音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

アメリカン・ミュージックの系譜(7) ユダヤ人の作曲家が「黒人」の音楽をやるということ

アメリカン・ミュージックの系譜第五回 講師は大和田俊之氏です。

1、ミンストレル・ショー(minstrel show)

 (1)、意義

  ティン・パン・アレー(Tin Pan Alley)では、大量生産、大量消費の音楽が作られて、この音楽は、ブロードウェイのミュージカルやハリウッドの映画に供給されていました。ここで、アメリカの舞台文化として、19世紀のミンストレル・ショー(minstrel show)についてお話をします。19世紀のステージの娯楽の一つとして、アメリカ最初の興行的なエンターテイメントと言われているのですが、ミンストレル・ショーと呼ばれるものがあります。この中で非常にヒットした出し物が、ブラック・フェイスという白人の芸人が顔を黒塗りにして、黒人の真似を面白おかしく笑いをとるもショーでした。現在の基準でいうと大変に差別的な芸能といってよいと思いますが、これが19世紀のアメリカでものすごくヒットをしました。このブラック・フェイスの芸はアメリカでは1940年代から1950年代まで続いていたもので、公民権運動で指導者達がこのような差別的な芸能は許されないと批判を繰り広げて、ブラック・フェイスはエンターテイメント業界からなくなりました。この白人が黒人の真似をするという構造が、19世紀末に音楽産業が発展する中で、音楽産業にも応用されていきます。

 (2)、具体例

  具体的にいうと、アメリカの音楽産業を作曲面や作詞面で支えた多くの作曲家作詞家がユダヤ人だったわけですね。彼らの才能によって多くの名曲が作られていくのですけれども、彼らはジャズとかラグタイムとか一般的には黒人音楽だと思われている曲を作曲したわけですね。よって、一般的な黒人音楽のイメージは、多くの場合ユダヤ人の作曲家が作りヒットさせたものが非常に多いというケースがあります。ティン・パン・アレーの代表的な作曲家で、ティン・パン・アレーの大量生産、大量消費のシステムには収まりきらない、後にはクラシック的な曲も多く作曲したジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)ですが、彼が1919年に作曲したSwaneeという曲があります。まずは、Al Jolsonが歌うSwaneeを聞いていただこうと思います。



 この曲は、作曲家ジョージ・ガーシュウィンの出世作といっていいと思います。Swaneeというのはスワニー川といって、アメリカ南部のジョージア州とフロリダ州にまたがって流れている川です。そして、この曲の語り手はアフリカ系アメリカ人が想定されています。ジョージア州やフロリダ州といった南部から出てきて、故郷の川の事を懐かしく思い出しているアフリカ系アメリカ人という設定なんです。19世紀のスティーブン・フォスター(Stephen Foster)という作曲家が書いたSwanee River、邦題は故郷の人々という曲があります。スティーブン・フォスターというのは、Oh, SusannaとかCamptown Racesとかの作曲者で、19世紀に活躍したアメリカを代表する、「アメリカ音楽の父」と呼ばれる作曲家です。彼は、ミンストレル・ショーの座付き作曲家として活躍していた人なんですね。よって、スティーブン・フォスターの曲ももともとは語り手は黒人が想定されているわけです。それを踏まえて、ジョージ・ガーシュウィンはフォスターの曲を、本歌取り的なパロディーとして、Swaneeという曲を作りました。また、歌っているAl Jolsonとういう人も、当時を代表する歌手で、ブラック・フェイスを得意とする人でした。1927年の「ジャズ・シンガー(The Jazz Singer)」というアメリカで最初のトーキー映画がありますけれども、その中でも顔を黒塗りにしてステージに立つとう役を演じています。だから、このSwaneeという曲は、白人の芸人が黒人のふりをして語るということが前提とされている曲なんですね。

2、ユダヤ人の作曲家が「黒人」の音楽をやるということの意味

 この、白人というかユダヤ人が黒人のふりをするという構造については、アメリカで面白い研究がなされておりまして、ある研究によりますと、ここにどういうアメリカの人種の構造が現れているかというと、ユダヤ人の作曲家が「黒人」の音楽をやるということは、ユダヤ人が差別されている構造を隠して、相対的にユダヤ人が白人としての地位を獲得するというようなことを述べております。つまり、当時アメリカ合衆国に移民してきたユダヤ人にとっての、相対的な階級上昇の一つの可能性として、ユダヤ人作曲家が「黒人」音楽をやると解釈できるという研究があります。これは非常に象徴的な事例なので、実証的にそうであったという研究ではないのですけれども、ミンストレル・ショーの中にユダヤ人が参入することによって、どういう人種をめぐるダイナミズムみたいなものがアメリカで変化してきたのかということを解釈するのに、非常に面白い研究だと思います。

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