ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

スティーヴン・マルクマス(Stephen Malkmus)、自分の居場所を探してフラフラする

20140110

 ペイブメントの中心メンバーであったスティーヴン・マルクマス。ソロキャリアを前作で10年重ねていて、そんなになるんだなぁという感じがします。今のアメリカのインディーシーンのお手本になったような、そういう音楽的世界を作ってきたアーティストですけれども、逆に言うと自分自身が作った原典というか教典みたいなものが今の若者に全面的に取り入れられて、みんなに崇め奉られているという所に自分自身の居心地の悪さを感じて、バンドを解散したり、再結成したり、非常に戸惑ったソロアルバムを作ったり、いろいろなことをしながら自分自身の在る場所みたいなものを探し続けているスティーヴン・マルクマスなんですけれども、前作はベックのプロデュースのもとに「まあ俺の居る所ってこういう所かなぁ」みたいな感じの立ち位置をしっかり見つけて、その延長線上に今作があります。今回はベックがプロデュースに入っておりませんけれども。まずは一曲、Planetary Motion。



 自分自身のいろいろなものに踏ん切りがついた前作のソロアルバム。それで自由になったスティーヴン・マルクマスの世界がすごく今回の作品でも開放された感じで作られている感じがします。ペイブメントを解散した理由をスティーヴン・マルクマス自身は「非常に90年代が生んだバンドだったのだから90年代とともに消えていくんだ」みたいなことを言っていたんですけれども、その90年代的な世界観の中で今の数多くのインディーロックバンドの原典となるべき彼らなりのインディーロックを鳴らしていたわけですけれども、その世界観というのはまさにベックのLoserという「戦わずして負けている」みたいな一種独特の敗北感というか、どこでもない自分たちみたいな皮膚感覚があると思うんですけれども、ベックにしろスティーヴン・マルクマスにしろそういうものをずっとこれからも引きずり続け、でもLoserの後に何を鳴らすのか、あるいはLoserでありながら何を鳴らすのかというテーマとすごく向き合いながら生きていかなければいけないわけで、例えばスプリングスティーンやニール・ヤングみたいに「俺たちは戦うんだ」みたいなことをやれている世代って幸せだろうなぁみたいな、私もその世代に属するんですけれども、そこに乗り切れない自分達ってどうしたらいんだろう、でも音楽はやりたいし、でもちゃんとやらなくちゃみたいな、そういう所を延々続けなければならないというのは、なかなかきついと思うし、でもだからこそ面白い音楽ができていくんだと思います。で、そんな彼ら自身の世界観みたいなものをこのアルバムの中で、Rumble at the Rainboという曲があってですね、虹の所でフラフラというまんまな邦題がついているんですが、実にスティーヴン・マルクマスらしい歌詞なんですけれども、

  さあ来いよパンクロックの墓場へ
  古代のバカ共とスラムダンクしなよ
  僕らは回帰する僕らのルーツに回帰する
  新材料なんてない
  カーボーイブーツだけ
  君は覚えているかい
  あのスリルとラッシュを
  君だってまだシーンの中にいる
  今夜おいでよ分かるさ
  ここにいる奴らは誰も変わっていないしこれからも変わらない
  僕らは一体パンクのどの世代なの
  谷間の奥でジョニーサンダースを崇拝しているんじゃない
  おかしいね
  ややっこしいね
  エモも気取らない
  食えないストレイジエッジでもない
  
 これでどうエモーションな音楽を作るのかという所と戦っているわけですからね。面白いと思います。どんな曲になっているのか聞いてください。Rumble at the Rainbo。


 
 この曲を聞いて私は爆笑しましたけどね。最高だなと思って。実に彼ららしいロックと時代との向き合い方がすごく象徴的に出ていて、頑張ってくれよ最高だよ君たちっていうそんな感じでございます。もう一曲聞いてください。Chartjunk。




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