音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

デヴィッド・ボウイ(David Bowie)はファッションに興味がなかった説

20170109  「今日は一日“デヴィッド・ボウイ”三昧」より解説は新谷洋子氏です。

森田美由紀「デヴィッド・ボウイのファッションの変遷を伺っていきたいと思います。ステージ、フォトセッションでの衣装と。デヴィッド・ボウイといえばとにかくファッションと切り離せないっていう感じがしますよね。」

新谷洋子「それがちょっと面白いことに、2004年のリアリティツアーの時に、デヴィッド・ボウイにインタビューをした際にファッションの話になって、「実はあまり興味がないんだよ」って、彼が言いました。本当にファッションショーなんかに行ったことはないし、モデルと付き合ったのも今が初めてだと。インタビューの日はツアー中のオフだったので、まさにカジュアルな、本当に何でもないファッションをしていて、帽子をかぶってスニーカーを履いていて、ファッションに興味がないということにすごく説得力がある格好をしていました。よく考えてみると、彼にとってファッションというものは自分がなりたいものになるというためのツール、演じるためのツールであり、おしゃれをしてキレイに見せるとかそういうものではないというのが、彼のファッション感のようなんですね。日常で何がファッションのこだわりかというと、目立たないもの、動きやすいものとキッパリとおっしゃっていました。白紙の状態で、何になりたいのか、何を見せたいのかがあって、いろいろな要素の一つがファッションというとらえ方をした方が正しいのかなと思います。」

森田「表現者のデヴィッド・ボウイのファッションというと、本当にこれも短いサイクルで、曲と一緒で変わっていますよね。それをざっくりとまとめていただきますとどのような流れになるのでしょうか。」

新谷「まずは、デヴィッド・ボウイになるまでの下積みの時代があり、その後に70年代のキャラクターを演じていた時代があり、その後80年代からのスーツの時代があり、その後tin machineを経てなんでもありの時代に入っていくという、4つに分けてみました。」

森田「では、そのデヴィッド・ボウイになるまでの時代というと。」

新谷「世代的にまさに60年代、どっぷりモッズカルチャーに浸っていて、モダンジャズを聴いて、当時は洋服が大好きで。だから10代の頃彼がいたバンドの写真を見るとスーツを着ていて、そしてヘアーだけが彼が好きだったリトル・リチャードにそっくりだったり、好きなものを純粋に受け止めて、流行を追っかけて、いろいろなものを吸収していた時代です。そして、いろいろな人との出会いを通じて開眼していく時代だとも思うんです。例えば、リンゼイ・ケンプ(Lindsay Kemp)であるとか、最初のマネージャーのケネス・ピット(Kenneth Pitt)であるとか、お二人ともカルチャー全般に造詣が深い方で、そういった方にいろいろな事を教えてもらって、興味を広げていって、あとは最初の奥さんのアンジー・ボウイ(Angie Bowie)も非常にファッショナブルな方で、旦那様を成功させたいがために、どんどんいろいろなことをやりなさいってけしかけていったんですけれども、彼女のドレスを着て写真を撮ったり、男がどうだとか女がどうだとかは気にしなくていいからってけしかけて、ジギー・スターダストのヘアスタイルももともとはアンジーさんがこれがいいんじゃないかってやってもらったというエピソードがありますし、そういった出会いを通じて、じゃあ自分はオリジナルで出せるものは何なのかを考えていた時に、キャラクターを演じるという答えにたどり着いたわけです。もちろん時代もそこで60年代から70年代にかわりますよね。60年代は、ナチュラルだったり、オーセンティックだったり、そういったことが良しとされていた時代で、そして非常に楽観的な時代だったんですけれども、それが60年代末になるとベトナム戦争などで様子がかわってくる。ちょっと不穏なものだったり、危険なものだったり、そういったものに興味が向いてきます。あとはやっぱり、セクシャリティー感も変換期を迎えていて、イギリスの中でも一部で成年男性間の同性愛が合法化されるという大きな動きがあって、これまでアンダーグラウンドだったものがどんどん表に出て来た時代ということもあって、そこで彼はキャラクターを何かを演じるファンタージーにするという答えにたどり着いたんだと思います。」

小野島大「ちなにみアンジーというのは、ローリング・ストーンズの悲しみのアンジーのモデルの人ですね。」

森田「このキャラクター時代を象徴する曲として新谷さんが選んでくださった曲がThe Man Who Sold The World。」



新谷「「The Man Who Sold The World」のアルバムジャケットはいろいろいわくがありまして、彼はマンドレスという男性用に作られたドレスを着て、長髪で、シェーズロングに寝そべっていて、構図はビクトリア時代の絵画を意識したものなんですけれども、男か女かわからないイメージで、いままで誰も見たことがないビジュアルを提示して、かなり物議をかもしました。イギリスはいいとしてもアメリカは保守的だったので、こんな過激なものは見せられないということで、これが差し替えになってしまうんですね。そういういわくのあるジャケットで、最初にデヴィッド・ボウイが強く自分を印象づけた瞬間がこのアルバムジャケットだったと思います。」

森田「ジギー・スターダスト(Ziggy Stardust)とかアラジン・セイン(Aladdin Sane)のキャラクター時代って、結構少女漫画の中でもデヴィッド・ボウイのキャラクターがにぎわせましたよね。」

