1、ザ・ホラーズ、少し大人になる
20170915
児島由紀子「サマーソニックソニックマニアで来日したばかりのザ・ホラーズについてです。ついに3年ぶりの新作が出るんですよ。今度のプロデューサーはなんと今の音楽界で一番の売れっ子、ポール・エプワースなんです。アデル(Adele)とかポール・マッカートニー(Paul McCartney)とか大物ばかりを手掛けているプロデューサーなんですよ。彼らはデビューして以来、UKオルタナ界一のカルトヒーローだったんですね。今作でついにこれはメジャーリーズにステップアップするだろうとイギリスでも評判なんですよ。」
渋谷陽一「ちらっと聞きましたけれども、すごくポップですよね。」
児島「ポップになりましたよね。一緒に歌いたくなるような曲をこの人たちが書いたのははじめてですよね。彼らはUKだけではなくてアメリカのインディー界でも以前から評価が高かったんですよね。こういうゴス系は、1980年代にゴス系ムーブメントがあったじゃないですか。イギリスではその名残があって、ゴス系はあまりいいイメージがないんですよ。アメリカ人はちょっとゴス系とか時代錯誤だなぁという感じがないので、よくアメリカのメディアの批評とか読んでいると、なんでこのバンドがイギリス本国で評価されないのかというのばかりだたんです。やっと今作でその辺のバランスもつくのではないのかとみんな期待しているわけです。」
渋谷「これは本当に全世界的に受けるのではないかという感じがしますね。」
児島「驚いたのはデヴィッド・ボウイ(David Bowie)みたいな美しいバラードみたいな曲も入っています。大飛躍ですよ。」
渋谷「彼ら自身もそろそろ違うステージに立ちたいという欲求があったのかもしれないですね。」
児島「彼らの音楽は実験的に走りがちな傾向があったんですけれども、一般的なリスナーを疎外しない程度で実験的なサウンドを鳴らすという課題をポール・エプワースに設けられたそうです。それでやっと自分達の成功に対する欲望にも目覚めたみたいですね。」
渋谷「やってみたらそれだけのポテンシャルがあったということなんですね。」
児島「もともと彼らは音楽的な才能はあったんですよね。ただ、一般リスナーを疎外するようなノイズとか、インダストリアル系の音に走りがちだったんです。」
渋谷「ある意味大人になったのかもしれないですね。」
児島「そう思います。」
渋谷「日本でのステージも結構愛想がよかったですよ。」
児島「彼らが愛想がよかったって・・・。その辺も変わってきましたね。昔から不愛想で有名なバンドだったんですけれども。アルバム視聴会の時にQ&Aもあったんですけれども、5人とも最初から最後までうつむいて、我々記者の顔をみないでボソボソ語っていて、ポール・エプワースが一人でその場を盛り上げていました。」
渋谷「多くの人に支持されると彼ら自身のモードも変わってくるかもしれませんね。」
児島「彼らも、今作は一番アクセス数が増える作品になるように努力したって言ってましたよ。ボソボソと。」
渋谷「世間が彼らの音をどのように受け止めるのか注目したいと思います。Machine。」
2、ザ・ホラーズ、プロデューサーにポール・エプワースを迎えてすごくポップになる
20171006
ザ・ホラーズの新作「V」。ジャケットは日本語で「ヴィ」と書かれています。これはロンドン情報で児島さんから、ザ・ホラーズがやたらコマーシャルな作品を作りましたということですでに紹介をしていますが、ポール・エプワースというたくさんのビッグアーティストを手掛けた敏腕プロデューサーによって、ザ・ホラーズが持っている本来的なコマーシャルな部分がすごく健全な形でピックアップされて作品化されております。そのアルバムからまずは、Something to Remember Me By。
ザ・ホラーズってこんなバンドだったっけっていうくらいポップですけれども、プロデューサーのポール・エプワースがやったことは、ザ・ホラーズの本質を変えるのではなくて、君たち本当はキレイだよね、スタイルもいいよね、だったらそのデッカイ帽子を脱いでデッカイコートを脱いでちゃんと分かるようにしないか、そうしたらキレイだしスタイルもいいよねって、そういう作業をやったような気がして、ある意味正しいプロデュースだったのではないのかなという気がします。そうやって、帽子を脱ぎ、コートも脱いだザ・ホラーズをもう一曲聞いてください。Gathering。
二曲とも非常にポップな曲であります。市場がこれをどのように受け止めるのか興味深いところであります。