人気があるバンドじゃないですか。」

渋谷「ある一定の世代にとっては、刷り込まれた音ですからね。」

児島「そう。今度の新曲を聞いた時でも、「あのジザメリだ」って。ギターフィードバックを聞いた瞬間に思ってしまいましたけれども。」

渋谷「僕もちらっときいたんですけれども、こういう言い方も何なんですけれども、新しいことを変にやろうとしないで、自分達の得意技をきっちりとおさえていこうという姿勢が、逆に成功していますよね。」

児島「そうですな。元祖なんですから。元祖なんだから今更他人の思惑を気にしないで、我が道を行くでいいんですよ。」

渋谷「そうですね。その正しさが本当によく出ていますね。」

児島「らしいですよね。自分達がどういう受け入れられ方をしているのかよくわかっている音ですよね。」

渋谷「そうですよ。再結成ライブに行って新曲を聞かされた時のガッカリ感っていうのはないですからね。」

児島「そう。」

渋谷「やっぱり、昔の曲をしっかりやってくれる、新曲でも昔の世界観をちゃんと再現してくれる。これが基本ですよね。」

児島「そうですよ。新曲は1、2曲で十分ですよ。私いつもおもうんですよ。再結成バンドのライブに行くと。」

渋谷「そうですよ、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)だって一曲目はCan't Buy Me Loveですからね。」

児島「さすが、わかってらっしゃる。」

渋谷「この新作も受け入れられるんでしょうし、熱いファンに支えられて、そしてその影響下にある若いバンドも、若いファンもついてくるのかもしれないですね。」

児島「今の、UKだけではなくUSオルタナティブの連中でも、ジザメリを知ってますからね。」

渋谷「本人達も気持ちがいいのかもしれないですね。」

児島「そう思いますよ。ただ、相変わらずこの年になっても兄弟喧嘩は続いているらしくて、新曲は2007年くらいに書き始めたのに、アルバムはやっと今頃できたみたいな。」

渋谷「それもジザメリって所でいいんじゃないですか。」

児島「元祖兄弟喧嘩バンド。これが元祖じゃないな。元祖はザ・キンクス (The Kinks) のデイヴィス兄弟ですね。」

渋谷「そうですね。それもかなり深刻でしたけれどもね。それでは、そのジーザス&メリー・チェインの正しい新曲を聞いていただきましょう。Amputation。」



 

ダーティー・プロジェクターズ(Dirty Projectors)、失恋によってサウンドが変わる

20170217 

中村明美「ダーティー・プロジェクターズの新作についてです。ダーティー・プロジェクターズは2000年代以降にデビューした、ブルックリン発のすごく重要なバンドの一つなんですけれども、インディーバンドでありながらそのサウンドがすごく知的で、ポップミュージックやトラディショナルな音楽を核にしながらも、その中でいかにオルタナなサウンドを提示していけるのかという事に挑戦をしている、個人的にはすごく大好きなバンドです。新しい音楽の在り方を常に発表してきているバンドだと思うのですが、現在のアメリカのメジャーシーンもそういう新しいサウンドをいかに取り入れていくのかということに興味がある人達が多いわけで、例えばカニエ・ウェスト(Kanye West)なんかは早速ダーティー・プロジェクターズのサウンドを取り入れて、一緒にポール・マッカートニー(Paul McCartney)やリアーナ(Rihanna)との共演の時に、ダーティー・プロジェクターズを使用していると、そういう重要なインディーバンドのひとつなんです。彼が今回新しくアルバムを作ったのですが、その作品の重要なところは、ダーティー・プロジェクターズといっても常にメンバーが変わっておりまして、その中心人物のデイヴ・ロングストレス(Dave Longstreth)を中心にずっとやってきたのですが、その時々のアルバムに合わせてメンバーを変えてきたバンドなんですが、ここ最近は数枚すごく大成功していて、それによってアルバムのサウンドも少し固定したかなぁという感じだったのですが、その要であったハーモニーの女性と、実は彼は付き合っておりまして、それで別れてしまったという問題が発生したことによって、サウンドを変えなければいけないという、彼女と一緒にハーモニーを作れなくなってしまったわけですから、バンドを変えなければならないというそういう所に立たされて、ダーティー・プロジェクターズは常にサウンドを変えてきたことが売りではあったのですが、彼としてはせっかく音が固まってきたところでどうしようと。しかも失恋してしまったので、アルバムを作るところか曲なんか作れないやという心境だったらしいんですけれども、自分が書いていた曲をヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)のエズラ・クーニグ(Ezra Koenig)とか優秀なプロデューサーのリック・ルービン (Rick Rubin)なんかに聞かせてみたら、君はいつも音が変わっていることが特徴だったじゃないかと言われて、そうかと思って思い直してアルバムにしようと思って作り直したアルバムです。そのために新たなメンバーを起用して、失恋のアルバムをいうのは逆に言うとすごくトラディショナルなソングライティングのテーマだと思うのですが、ダーティー・プロジェクターズらしく、その悲しみというものを彼ららしい新しいサウンドで打ち出した、すばらしい傑作が出来たと個人的には思っています。本人にインタビューをしたのですが、一人になってしまったので、ライブをいったいどうやればいいのかと分からないけれども、メンバーを集めるのはすごくエキサイトしているという風に言っておりました。」

渋谷陽一「音を聞いて、違うバンドになったじゃんと最初は思ったのですが、なるほどそういう事だったのかと。でもこれはこれですごくいいと思いますね。」

中村「そうですね。サウンド的にも、悲しみというものをどういう形でいろいろな方法で表せるのかという事を実験したと言っていたので、そういう意味で楽しいアルバムだと思います。」

渋谷「それでは注目のダーティー・プロジェクターズのナンバーを聞いてください。Keep Your Name。」
 

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