音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

テイラー・スウィフト(Taylor Swift)、アゲインストな風の中アルバムを発表する

20171201

 大変な話題になっておりますテイラー・スウィフトの「Reputation」を紹介したいと思います。みなさんご存知のようにテイラー・スウィフトというのは今のポップミュージックシーンの女性シンガーのヒールとして、悪役としてイメージされ、攻撃された女性アーティストであります。ケイティー・ペリー(Katy Perry)と確執があったとか、最近では白人至上主義的なメッセージがあったとか言われたり、アルバムの売り方がエグいと言われたり、そしてなによりも彼女自身がかつて自分と付き合った男性との交際経験、そしてその多くを振ってきたというそういうようなことをモチーフに曲が作られていると、ありとあらゆる言われ方の中で、まさに「Reputation」、評判のすごくアゲインストな風の中にいるというその中でアルバムを作りました。彼女にとってこのアルバムを作るということは、ものすごく大きな決意のもとの行為であることが、なんとアルバムにセルフライナーノーツがついていまして、「私が人々について学んだこと」というかなり長文の原稿を彼女が書いています。これがすばらしい。長いので一部だけ紹介したいと思います。

  今の時代は自分の人生の物語全体をインターネット上に記録した写真で振り返ることができる最初の世代で、それと同時に私達はみなやがてそれの後遺症に気づくことになる。結局のところ、人が写真をネットに投稿するのは、自分のことを見知らぬ他人にどう思ってもらいたいのか、キュレーションするため。とはいうものの、目が覚めて鏡をのぞけば、そこに映っているのはシワやキズ跡やシミのある顔で、嫌気がさしてしまう。私達が願うのは、同じ起き抜けの顔を見ても、そこに未来やパートナーや永遠を見出してくれる誰かにいつか出会えたらということ。物語のあらゆる側面を知り、そして私という万華鏡とあらゆる角度から見た上で、それでも自分を選んでくれる誰かに。私は15歳の時から世間の目に晒されてきた。そのすばらしくてうれしい面はとても幸運にも音楽で生計を立てていられるということ。そして愛情にあふれた大勢の人々、刺激をもらえる大勢の人々に出会えていたということ。その反面、私が犯した過ちが批判材料に使われ、経験した悲しみがエンターテイメントとして扱われ、そして私のソングライティングが個人情報の過剰な公開として矮小化されてしまっている。このアルバムが世に出たら、ゴシップ系ブログが歌詞をくまなく調べ、それぞれの曲にあてはめられるであろう男性を探し回ることでしょう。まるで音楽を生み出すインスピレーションが親子鑑定検査と同じくらい簡潔明瞭なものであるかのように。間違った各説を裏付ける写真のスライドショーもきっと作られるはず。だって今は2017年で、写真が添えられていない場合は、起こりえなかったことということになってしまうわけだから。でしょ。後ろの方にいる人たちにも聞こえるように、もっと大きな声でもう一度言わせてね。誰かの事を分かっていると思っても、実際それはその人がこちらを見せようと思っている姿だということ。説明はこれ以上ありません。あとは評判。Reputationが出回るだけです。

 すごい。27歳だと思うんですけれども、本当に過酷な状況の中で、覚悟をもってこのアルバムを作ったというのがヒリヒリと伝わってきます。そしてかける曲がEnd Game。そしてそこでフューチャリングされているのが、元カレと噂のあるエド・シーラン(Ed Sheeran)。やりますね。

  大評判大評判
  あなたと私は大評判になっている
  私の噂は聞いているでしょ
  手ごわい敵は何人かいるかって
  大評判大評判
  あなたと私はきっと大きな話題のタネになる
  あなたの噂は聞いているわ
  あなたも悪いタイプが好きなのね
  あなたには触れたくないのよ
  なりたくない
  ただの元カノの一人になんて
  あなただって見たくないでしょ
  会いたがったりしたくない  
  ほかの女の子のようにあなたを傷つけたくないのよ
  望んでいるのはビーチでお酒を飲みながら二人でいちゃついているってだけ
  世間がどういうかわかっている
  だけど遊びっていうわけじゃない
  あなたとのカップルエンドをむかえたい
  あなたの選抜メンバーになりたい
  あなたのAチームになりたい
  あなたとカップルエンドをむかえたい
  
 ビデオクリップをみると、最近のテイラー・スウィフトの方向性というのは、このアルバムで新しい自分になると、すごくサイボーグ化されたものすごく強靭なイメージで、彼女自身は自分を高めているのかもしれませんけれども、このアルバムを聞くとそこにいるのは若い、傷つきやすい一人の女の子のリアルで、そしてものすごくたくさん出てくるモチーフが「逃げる」ということなんですね。やっぱり彼女自身はここから逃げたいという正直な思いがある。戦わなければ、でも逃げたい。そういう切り裂かれた思いというのがエモーショナルな楽曲につながっていて、でもすごいのが、そういうのがセンチメンタリズムで後ろ向きな、文学的な方向に行かずに、ポップな、ものすごく強靭な、コマーシャルな楽曲につながっていくという構造がすごいなと思うんですけれども、その典型的なのがGetaway Carという曲があります。逃走車という曲なんですけれども、

  あなたが走らせていたのは逃亡車
  ふたりで空を飛んでいた
  でも遠くまでは行けなかった
  不可解な謎に見せかけないで
  初めて出会った場所を思いうかべるの
  逃亡車に乗りながらサイレンが響き
  あなたの鼓動と共鳴していた
  私から先にさよならをすべきだったのね
  初めて出会った場所を思い浮かべるの
  逃亡車に乗りながら
  でも遠くまでは行けなかった
  逃亡車に乗り込むのはそもそも間違いというもの
  逃亡車を走らせていた私
  逃亡しながら泣いていた
  逃亡車の中で死にそうになりながら
  逃亡車の中でサヨナラを告げて
  逃亡車を走らせていた私
  逃亡しながら泣いていた
  逃亡車の中で死にそうになりながら  
  逃亡車の中でサヨナラを告げた



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