ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

渋谷陽一、初期ザ・ビートルズ(The Beatles)を語る

20131122 

1、「On Air -Live At The BBC Vol.2」

 ビートルズでI Saw Her Standing There。



 ビートルズの「On Air -Live At The BBC Vol.2」の中から聞いていただきました。「Live At The BBC Vol.1」というのが1994年に出ているんですけれども、これはもう出てすぐに500万枚という天文学的なセールスを記録した大ヒットアルバムになったんですけれども、それのVol.2ということで、未発表音源37曲というものすごいボリュームの全63トラック。といっても会話が23トラック入っているんですけれども、二枚組のものすごいボリュームのアルバムが発表されました。タイトルからどういうものかが分かるんですけれども、BBCでライブをやった音源を集めたもの、といっても例えばレッド・ツェッペリンの「Live At The BBC」みたいなものだと一回の演奏でコンサートくらい長く演奏して、それをパッケージされるというのはあるんですけれども、ビートルズの場合は年がら年中BBCにライブという形で出ておりまして、当時はそんな長いライブを延々やるような番組はなかったので、数曲やってそれがオンエアーされる、それを日常的にしょっちゅう繰り返していて、そういう音源がものすごくたくさんたまっていたわけですね。それをVol.1、Vol.2という形で、まだあるんじゃないのかなぁとも思いますけれども、出てきているわけでございます。今聞いていただいてもわかるように、本当に初期のビートルズの瑞々しい音源がたくさん収められております。典型的なビートルズ世代の私なんかは何とも言えない気持ちになっていきます。

2、ビートルズはうまいバンドであった説

 僕はこのアルバムを聴くのと同時に、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)がジョージ・ハリスンのドキュメンタリー映画をとりまして、これも見ておりまして、ビートルズ漬けの数日間を過ごしたわけですけれども、この映画は非常によくできたすばらし作品だったんですが、そこで初期のビートルズについてのいろいろな話が出てきていて、エリック・クラプトンが初期のビートルズについて語っているんですけれども、1960年代に彼もヤードバーズという形でイギリスのロックシーンの中ですごく重要な役割を果たしていって、その後クリームになったりしていくんですけれども、「ビートルズを最初に聞いたときにどんな印象でしたか」っていう質問に対して、「とにかくうまいバンドだった。うまいバンドでびっくりした。」っていう表現をしているんですね。エリック・クラプトンなんてイギリスの音楽シーンの頂点に立ってるようなミュージシャンですけれども、彼にとってもビートルズは非常にうまいバンドだったという印象があるようでございます。今はそんな形でビートルズは語られることはないんですけれども、今もう一度この初期の若々しい頃の音源を聞くと本当にうまいバンドだったんだなぁと改めて思います。技術的にものすごくハイテクニックなものをやっているというよりは、バンドとしてのアンサンブル、そしてポール・マッカートニーとジョン・レノンの歌のあまりにも圧倒的なすばらしさ、そしてジョージ・マーティンがインタビューで、プロデュースを頼まれてビートルズを見たとき、「「なんか地味な奴らだなぁ。リードボーカルがいないなぁ。」と今考えれば信じられないような感想を僕は持ったんだよね」ということを言っていて、だったら全員でやらせればいいかなぁと思ったんだという発言があって、それはそれで面白かったんですが、これもあまりにも当たり前であまりみんなが言うことはないですけれども、ビートルズってリードシンガーが二人いるわけで、それぞれがリードをとるという形式もあるんですけれども、二人がコーラスという形でリードボーカルをとるというスタイルは、ビートルズ以外にそんなにたくさんのバンドはいないわけです。そうした意味でもビートルズは非常にユニークなわけですけれども、まさにポール・マッカートニーとジョン・レノンというとんでもないミュージシャンととんでもないボーカリストが、その二人が同時に歌を歌ってそのコーラスがリードボーカルというそのアンサンブルと圧倒的な存在感が何をも言わさずライブパフォーマンスを、エリック・クラプトンはこんなうまいバンドがねぇと思わせるものに持っていくんですけれども、そんなすばらしい演奏を、あまりにも有名なナンバーを二曲続けて聞いていただこうと思います。She Loves You。Please Please Me 。





3、ビートルズはパンクであった説

 デビュー当初というか、デビューすることもできない頃のビートルズというのは、イギリスの非常に汚いところでみんなで共同生活をしていたと。その時代を知っている人が語っているんですけれども、映画館のスクリーンの裏側にある窓も何もない本当に小さなところで全員が着の身着のまま、洗濯もせずに同じ服ばかり着ていて異臭を放っている、すごい穴倉のようなところで全員が暮らしていて、みんなでバンド活動をやりながら食うや食わずの状況で一生懸命やっていたという話をしていて、リンゴが「俺たちは本当にパンクだったんだよ」と。「音楽以外信じるものもなくて、収入も何もなくて、ロックンロールをやるんだということを信じて、バンド活動をやっていて、当然ものすごく貧しくて、でも自分たちの才能と音楽だけを信じてやっていたんだ」という。本当にパンクバンド以上にパンクというか、佇まいもイギリスのワーキングクラスのすごく追い詰められた状況の中で、一縷の光を音楽の中に見出しながらやっているというビートルズのリアルが、すごく生活の中から感じられていて、ポール・マッカートニーがこのアルバムにライナーノーツを書いているんですけれども、そこのしめの言葉が「僕はいつもみんなにこう言っている。僕らはなかなかいけてるちょっとしたバンドだったと。」って言っているんですが、普通に読むとちょっとわからないですよね。なんでビートルズが「なかなかいけてるちょっとしたバンド」なのかと。でもそういうエピソードを聞くとすごくよく分かりますよね。彼らは今でこそ巨大化して伝説化して20世紀最大のポップアイコンになっているからビートルズがビートルズですけれども、当時のビートルズというのは「なかなかいけてるちょっとしたバンド」だったんですよ。そして、ブラックミュージックの誰も知らないような楽曲を自分たちなりにカバーして、でもものすごくエッジなロックを鳴らし、ものすごく貧しい生活をしながらも自分たちの音楽をやって、でもエリック・クラプトンにうまいねって言わせるような、そういうようなバンドだった。まさに、ポールの言葉を借りれば「なかなかいけてるちょっとしたバンド」。例えば、セックス・ピストルズなんかはパンクパンクって言ってますけれども非常に産業的な構造の中で芸能界的に作られてバンドであるということはよく知られていることですけれども、それはそれで面白いし素晴らしいと思いますけれども、ビートルズもいわゆる世間的なイメージと現実はすごく違う、まさにアンダーグラウンドな、ブラックミュージックが大好きな「なかなかいけてるちょっとしたバンド」だったわけですね。で、自分たちがカバーする曲を探すのにいろいろ苦労をしていて、「やっと見つけたアイズレー・ブラザーズ(Isley Brothers)のTwist And Shoutは結構通好みのレコードだった。」と。これはポールが書いているんですけれども、「ロンドンに行った時に、アイズレー知っているんだぁって言われたのをよく覚えている。」と。彼らはこのような中で音楽をやっていてその中で頭角を現したと。それがビートルズの一つの側面であったわけであります。そんな彼らのロックンロールな、当時の佇まいを知れるナンバーを三曲続けて聞いていただきます。The Hippy Hippy Shake 。Roll Over Beethoven。Twist And Shout。








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