ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

キザイア・ジョーンズ (Keziah Jones) に学ぶ、アフリカの人々はまだ救われる準備ができていない説

20140124

 キザイア・ジョーンズでAfronewave。



 キザイア・ジョーンズの5年ぶりのアルバムということになります。音を聞いてしまったので今更キザイア・ジョーンズの説明をすることもないと思いますけれども、非常にアフリカなビート感覚にロック、ブルース、ファンクとありとあらゆる音楽的要素を非常に洗練された形で混然一体となって自分自身のスタイルを作り上げる、そういうキザイア・ジョーンズ。そうした意味では彼自身の音楽的なスタイルと評価というのは定着しているんですけれども、今回は5年ぶりの作品ということで、かなりユニークなコンセプトの下に作られたアルバムでございます。タイトルは「Captain Rugged」というタイトルがついているんですが、実はCaptain Ruggedという主人公がいて、その主人公が大活躍する物語で、Captain Ruggedはジャケットをみるとキザイア・ジョーンズ自身みたいなところもあるんですけれども、ヒーロー物なんですね。どういうヒーロー物かというと、彼自身が説明しているんですけれども、

  彼は軍の人間でニジェール・デルタ (Niger Delta) に配置される。デルタでは石油をめぐって対立が起こっていたが、実際には政府と石油会社が癒着していて、それを知った彼は軍人としての使命感を失ってしまうんだ。自分の戦いには意味がないと考えてしまう。それで彼はラゴス(ナイジェリアの旧首都)に行き、そこでさまざまな人に出会ってこれまでとは違った視点でナイジェリアを見るようになる。そして軍も真実を隠していることに気が付くわけだ。彼はそこで自らコスチュームをつくりスーパーヒーローになって国に変化をもたらそうと決意する。

 大丈夫なぁ、かなりザックリした話だなぁという不安感を思わず持ってしまうんですけれども、まあ実際にコミカルなマンガっぽい話で、実際にこれがコミック化されてヨーロッパでは発売されたりしているんですけれども、すごく単純なヒーロー物になってしまうんじゃないのかと、映画を作ったりするというエピソードもあっていよいよ不安になるんですが、でもそうでもないみたいで、結局この話が最終的にどういうところに落ち着くのかというと、これもまたキザイア・ジョーンズ自身の言葉なんですけれども、
 
  Captain Ruggedはアルバム全体を通して様々な経験をするわけだけれども、結局現実として何が分かったのかというと、アフリカの人々はまだスーパーヒーローを受け入れる準備ができていないということ。救われる準備がまだできていないっていうことなんだ。だから最後に彼は歌うんだ。変化が起きたときに誰が俺の事を賛美してくれるのかって。

 かなりシニカルな、そしてある意味リアルな、アフリカの現実を知っているからこそ感じられるアフリカの今、そしてその限界みたいなものをこの作品の中にしっかりと定着させているみたいで、だから音楽的にもすごく浮かれた感じがなくて、わりとシリアスなそういうトーンに貫かれています。今聞いていただいたのがアルバムのオープニングナンバーなんですけれども、それはシングルとして、でこのアルバムのテーマ的なものがRuggedというタイトルそのものがついている曲があるんですけれども、これからそれを聞いていただこうと思います。Rugged。



 こういう風に普通の人間がヒーローになって、でもヒーローそのものがどこかコミカルな佇まいで人々に受け入れられない。ヒーローであることのアイロニカルな有り様というのは最近の映画の中にあって、一番大成功したのが「キック・アス」(Kick-Ass)っていうアメリカの映画がありまして、これはシリーズ化されたりしておりますけれども、ヒーローであるということの一種の自己矛盾みたいなそういうようなことがすごく大きなテーマになっているなぁと、そういうことの背景でこのキザイア・ジョーンズの作品は作られたんだなぁとそんな感じがします。

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