ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

アメリカン・ミュージックの系譜(27) アジア系ミュージシャンとアメリカ

アメリカン・ミュージックの系譜第十三回 講師は大和田俊之氏です。

1、アジア系アメリカ人

 ・アメリカにおけるアジア系のミュージシャンのお話をします。2000年のアメリカの国勢調査で、アジア系の人たちは3.6%だったのが、2010年には4.8%になりました。割合としてはまだ少ないんですが、伸び率は一番高いわけです。

2、アジア系の可視化

 (1)、意義

  ・アメリカのドラマや映画が好きでずっと見ている人ははっきりと分かると思うんですけれども、1990年代以降、アメリカのテレビドラマの群像劇だと必ずアジア系の枠が一人いるんですね。二人組の刑事が活躍する映画は結構あったと思いますが、いままでは白人の警官と黒人の警官の二人がいろいろドタバタとやるというのが多かったんですけれども、だんだんヒスパニックの役であるとかアジア系の役が必ずドラマの中に用意されています。gleeという高校の合唱部を舞台とした大人気ドラマがありますが、途中からゲイの男の子が主人公になっていって、それがちょうどオバマ大統領が同性婚を支持した2012年くらいですが、このドラマにもアジア系の男の子と女の子が一人ずついました。それ以前は、例えばブルース・リー(Bruce Lee)みたいなカンフーのステレオタイプで、アジア系がいたりしました。それがだんだんアジア系の可視化という言い方をしますけれども、アメリカのテレビや映画にアジア系の俳優がなんとなく普通の役として登場するようになってきました。1980年代くらいまでは、アメリカのアジア系の若者が学校が終わった後に誰かの家に集まってテレビを見ている時に、アジア系を探せゲームみたいなものが流行っていたということが割と大きな新聞の記事に書いてあったんですけれども、テレビの中にアジア系が出て来たら、誰がそれに気づくのかというそのくらいに、アジア系はテレビの中に存在しませんでした。それが1990年代以降にアジア系の可視化、多文化主義の浸透などさまざまな中で、アジア系もどんどんテレビや映画の中に見えるようになってきました。

 (2)、PSYとピコ太郎

  ①、PSY

   ア)、意義

    ・そういった流れの中で、2012年に韓国人のPSYのGangnam Styleと言う曲が大ヒットしました。ちょっと聞いていただきましょう。



    この曲の流れにピコ太郎のヒットは位置付けるべきだと私は思っています。PSYのこの曲は、最終的にビルボードの1位にはなりませんでしたが、2位に長い間いて、総合チャートの2位は大変なことですけれども、坂本九の上を向いて歩こうの1963年以来、半世紀ぶりのアジア系というかPSYは韓国人ですけれども、アジアの人がビルボードの総合チャートの上位に入ってきたというわけです。

   イ)、PSYはなぜヒットしたのか

    ・この曲がヒットした理由として考えれることは、まず当時のダンスミュージックのフォーマットであるEDMに非常に合っていることがあります。もう一つは、アメリカのテレビとかをチェックしていると、完全にPSYが乗馬ダンスといって馬にのるような踊りを踊っていたんですね。この乗馬ダンスがダンスの振り付けとともにアメリカでものすごく流行していました。ダンスのステップとともに、ちょっとノベルティっぽい曲がヒットするというのは結構アメリカに歴史があって、その系譜のなかに位置付けられると思います。あとは、これが坂本九と決定的に違うことだと思いますが、PSYが完全にキャラクターになってPSYの見てくれとアニメみたいなキャラクターでネット上に広がっていったわけですね。このキャラクターになるということは、ある意味マイノリティーのステレオタイプ化といってもいいと思うんですけれども、ステレオタイプ化されるということは逆に言うと、無視されるよりも存在が認められているということです。アジア系のステレオタイプはもともと20世紀初頭からアメリカ合衆国にはあって、フー・マンチュー博士(Dr.Fu Manchu)とか悪いアジア人のキャラクターとか、いいアジア人のキャラクターみたいなものは、映画などにあるのはあったんですけれども、完全にアジア系のキャラクターとしてPSYがカルチャーのシーンで流通していたことは、非常に大きな変化だと思います。

  ②、ピコ太郎

   ・ピコ太郎もビルボードの総合チャートで77位まであがったんですが、やはり同じような文脈でヒットしたと言っていいと思います。振り付け、キャラ化、使ってる機材も向こうと同じで音の共通性といった中からヒットしたということですね。PPAP。



    この曲はジャスティン・ビーバーがネット上で拡散したこともあって向こうで広まったというのもあります。このようにPSYに続いてどんどんアジア系の人たちがビルボードのチャートの上位に入ってくるようになりました。まずは、キャラ化、ステレオタイプ化されていくなかでどんどん面白がられていくわけですけれども、こういうキャラクターが上位にくることもなかったわけで、これは明らかに1990年代以降のアジア系の可視化の流れの中で出て来たことだといっていいと思います。

 (3)、ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)

  ・PSYとかピコ太郎はどちらかというとノベルティ色が強い曲なんですけれども、アメリカの最大のスターといってもいいブルーノ・マーズも、お父さんはプエルトリコ系のユダヤ人、お母さんはフィリピン人で、アジア系なんですね。だから、フィリピン系のアメリカ人といっていいと思います。一般的にはブルーノ・マーズがアジア系であることは意識されていないかもしれませんが、アジア系最大のスターということで、彼のデビュー曲を聞いていただきます。Just the Way You Are。


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