ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

ジャック・ホワイト(Jack White)に学ぶ、ロックに可能性はあるのか?

1、ジャック・ホワイト(Jack White)に学ぶ、ロックに可能性はあるのか?

20180302

中村明美「ジャック・ホワイトの新作「Boarding House Reach」を紹介したいと思います。ジャック・ホワイトはこれまでも数々の驚異的な作品を作ってきたアーティストだと思いますが、この作品もまたぶっ飛んだすごい内容の作品になっています。何が一番驚いたのかというと、ジャック・ホワイトといえば現在のロックの代名詞というか、ロックのギターがうなりまくるという、そういうアーティストなんですが、その彼がなんとヒップホップのアーティストとこの作品では共演しています。もともとはカニエ・ウェスト(Kanye West)などを尊敬していて、この作品ではカニエやケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)なんかの作品に参加しているミュージシャンと共演するという作品になっています。カニエを見ていて、カニエみたいなアーティストは、絶対に彼は曲を作っていないだろうと。彼はミュージシャンを雇って、プロデューサーを雇って、彼らと一緒に演奏しながら曲を作っているんだということに着目して、最も魅かれたところは、今のヒップホップは現在のパンクロックなんじゃないのかという所に彼が注目して、カニエの立場に自分が立って、彼らのミュージシャンと一緒に共演をして、だけどカニエは楽器は演奏しないけれども、自分は楽器も全部演奏するし、曲も作るという中で、どんなものが生まれるんだろうという、ジャック・ホワイトならではのぶっ飛んだ実験をここで行ってみました。その結果できたのが、ヒップホップであり、ジャズであり、パンクロックであり、ロックンロールであり、カントリーであるという、今の社会のカオスをうつしだしたような素晴らしい作品ができました。作り方も、ジャック・ホワイトはいつも自分なりの制限をつけるタイプなのですが、今回もすごく笑ってしまいます。まず、自分の家にはいっぱい人が来るので、アパートに一人で部屋を借りて、隣の人に作っている音が聞こえないように作曲するみたいな。どういうことかというと、楽器を使わないで曲を作ってみようという試みだったようで、その理由というのが、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)のドキュメンタリー映画を見ていた時に、マイケル・ジャクソンはベースのラインをAとかFとかでやってくれとプレイヤーに頼むのではなくて、自分でビートボックスを作って、こういう風にやってといって、自分もメロディーを歌っていたと。マイケル・ジャクソンは脳みその中から曲が作れるのならば、俺もできるんじゃないかという試みだったようです。そして、曲をそうやって作った上で、ジャック・ホワイトはいつもはナッシュビルとかで三日間くらいで録音するみたいなことをやっていたんですが、今回はナッシュビルとニューヨークとロサンジェルスという、ジャック・ホワイトにしては珍しく三か所でレコーディングをして、それぞれの場所でこれまでレコーディングをしたことがないヒップホップのミュージシャンを雇って、そこで初めて出会って、三日間だけで初めて聞いた曲を全員で演奏するみたいなすごいことをやりました。それで、一曲20分くらいになったらしいんですが、ここでもジャック・ホワイトがこれまでやったことがなかったことですが、一回それを持ち帰って3分間のポップソングに仕上げるみたいなとんでもないことをやりました。ジャック・ホワイトというのは結局、いつも自分に困難を課して、その中で自分が信じてきたロックンロールを見つけられるのかということをやっているだなぁと。初めてでやったことがないことをやるのは難しいけれども、今回は新しい挑戦を自分の中で見つけて、このアルバムを作りました。ものすごい人だなぁと思って、本当に尊敬しています。」

渋谷陽一「なるほど。今聞ける三曲を聴いたんですけれども、今回すごいなぁと、まさに振り切った感じがあって、なるほどそういう作り方から生まれたものなんですね。それではその注目のジャック・ホワイトの作品を聞いてください。Connected by Love。」



渋谷「かっこいいですね。でもこのアルバムの飛距離はもっともっとすごいぞというのを感じていただける、もう一曲を紹介したいと思います。Corporation。」



2、ジャック・ホワイト(Jack White)に学ぶ、現在のパンクロックはヒップホップである説

20180408

 ジャック・ホワイトの最新作「Boarding House Reach」からOver and Over and Over。



 すでに海外情報でいっぺん紹介をしておりまして、中村さんから彼がありとあらゆる方法を試しながら、本当に20分の曲を3分に凝縮し、ありとあらゆる音楽ジャンルに挑戦し、そこから新しいスタイルを模索して作り上げた作品だとそういう紹介をしてもらいまして、リードシングルを紹介したんですけれども、今回はじっくり聞こうと思います。このアルバムについてジャック・ホワイトは非常に的確な発言をしていて、僕の番組なんかを聞いていると渋谷陽一はひょっとするとこういうことを言いたいのかなと思いながら聞いている方もいると思いいますが、一介のDJとしてはここまで突っ込んだ発言はできないので婉曲に表現をしていたのですが、ジャック・ホワイトはズバッとこう言っています。

