20160503 「今日は一日“JB(ジェームズ・ブラウン)&ファンク”三昧」より
吉岡正晴「達郎さんはジャームス・ブラウンが世界一歌がうまいシンガーと公言して憚らない。」
山下達郎「僕はそう思いますよ。」
吉岡正晴「それはいつ頃からそう思われるようになったのですか?」
山下達郎「最初に聞いた時からですよ。いろいろなものを聞いて、歌の上手い人を聞きましたけれども、やっぱりジェームス・ブラウンにかなう人は誰もいないと思いますよ。ある人がマイケル・ジャクソンにかなう人はいないと言ったり、プリンスにかなう人はいないというのと同じような意味で、僕が生きてきた世代ではジェームス・ブラウンが世界一というか宇宙一ですよ。」
吉岡正晴「それは歌の上手さという意味で?」
山下達郎「独自性というか、単なるシンガーではないじゃないですか。コンセプトとかかなり無理な。今の曲を聞いてもどこにもないんですよ。今日的には政治的な問題もあるんですけれども、政治意識については時間がないので言及できないんですけれども。自分の人生の中でジャームス・ブラウンの音楽が与えてくれた力というか、そういうものです。」
吉岡正晴「それはバラードに限らずアップテンポに限らず、ジェームス・ブラウンは何を聞いてもナンバーワンで。」
山下達郎「ジェームス・ブラウンは何を聞いてもジェームス・ブラウン。ティナ・ターナーは何を聞いてもティナ・ターナーだと同じようなもので。ジェームス・ブラウンが歌っていればそれでいいんですよ。20代はシングルで買ったボロボロのヤツをカセットに入れて60分、三本。それを朝から晩まで聞いていた時代があって、今でもツアー行ったらジェームス・ブラウンを聞いて寝ていますからね。ジェームス・ブラウンか志ん生の落語か。」
吉岡正晴「ジェームス・ブラウンになりたいとも思わないし、ジェームス・ブラウンのようには歌えない。とても高くて到達できないという理解でよろしいのですか。」
山下達郎「そうです。ジェームス・ブラウン的なものを自分でもやれるとしたらどのようなものがあるのかと、それは全然別な問題。ジェームス・ブラウンになろうとも思わなかったし。」
吉岡正晴「例えばジェームス・ブラウンを一番上に置くと、若干下に歌がうまいとかリズム感がいいとかが五人とか十人はいますか。」
山下達郎「もちろん。アイドルはたくさんいますからね。僕はニューヨークのザ・ヤング・ラスカルズが大変好きで、フェリックス・キャヴァリエ(Felix Cavaliere)は本当によく歌いますし、ブライアン・ウィルソンのファルセットは素晴らしいと思いますし、それはたくさんいますけれども、ジェームス・ブラウンはそういうものとはちょと違うんで。」
吉岡正晴「別格で。」
山下達郎「別格ですね。超越してます。」
吉岡正晴「達郎さんはジェームス・ブラウンにあったことがありますか。」
山下達郎「ありません。ライブは何度もありますけれども。」
オダイジュンコ「あいたくないかもしれませんよね。」
山下達郎「あいたくありません。ブライアン・ウィルソンにもあいたくないですけれども。好きなものにはあわない方がよいと。」