ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

アクアラング (Aqualung)に学ぶライブをやることの大切さ

world rock now 20070413

 アクアラングでCinderella。



 アクアラングというのはマット・ヘイルズ(Matt Hales)という人の個人的なプロジェクトなんですけれども、私の中におけるアクアラングのイメージというのは、典型的なイギリスの内省ロックというか内省音楽で、ブツブツと繊細なことをいいながらはっきりしないなぁみたいなそういうイメージだったんですが、本人自身も認めておりまして、ライナーノーツの中にあるインタビューの中で「前のアルバムは言いたいことがたくさんあるのに言えない、あるいはあえて言おうとしないような人物だったんだよ。ただヒントになるようなことをささやいて、他人が汲み取ってくれることをひたすら待っているんだ。それが今回のアルバムでは、同じ人物がパーティーに行くようになって次こそはちゃんとしゃべろうということを何度も繰り返した後に、今回は「えいっ」と口を開いてみたんだよ。口を開いたというか言葉を飲み込まなくなったんだよね」という。こんな感じの作品です。ですから音も変わってきました。モゾモゾと誰か気持ちを汲み取ってくれるとうれしいなぁという感じから、今回のアルバムまでの3年半のインターバルの間にアメリカのツアーをやって、実際に観客の前に立って自分の音楽をやって、彼自身もそこで学んだわけですね。モゾモゾ言ってるだけではいけないって。というわけで今回のアルバムはもっとはっきりとガンガンとやっていこということで、バンドサウンドで作ることがいいだろうということで、バンドサウンドでとりあえずレコーディングしたらしいんですよ。ただ、バンドでやってしまうと彼自身の本来的な繊細さみたいなものが失われてしまって、試行錯誤をしていて3年半かかってしまったわけですが、最終的な作り方は自分自身で細かくいろいろな音を積み重ねていって、繊細な音世界を作るんだけれども、今聞いていただきましたように最初の部分はアクアラングですが、途中からミューズ(Muse)化してドカーンと大げさな展開で、この辺か彼自身の戦略のようです。本人もインタビューで「さんざんいろいろなことをやったあげく、どうあがいても自分達はロックバンドにはなれないんだということを知ったんだ。ちょっとくらいスピードをあげたからといって、着る物をかえたり、腕にタツゥーをしたりしなくてもいいんだということを悟ったんだ。そうすることでアクアラングにおける絶対的な真実を受け入れたというか、どんな虚勢をはってみたところで、アクアラングの中身は傷つきやすい繊細な少年であるってことだよね(笑)」と書いてありますが、所詮はそんな所なんですが、それを上手に見せるスキルを身につけたということなんだと思います。そんな変化を感じてくれればうれしいなと思います。Something to Believe In。



 毎回言っていることですが本当にミュージシャンにとってライブは大切なんだなぁと。レコードを作っているときは、自分の中の物語と世界観で完結していているんですが、ライブは自分自身ではこれはすごいだろうと思っていても、現実的に「しら~」としている客席を見れば、「これは届かないんだなぁ」という思いをちゃんともつことができて、今や音源そのものを現金化するということがネット社会において困難になってきているのでビジネスの上でもライブというのは重要でしょうし、それから表現者を鍛え上げるという意味でもライブというのは重要なんだなぁという感慨を抱かせる作品でありました。ライブで鍛え上げられたアクアラングをもう一曲聴いてください。Rolls So Deep。



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