ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

デヴィッド・ボウイ(David Bowie)ヒストリー  5th「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」から7th「Diamond Dogs」まで

20170109  「今日は一日“デヴィッド・ボウイ”三昧」より解説は小野島大氏です。

 1971年でデヴィッド・ボウイのグラムロックへの下準備ができたわけで、続いてグラムロック時代のデヴィッド・ボウイを紹介したいと思います。「Hunky Dory」が出た後の音楽雑誌のインタビューで、デヴィッド・ボウイが派手派手な衣装で出てきまして、そのインテビュアーの質問で「君はゲイなのかい」って聞かれて、「僕はゲイだよ。昔から。」って言ったんですね。この当時に自分がゲイであることをカミングアウトすることは大変なことでした。今とは比べものにならないくらい社会のタブーでありましたから。それがたちまち大反響を引き起こして、デヴィッド・ボウイは時の人になってしまいました。そういう状況の中で出したのが、大出世作というか、70年代の英国ロックの最高傑作のひとつである「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」です。この中から、このアルバムは名曲ぞろいなので何をかけてもいいわけなのですが、やっぱりこの曲しかないだろうということで、アルバムの最後に入っている曲を聞いてください。Rock'N'Roll Suicide。



 グラムロックなり「Ziggy Stardust」なりが作られた背景というのは、60年代というのはカウンターカルター、ヒッピーとか学生運動とか公民権運動とかで盛り上がってたんですが、それが60年代末でいったん挫折してしまいました。要するに、若者が団結すれば世界を変えられるとかそういう幻想をみんなが持っていた時代でしたが、それが敗れ去って、70年代にはいると音楽の世界でも、団結を訴えるよりはどちらかというと個人的な領域に引きこもって自分のことを歌う、例えばロックでいうと自分の日常や生活を歌う自己告白的なシンガーソングライターの時代が当時ありました。そのような中にデヴィッド・ボウイが出てきて、「Ziggy Stardust」で宇宙からきたロックスターが5年後に滅びる地球に降り立って地球を救いにきみたいな、そういう虚構の極みを行くようなSF的なアルバムを作ったと。それがかえって切実に響くメッセージになりました。要するに、みんな団結の時代が終わってバラバラになってしまったけれども、君はすばらしい、君はひとりじゃないんだと、Rock'N'Roll Suicideの歌詞ですけれども、手を差し伸べてくれて、それで当時の若者は非常に救われた気になったと。デヴィッド・ボウイこそが我々の救いの神なんだと、そこからデヴィッド・ボウイの時代がはじまったということなのですね。この曲は映画にもなった「Ziggy Stardust: The Motion Picture」という、この当時のデヴィッド・ボウイのバンドの解散ライブの映画があるんですけれども、これでも一番最後にこの曲が演奏されていて、デヴィッド・ボウイが「このバンドは今日で終わりです」ってアナウンスすると、観客が「ギャー」っと絶叫して、ドラマティックに演奏するというものです。この作品は前半のデヴィッド・ボウイの最高傑作の一つだと思います。

 「Ziggy Stardust」のラスト公演というものがあって、その時に後にセックス・ピストルズ (Sex Pistols)を結成するスティーヴ・ジョーンズ(Stephen Jones)というギターの人がいるんですけれども、この人が会場に忍び込んで機材を全部盗んだそうです。スティーヴ・ジョーンズはギターなんですけれども、ポール・クック(Paul Cook)というドラムの人がいて、二人でやろうとしたんだけれども、ポール・クックは途中で逃げて、スティーブ・ジョーンズとその友達が忍び込んで機材を全部盗んだと。その後、セックス・ピストルズのライブで使った機材はこの時デヴィッド・ボウイから盗んだ機材だったということです。要するに、パンクロックというのは、グラムロックの編集であると。当時グラムロックに熱狂していたような中学生高校生くらいの子ども達が成長してパンクロックをやるようになったと。その非常に象徴的なエピソードだと思います。

 この「Ziggy Stardust」というアルバムが全英チャートの5位まであがって大ヒットして、デヴィッド・ボウイは時代のカリスマとして、モット・ザ・フープル (Mott the Hoople)とかイギー・ポップ(Iggy Pop)とかルー・リード(Lou Reed)とかいろいろな人達のプロデュースをやったり楽曲を提供したりして、とにかく時代の花形としてガンガンでていくと。そうこうしているうちに次ぎのアルバム「Aladdin Sane」を出すんですけれども、これが「Ziggy Stardust」とは全く違ったサウンドで、アーティストとしての器量を感じさせるような素晴らしいアルバムになったんですけれども、その中からこれはデヴィッド・ボウイの曲ではなくカバーなんですが、Let's Spend the Night Togetherを聞いてください。



 これはご存知の通り1967年のローリングストーンズのカバーなんですが、全然原曲と違く、スピードアップしてモダンになって、この曲を聞いて完全に新しい世代のロックが出てきたんだなぁということをすごく鮮烈に思ったことをつい昨日のことのように覚えています。マイク・ガーソン( Mike Garson)のピアノプレイがきいていて、すごくかっこいいですよね。この「Aladdin Sane」のアルバムのジャケットは稲妻がはいったメイクのジャケットなんですけれども、これはデヴィッド・ボウイ展のイメージにも使われています。しかもこのアルバムはデヴィッド・ボウイがアメリカツアーをした時の印象をもとにして書いた曲が多くて、そこから後のデヴィッド・ボウイのアメリカ傾倒の伏線になっています。この「Aladdin Sane」は、イギリスで、デヴィッド・ボウイにとって初めてのチャート1位をとってブレイクしました。「Aladdin Sane」の次に出したのが「Pin Ups」というアルバムで、これはデヴィッド・ボウイが60年代前半から半ばくらいに、マーキー・クラブ(Marquee Club)というクラブがロンドンにあるんですけれども、そこで見たバンドの曲をカバーしたという、カバーアルバムになっております。ほとんどがイギリスのバンドのカバーなんですけれども、その中からザ・フー(The Who)のI Can't Explainのカバーを聞いてください。



 デヴィッド・ボウイは他人カバーをやることにあまりこだわりがないというか、自分の曲ではなくてもいい曲ならばなんでもやると。それも自分よりも後輩のアーティストの曲であるとか、最近の曲とかこだわりなくやっていく人なんです。この「Pin Ups」というアルバムが、またも全英チャート1位になって、完全に勢いに乗っている感じなんですけれども、このアルバムを出した後に、次のアルバムが「Diamond Dogs」というアルバムです。これはジョージ・オーウェル(George Orwell)の『1984』という近未来小説があるんですけれども、これをデヴィッド・ボウイががミュージカル化しようとしたんですが、ジョージ・オーウェルの奥さんに拒否されまして、仕方なく自分のオリジナルストーリーで「Diamond Dogs」というコンセプトアルバムを作ったというものです。そこからRebel Rebel。



 デヴィッド・ボウイファンには非常に人気の高い曲で、マドンナがデヴィッド・ボウイが亡くなった時に追悼のツイートをこの曲の歌詞から引用してツイートしたのが印象的でした。マドンナは本当にデヴィッド・ボウイが好きなんだなぁということが伝わってきました。


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