ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

日本ポップス伝(7) 童謡運動と現代の音楽への影響

1995年 大瀧詠一の日本ポップス伝第二夜より 

 唱歌というのは文部省がやっていたものなんですね。だから、内容も富国強兵であるとか固いものばかりなんですね。それで、そういうものばかりではいけないと唱歌への反動として、童謡運動というものが起こります。今は唱歌と童謡はひとまとめにして考えられていますけれども、唱歌と童謡は違うんですよね。童謡というものは、大正時代になって運動として起きたものです。その核になったのが、童謡童話雑誌として大正7年(1918)にできた『赤い鳥』です。詩人の鈴木三重吉という人が編集したんですけれども、「今までの子ども向けの読み物や唱歌が俗悪貧弱として、芸術として真価ある童話や童謡を創作する最初の運動を起こした」ということで、当時の詩人であるとかそういう人たちに呼びかけました。この運動に集まってきた三大詩人と言われているのが、北原白秋、西條八十、野口雨情という風に言われています。童謡とかいまはたくさんCDが出ているじゃないですか。それをかけようと思ったんだけれども、みんな最近のものにアレンジされているんです。童謡は素で歌うのが一番いいでしょ。適当にどんなものがあったのかについてやってみたいんですけれども、西條八十さんは「かなりや」。北原白秋の「赤い鳥小鳥」、「ゆりかご」。作曲家の山田耕作さんも「あわて床屋」などいろいろな童謡を作っていますけれども、非常に有名な歌ということで「赤とんぼ」があります。



 普通我々は「あかとんぼ」は「か」の部分を高く発音しますが、この歌は「あかとんぼ」の「あ」の部分を高く発音するようになっています。この「あ」の部分を高く発音するのはおかしいという論争も起きたんです。メロディーが洋風なものに日本語を入れると基本的に日本語のアクセントは必然的に変わってくるじゃないですか。洋楽の場合ならいざ知らず、オリジナルでも日本語の自然のものを無視したとかの論争はいまだにあるんです。まあ、そろそろなくなりましたけれどもね。こういう風に洋風のメロディーだと必ずついてまわる問題があって、逆に言えば言葉についているアクセントがあるじゃないですか。それ以外のメロディーものるようになったというのは、明治以降じゃないでしょうか。その前は、言葉についているアクセントに強く影響されるわけです。山田耕作の曲はたくさんありますけれども、こういう歌もありました。



 滝廉太郎の時に「荒城の月」に捧げる歌で三橋美智也の「古城」があったといいましたけれども、この「からたちの花」にも捧げる流行歌が作られました。それを聞いてみましょう。



 語りの部分で「からたちの花」のメロディーが使われていたのはわかりますか。このように童謡を流行歌の中に入れて発展していくというか、そういうようなことも行われたわけです。かわりまして、野口雨情の詩は「十五夜お月さん」、「七つの子」、「赤い靴」、「青い目の人形」、「黄金虫」、「うさぎのダンス」、「証城寺の狸囃子」。なんとなくテイストがあるでしょ。最初の「十五夜お月さん」から「青い目の人形」は本居長世という人の作曲で、「黄金虫」から「証城寺の狸囃子」までは中山晋平が作曲です。さて、童謡といいますと、童謡の大御所の中田喜直先生がいます。中田喜直さんの電話インタビューを少しお聞きください。

平岩英子「明治大正の音楽が現在の音楽に与えた影響はどんなものでしょうか。」

中田喜直「明治の終わりころ、明治20年代になってきてから滝廉太郎が出てきて、それからもう一人唱歌では岡野貞一という鳥取県出身の、あなたも知っていると思うけれども、「朧月夜」とか「故郷」とか。「故郷」はちょっと讃美歌みたいなんですよね。岡野貞一さんというのは、教会でオルガンを弾いていてクリスチャンだったんですよね。だから、明治の頃の唱歌というのは、讃美歌の影響を受けていますね。そういうことでだんだん洋楽が盛んになってくるし、大正の後半から昭和の初めは童謡が盛んになって、日本中で誰でも童謡を知らない人がいないくらい盛んだったんですよね。それが日本の洋楽の基礎みたくなっているんです。今のみなさんがたくさん歌っているポピュラーでも歌謡曲でも、今の作曲家はみなそういう日本の洋楽の歴史を背負って、そういう歴史の中から出てきていると思うんですよね。ですから、根本的にみんなそういうことで育ってきましたから、とても重要な事だと思うんですよね。」

 讃美歌の話が出てきましたけれども、明治の唱歌の中にもずいぶん讃美歌の影響を受けた曲が多いということなんですね。そして、この童謡にもずいぶん讃美歌の影響があるそうです。中山晋平は「背くらべ」、「てるてる坊主」と和風な感じが多いですよね。中でも「シャボン玉」というのはちょっと変わっているんです。これが讃美歌のとある歌の影響を受けているのではないかという説があります。




 これは讃美歌の「主われを愛す」という曲ですけれども、よく似ていますね。山田耕作さんも「主われを愛す」は子ども時代に非常に印象に残った歌だと書いていました。讃美歌と唱歌ないし童謡の関係を追及されている方の本も出ていますので、興味がある方はそちらの本を読んでください。唱歌から童謡になってきて、愛国調のものであるとか、忠君愛国調のものであるとか、軍歌の勇ましいものとか、そういうようなものではないものですよね。それから、北原白秋、西條八十、野口雨情は、歌にならない純粋詩も書いていて、詩集なんかもいっぱい出している文学者であったということも、一つのポイントですよね。作曲家としては、山田耕作そして中山晋平がいて、これらがだいたい童謡のポイントです。

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