音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

アメリカン・ミュージックの系譜(4) カントリーミュージックの来歴

アメリカン・ミュージックの系譜第三回 講師は大和田俊之氏です。

1、カントリーミュージックの成立

 (1)、カントリーミュージックの成立

  ・カントリーミュージックというジャンルは、第二次大戦後になるまではありません。「ヒルビリー」と言っていたり、あるいは「オールド・タイム・ミュージック」と言っていたり、あるいは「マウンテン・ミュージック」と言ったり、ものすごく細分化された音楽ジャンルとして、それぞれに存在していました。それらを統括する「カントリーミュージック」というフレイムワークは実はなかったんですけれども、1940年代の第二次世界大戦を経て、1950年代にロックンロールが台頭して、若者に非常に人気を博する音楽となります。そうした中で、ナッシュビルと言うところに、それまで「ヒルビリー」とか「オールド・タイム・ミュージック」とか「マウンテン・ミュージック」とかそれぞれ個別に存在していた白人系のルーツミュージックというものが、ナッシュビルを中心に「カントリーミュージック」というジャンルにまとめられていきます。

 (2)、カントリーミュージックの保守性

  ・カントリーミュージックは、さまざまな音楽をまとめられていく時に、保守的な価値観を帯びていきます。フォークミュージックといわれるジャンルと、カントリーミュージックといわれるジャンルは、レパートリーは重なります。つまり、アメリカで古くから歌い継がれてきた音楽ですから、フォークと呼んでもいいし、カントリーと呼んでもいいんです。ただし、アメリカ合衆国でフォークミュージックというと、リベラルな音楽です。フォークというのはほとんど左翼と言っていいと思いますけれども、左寄りの、革新、リベラルな人達の音楽です。つまり、同じレパートリーなんですけれども、1940年代から1950年代にかけて政治的に離反していくわけですね。そして、カントリーミュージックは保守の立場の音楽として、価値観を帯びていくということです。ロックンロールのような黒人音楽に影響を受けた若者に人気のある音楽に、おそらく対抗する意識が働いたと思うんですけれども、バラバラのままではダメだということで、白人系のルーツミュージックをやっていた人たちが、ナッシュビルに集結し、音楽出版社をどんどん立ち上げて、カントリーミュージックというジャンルを戦後立ち上げていくということですね。その中で最大のスターと言ってもいいと思いますが、ハンク・ウィリアムズ(Hank Williams)という人の1951年のCold Cold Heartという曲を聞いてください。



  スティールギターとフィドル、クラシックで使う時はバイオリンと言って、民族音楽で使う時はフィドルと言うんですけれども、フィドルが鳴っていて、あとは独特のハンク・ウィリアムスの歌い方、トワングといいますが、この鼻にかかった発声ですけれども、これがカントリーミュージック特有のシグネチャとして言えると思います。

 (3)、カントリーミュージックのサブジャンル、ブルーグラス(Bluegrass music)

  ・カントリーミュージックの中にもいろいろなサブジャンルがあって、比較的サブジャンルとして新しく日本でも人気があったものにブルーグラス(Bluegrass music)があります。これは楽器のテクニックも重視される音楽ジャンルで、特に日本の大学でも1960年代にさまざまなブルーグラスクラブができたんですけれども、ビル・モンロー(Bill Monroe)という人が中心人物になります。ジャズ経由だと言われていますけれども、非常に楽器の技術が高く、それぞれがまわしてソロをとったりと、そういうこともやるブルーグラスという音楽ジャンルの曲で、Uncle Penを聞いてもらおうと思います。



2、カントリーミュージックとロック

 ・第二次大戦後にできたカントリーミュージックという新しいフレイムワークの音楽ジャンルは、保守的な性質を自ら帯びていきます。フォークと自らを意識的に差異化していくわけです。その後、ブルースは1960年代にロックによって、自分達のルーツはブルースであるという形で、ロックミュージシャンによって取り込まれるわけです。いうまでもなくロックというのは1960年代のカウンターカルチャーの音楽ですから、政治的に右か左かというと、左なわけです。リベラルな若者がブルースを自分達のルーツとして系譜づけることによって、逆にカントリーミュージックの保守性との対立が鮮明になっていきます。その時代がわりとしばらく続いていきます。

