19980508
ニヒリズムを捉えて、居心地の悪さを表現するにはこの人しかいないというマニー・マーク。ビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)の四人目のメンバーとしてよく知られているキーボード奏者マニー・マークのアルバムを聞いていただきます。まずは一曲目。Push the Button。
ライナーノーツがついてまして、バッファロー・ドーター(Buffalo Daughter)の山本くんがマニー・マークのことをちょっと書いてまして、その原稿がとてもいいので引用させていただきます。「数年前自分のバンドのリミックスをマニー・マークに頼んだ。なかなかあがらない。絶不調だという噂も流れた。やきもきした。ようやくあがったテープを聴いたらトラックはほとんどそのままで自分の歌声をのっけているだけだった。すごく笑った。面白い人だなぁって。」これはマニー・マークっていう人のキャラクターをあらわしたいい原稿です。マニー・マークは誠実に対応した結果こういうことになったと思うんですけれども、今聞いていただいたように非常に優れた音楽感覚をもっている人ですけれども、ただ70年代ファンクをそのまんまやるのではなくて、実にそれに対する居心地の悪さが的確に表現されているものになっています。続いて聴いていただくナンバーは、Tomorrow Will Be Like Today、つまり明日は今日と同じだという考えようによっちゃかなりニヒルな歌なんですけれども、ただこれは非常にニヒルではない歌です。明日は今日と同じだというのをしょうがないではなく、だからこをいいんだというそういう肯定性のもとに歌っている歌なんですね。だから安直な希望ではなく、現実のリアリズムは踏まえているけれどもそのなかで前に進んでいこうという、70年代ファンクが90年代で有効ではなくなったというニヒリズムをもう一回乗り越えてそういう音楽に向かおうっていうはっきりとして姿勢がマニーマークにはあると思います。Tomorrow Will Be Like Today。