  まず言えるのは、確かにロックンロールは今すごく軟弱でダレた場所にいるということ、そしてロックの代わりにヒップホップが新しいパンクロックとなり、危険である役割を担っていること。だからロックをやっている人達、またはオルタナな世界の人達は、もっと努力して自分を駆り立てなければいけない。コンピューターでレコーディングするようになって、人々が音楽により時間を費やすようになって、それは明かになった。

 ここまでハッキリと言われてしまうと何なんですけれども、本当に私もそう思います。ある意味ロックというのは今危機的な状況の中にあって、ロックがロックであることに自足して、そこからどうイノベイティブであるかということを、当然目指しているアーティストもたくさんいるんですけれども、でも聞く側も「俺たちロックだぜ」でやる側も「俺たちロックだぜ」で、いやいやそういう話じゃなくてという思いは、やはりすぐれたヒップホップアルバムがたくさん出ているこの現状の中にあって、よっぽどヒップホップの方がエッジが立っていて、イノベイティブなのではないかということは、たくさんの優れたロックミュージシャンは持っていて、ジャック・ホワイトはその危機感の中から、ありとあらゆる自分の中にある音楽ソースを総動員して、そしてものすごくちゃんとしたロックンロールを作りたいという思いで、このアルバムを作り上げました。そしてそれは成功していると思います。従来型のロックンロールにこだわることなく、ありとあらゆるジャンルに挑戦しているんですけれども、つづいてはこんな曲でございます。Why Walk a Dog?。



 ジャック・ホワイトはこのアルバムを作っているときに、どんどんこのアルバムが変わっていく、あるときはヘヴィ・メタルアルバムじゃないかと思った時もあれば、あるときはヒップホップアルバムだと思い、あるときはカントリーアルバムだと思えたときもある。そして結局そのすべてが内包された新しいロックンロールアルバムができたと言っていますが、このアルバムを全曲聞くと、本当に彼の言葉がリアルに伝わってくる全13曲なんですよね。このアルバムを海外情報で紹介したときに、Connected By Loveという曲とCorporationという曲を紹介しましたけれども、その2曲の感触からもそれは伝わってきたと思いますし、それから今のWhy Walk a Dog?という曲からも本当にこのアルバムのレンジの広さが伝わったと思います。でも、基本的にはロックンロールであるという。リフから何からありとあらゆる佇まいから、すごく何とも冒険と革新に満ちたすばらしいアルバムになっていると思います。続いてはRespect Commanderという曲があって、これがなかなかおもしろくて、最初に普通のギターリフがあるんですが、もっと早くしようぜってもっと早くなって、楽曲の感触と時代性とスタイルがガクッと変わる所が面白くて、結局またもとに戻ってきたりと、ものすごく時間をかけたと言っていましたけれども、一曲セッションしながら30分以上やって、どの曲も本当はそれぐらいあって、その完成版をいつか出したいみたいなことを言っていましたけれども、そんな感じがリアルに伝わってくるナンバーでございます。Respect Commander。



 すごいですよね。このギターソロも21世紀のギターソロはこういうものだという感じで、このアルバムはすごいんです。ぜひ全曲みなさんに聞いていただきたいと思いますが、もう一曲聞きたいと思います。What's Done Is Done、もう済んでしまったことはどうしょうもないという曲なんですけれども、カントリーでありブルースでありっていうそういうナンバーで、カントリーミュージックやブルースミュージックは一種の悲しみを歌う歌であり、その悲しみは失ってしまった恋人であり、自分の苦しい状況であったり、そういうようなテーマを多くの場合歌ったりするんですけれども、ここで歌われるブルースのテーマであったりカントリーのテーマは、ジャック・ホワイト自身が言っているんですけれども、アメリカではいかに簡単に店に入って銃が買えるのかという悲しい事実を自分は描いたと、まさにその現実に対するブルースだと思います。

  もう済んでしまったことはどうにもならない
  俺にはこれ以上戦えないよ
  だから街に買い物に行くんだ
  銃を手に入れるために
  ちっとも楽しくないんだよ
  毎日うんざりさせられる
  家の中を行きつ戻りつ歩き回るだけで
  誰かの事を考えながら
  なぜなぜなんだ
  リアルなものなど存在せず
  耳を傾けてくれる人は誰もいないように感じるのは
  何かおかしくなるとあの曲が聞こえるんだ
  お前がかつて耳元で歌ってくれた曲が
  もう済んでしまったことはどうにもならない
  俺にはこれ以上戦えないよ
  だから街に買い物に行くんだ
  銃を手に入れるんだ  



 この作品はすばらしい作品だと思うし、彼自身はロックンロールがまた新たに時代に対する影響力と爆発をもたらす、そういう時期がくるんだとそういう思いでこのアルバムを作ったんですけれども、そういう気迫が伝わってくるすばらしいアルバムでございました。


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