新谷「そうですね。少女漫画の王子様の原型がデヴィッド・ボウイだったという。」

森田「次のデヴィッド・ボウイのファッションの展開についてお願いします。」

新谷「4つの時代に分けたわけですけれども、その合間合間に転機というかリセットの時代があって、ちょうどThin White Dukeあたりでキャラクターの時代がひと段落して、その後はいわゆるベルリン三部作の時代にいくんですけれども、この時は音楽的にも彼にとってリセット、生活面でもリセットして、異国の街に溶け込んで暮らすということで、あまりビジュアルとかファッションとかが印象があまり残っていない時期だと思うんですね。ここでいったん白紙に戻って、次になるをするのかということで、彼はものすごい実験をするんです。例えば、Saturday Night Liveというアメリカの番組でパフォーマンスした時に、かなり奇抜な衣装を着ているんですけれども、後はBoys Keep Swingingのビデオクリップで、思いっきり女装、ドラッグで出ていたり、Ashes to Ashesでピエロになったり、まさに79年から80年ぐらいに突飛なことをつづけざまにやって、次に何をしたのかというと、いきなりスーツを着ました。普通だなという印象をうけるかもしれませんが、逆にデヴィッド・ボウイだから奇抜なことばかりやった人がいきなりスーツを着たというのが驚きでした。この後80年代を通じてスターのデヴィッド・ボウイ=紳士という印象がみなさんにとっても強いんじゃないのかなと思います。この頃のデヴィッド・ボウイは映画俳優としてもいろいろ活躍しているんですけれども、映画の中でもスーツを着ていました。その中でも一番デヴィッド・ボウイ=スーツ=俳優の姿といえば、映画Beginners。ほんの少ししか姿は見せていないんですけれども、まさに彼の少年時代、青年時代のモッズカルチャーにゆかりのある原作を映画化したもので、ビデオクリップの中でもスーツ姿でデヴィッド・ボウイが出てきます。ここで主題歌を聞いていただきます。Absolute Beginners。」



森田「この後のデヴィッド・ボウイはどういう風にファッションが変わっていったのでしょうか。」

新谷「この後tin machineがリセット期となったんですが、ファッションとtin machineの関連については、私は壊した時期だと思います。コンセプト的にはスーツで大人がロックするというものだったので、この時期のデザイナーはミグレだとかヴェルサーチであるとかそういった方々に依頼をしてツアーをしていたんですけれども、なんとこの時デヴィッド・ボウイはミュージシャンとしてはじめて髭を生やしたんですね。その前にドラマの役で髭を生やしたことはあったんですけれども、ミュージシャンとしてのデヴィッド・ボウイが髭を生やしたのははじめてで、あとは半パンをはいたんですね。これは女性目線になってしまのかもしれませんが、少女漫画の王子様のような美しい男性だったデヴィッド・ボウイが、髭と半パンというのはちょっとありえない、ちょっとないなって引いた人が多いのではないのかなと思います。しかし、ここでいったん壊すことによって、その後の時代はもうなんでもあり、ビジュアルとかファッションにこだわることなく全然普通に流してしまうというか、例えばHoursとかビジュアルの印象は全くないと思うんですけれども、逆にOutsideはステージ、アートワーク含めて非常にビジュアルにこだわったものですし。そしてちょうどこの時にアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQUEEN)とコラボレーションをはじめるんですね。ちょうどイギリスのファッション界に登場したばかり、ロンドンコレクションにデビューしたばかりの彼にデヴィッド・ボウイは目をつけまして。その後、Hoursをはさんで2000年代に入ると、今度はHeathenツアーの時に、またまた評価の高かった登場したばかりのエディ・スリマン(Hedi Slimane)というデザイナー、当時はディオール・オムのクリエイティブディレクターだったんですけれども、彼に声をかけて、エディはスリムなシルエットのスーツが彼のお得意とするところなんですけれども、もともとデヴィッド・ボウイに影響をうけてああいうスタイルを作った人なんですね。インタビューを読むと「僕はデヴィッド・ボウイのアルバムを持って生れて来た」っていう風にデヴィッド・ボウイが一番好きな原点のアーティストで、自分に影響を受けたデザイナーの服を今度は本人が着るという風に、サイクルが完結したようなところがあって、なのでデヴィッド・ボウイはファッションに興味がないといいつつ、何か突出した才能がある人、個性がある人を常にどこかで見ていて、うまく引き立てていく人だったと思います。」

小野島「こういう新進のデザイナーはデヴィッド・ボウイがアンテナをはって選んでいるのですか。」

新谷「どこまで本人が気にしているのかは分からないんですけれども、ファッションとかあまり区切りがないと思うんですね。映画だろうが、アートだろうが、文学だろうがなんとなく広くアンテナを張って、気に入った人を見つけていく、もしくは周りにそういう情報を与えてくれる人がいるのかはちょっと分からないんですけれども。」

小野島「ビヨーク(Bjork)なんかと似てますよね。ビヨークも自分にかかわることは全部自分で決めるって言っていて、例えばリミキサーの選択から何から全部自分でやっているっていう話なので、多分デヴィッド・ボウイの在り方からの影響もあるのかもしれないですね。」

森田「新谷さんのファッションコーナー。締めくくりに何の曲をおかけいたしましょうか。」

新谷「これはズバリなんですけれども、そんなデヴィッド・ボウイのファッションに対する複雑な気持ちを描いていると解釈することも可能な曲だと思います。Fashion。」



新谷「Fashionという言葉は英語だと、洋服のファッション以外に流行とかそういった意味もあるので、必ずしも洋服のことを言っているとは限らないんですけれども、右に倣え左に倣えでそれに従うのはどうなんだろうっていう疑問を提示しているような、そういったニュアンスの曲だと思います。」

森田「デヴィッド・ボウイのメッセージなんですかね。」

新谷「デヴィッド・ボウイの究極的なメッセージは自分のやりたい事をやって、自分のなりたいものになってということなので、そういった意味では、デヴィッド・ボウイの思いが感じられるのかなと思います。」

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