world rock now 20010112
伊藤政則「イギリスのミュージシャンがいかにソウルが好きかという話ですよ。ルーク・モーリーというのは昨年解散したサンダー(THUNDER)というバンドのギタリストで、サンダーというのはステージでザ・フー(The Who)とかいろいろなカバーをやるんですけれども、ルーク・モーリーはアル・グリーンとかそういうソウルが好きなんですよ。これなんかはアル・グリーンに捧げた曲で、もろアル・グリーンっぽいんですけれども、イギリス人は非常にソウルが好きじゃないですか。最近そういうソウルをロックと結びつけてやる人が少なくなっていてるんです。そんな中でルーク・モーリーは非常に古典的な手法ではありますけれども、もろにやってます。すいませんが本当に真剣に聞いてくださいね。集中してお願いしますよ。ルーク・モーリーでLovin' You。」
伊藤氏拍手
渋谷陽一「そうか、まんまじゃない。これ批評性なさすぎだよ。伊藤。」
伊藤「イギリスのミュージシャンがいかにソウルが好きか。これはアル・グリーンに捧げた曲ですから、わざとアル・グリーンぽくしているわけ。」
渋谷「そこに何か解釈とかがないと。時代性がないと。」
伊藤「ぜんぜん人の話聞いてないね。」
大貫憲章「渋谷君、曲が流れ出した途端いきなり笑ったもんな。ダハハハハハ。なにこれって。」
渋谷「嫌いじゃないけど、これまんまだし。伊藤さんが風呂でなごんで聞いているっているそういう絵しか浮かばないんですよ。」
伊藤「渋谷君はおいとこう!!かつて英国にはフランキー・ミラー(Frankie Miller)だとか黒人のソウルやブルースをまんまとはいわないけれど、継承しているシンガーとかギタリストとかがいるわけですね。」
渋谷「ブルーアイドソウルとして一つのジャンルが確立されていましたよ。」
伊藤「最近はそれをダイレクトに表現する人が減ってきていて。」
大貫「今はうまい歌い手が少ないもん。」
伊藤「そういう意味で、ブリティッシュロックの引き出しを持っている人の中にはソウルやブルース、まあこのルークのソロアルバムの中にもさまざまなブルースっぽいものも入っていたりするんだけれども、そういう引き出しを・・・。」
大貫「なんていうアルバム?」
伊藤「「El Gringo Retro」 という。」
大貫「まさにレトロという・・・。」
伊藤「レトロというのはスペインでレコーディングしたときに、どういう音楽やっているのって聞かれたときに、エルグリーングレトロだと。外国から来た方が今のトレンドの音楽ではないソウルやブルースみたいなものをやった・・・。」
大貫「だからエルグリーングレトロというの。」
伊藤「らしいよ。」
伊藤「だから俺はかつての60年代70年代初頭のブリティッシュロックシーンにはソウルやブルースを非常にうまい形で継承してつなげていった人達がいたと。そういう意味でルーク・モーリーもそういう牙城に迫ろうと思ってはいないんだろうけど、自分の好きなアル・グリーンを・・・。」
大貫「いないの?」
渋谷「方向性はだそうというね。」
伊藤「自然体なんだよ。だからそういう音楽がイギリスにあってもいいじゃないかと。サンダーみたなバンドはイギリスやヨーロッパに活動する場所がないという理由で解散したんだよ。すごく悲しい理由だと思うの。」
大貫「メタルとかのイメージを持たれすぎたんじゃないの。」
伊藤「サンダーっていうバンド名がそうだったからなのかもしれないね。でも、音楽がどんどんビジネスに進んでいくのもいいんだけど、片側にはアートや伝統美があってもいいと思うんだよ。そのバランスが上手くとれないでバンドが次々解散していくのは悲しいなと。」
渋谷「ただ、いまのヒップホップやミックスチャーというのはもっとそれを批評的に、トレンドなもので取り入れているんだけれども、黒人音楽の影響というのはものすごく強いけれども、これはまんまだからなぁ。」
伊藤「だからわからない人だね。アル・グリーンのトリビュートだって。まんまじゃなかったらトリビュートにならないじゃん。」
渋谷「トリビュートをしながら、そこに時代性を感じさせるところに本当の・・・。」
伊藤「時代性感じさせるでしょう。古いなぁという。」
渋谷「開き直ってどうすんだよ。」