3、現在のカントリーミュージック

 (1)、意義

  ・少し前までは、カントリーミュージックを保守的な音楽と見る人もいたかもしれませんが、現在はあまり政治性はありません。確かに、未だにカントリーミュージックはアメリカで、民主党と共和党のどちらに近い音楽ジャンルかといえば共和党に近い音楽ジャンルですけれども、そういう政治性というものは少しずつなくなってきています。

 (2)、オルタナカントリー、アメリカーナの登場

  ・その一つのきっかけが、1990年代以降のオルタナカントリー、あるいはアメリカーナと言われるサブジャンルが出てきました。それは、いわゆるルーツミュージック、つまりアフリカ系アメリカ人のフォークミュージックであったり、カントリーミュージックであったり、そういったものを人種によって分けるのはやめようということです。これは同時に、研究の領域でも起こっていて、1990年代以降のアメリカの学者がどんどん明らかにしてきたことは、いかに当時から黒人と白人のミュージシャンが南部で共演していたのか、ブルースのコミュニティーと白人のコミュニティーがかけ離れたものではなくて、当時からかなりオーバーラップしているものでした。白人がブルースを演奏することも当時からあったし、黒人がカントリーみたいな音楽を演奏することもたくさんあったということをどんどん明らかにしてきました。そういった研究動向と、音楽ジャンルとしてのアメリカーナというサブジャンルが出てくることが、まったく連動していて、そうするとロック、あるいはカントリーというものに染みついていた政治性がはがれていきました。カントリーミュージックは「カッコ悪い」とか「ダサい」ものとしてとらえられていましたが、今の人はバンジョーの音が入ると「オーガニックな」とか「牧歌的な」とか「自然のにおいがする」とかそういう風に肯定的にとらえるようになりました。楽器の音が時代によって違って聞こえてくるわけです。

 (3)、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)の登場

  ・最近の大学生は、カントリーミュージック出身のシンガーであるテイラー・スウィフトの影響で、カントリーミュージックに関心がある人が多いです。2009年のヒット曲でYou Belong With Me。



  この曲のどこがカントリーなんだと人によっては思うかもしれませんが、カントリーポップというジャンルがありまして、こういうサウンドになっています。どこでカントリーと分かるのかというと、楽器ですね。バンジョーがかろうじて聞こえる所と、途中からスティールギターが入ってくる所ですね。例えば、マンドリンとかフィドルとかバンジョーとかスティールギターなどが、ポップス的なサウンドの中にアレンジとして入ってくると、非常にカントリー色が出てくるということです。テイラー・スウィフトはペンシルバニア出身で、わりと豊かな家族に生まれたらしいんですけれども、10代前半に歌手になりたいと思って、テネシー州のナッシュビルという所へ行きます。テネシー州ナッシュビルは今でもカントリーミュージックの中心になります。テイラー・スウィフトは14歳くらいのときに、キャリアの最初から自分はカントリーミュージックをやるんだということを意識していたということですね。特に1990年代以降、カントリーポップはどんどんメインストリームにスターを排出してきているので、どんどんファンの年齢層が若くなっていて、若い女性がどんどんファンについています。もともとカントリーミュージックは地方の白人に支持される音楽で、政治的には共和党と非常に相性がいい音楽でした。しかし、今回の大統領選では比較的沈黙を保っていた理由は、どんどん若い、しかも若い女性がカントリーミュージックのファンになっていっていて、アメリカでは若い層はほとんどリベラルが強いので、共和党支持、ドナルド・トランプ(Donald Trump)を打ち出してしまうと、カントリーミュージックのオーディエンスを敵に回してしまう可能性があります。そこで、カントリーミュージックもあからさまに共和党支持ではなくなってきているんですね。

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