今回は、「今日は一日“AOR”三昧リターンズ」よりAORについてまとめます。解説は、金澤寿和氏です。
1、基本的定義
プレAORの時代の、この曲がなかったらAORもなかったぞという所で、The Young RascalsでGroovin'。
AORはいろいろな定義があって難しい所ではあるんですけれども、共通しているのは、AOR=Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)というのが基本的な定義です。どのような音楽かというと、洗練された大人向けのハイブリットな都会派の音楽ということです。
2、アメリカ
2、アメリカ
もともとはアメリカとかで、Album-Oriented Rock(アルバム・オリエンテッド・ロック)、つまりシングルヒットを狙わないアルバム志向のアーティストを指して、AORという呼び方がされていたんですけれども、その実アメリカでもいろいろな解釈があって、Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)という日本的なAOR定義は、アメリカでも一部にはあったようです。ただし、あまりポピュラリティーは得られなかったようです。その後、日本では1970年代後半から1980年代前半に、このような洗練されたポップスがどんどん入ってきまして、日本でもそういうアーティストが出てきまして、シティーミュージックとかシティーポップスとかソフトアンドメロウという言い方が流行りました。それ以後、シティーポップスとかソフトアンドメロウという言葉に変わって、AORという言葉がだんだんポピュラーになってきました。
AORの音楽的な定義は、国とか地域によってちょっとずつずれています。日本でいうAORはAdult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)ですけれども、今アメリカでAORというと、アダルト・コンテンポラリー・ミュージック(adult contemporary music)という言い方で、ACチャートというのが未だにありますけれども、これが一番日本のAOR感に近い今のアメリカの言い方になります。でも、アダルト・コンテンポラリー・ミュージック(adult contemporary music)はもっと範疇は広くて、実は日本では産業ロックと言われますジャーニー (Journey)とか、ロック系のアーティストのパワーバラードみたいなものも、アメリカではアダルト・コンテンポラリー・ミュージック(adult contemporary music)に入ります。ただ、日本だとAORとはちょっと違うだろうというのが、割と一般的な感じですね。
3、ヨーロッパ
3、ヨーロッパ
また、これをヨーロッパでもっていくと、産業ロックとかメロディアスロックとかと言われる、結構ハードめなロックがAORで、日本でいうクリストファー・クロス(Christopher Cross)とか、ボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)とかそういうのは何ていうのかというと、ウェストコースト・ロック (West Coast rock) ですね。必ずしも西海岸に限ってはいないんですけれども、それがヨーロッパのAOR。日本でいうAORは、ヨーロッパではウェストコースト・ロック。しかし、日本でウェストコースト・ロックというと、イーグルス(The Eagles)であるとか、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)とかそういうイメージがありますけれども、地域や国によって事情が違うということです。だから、ジャンル的に完全に確立されたものではないんですけれども、少し範疇を広げつつ、その辺のファジーなところも楽しんでいただければと思います。
4、アーティストの認識
4、アーティストの認識
AORのアーティスト達にインタビューをすると、AORのアーティスト達はAORという言葉を使っていますよね。日本で大ヒットしたジャンルですから、アーティスト達は日本で自分たちが何て呼ばれているのか、よく分っている人は分っていると思います。かといって、当時だと通じなかったという話も聞きますので、「AORをどう思いますか」って聞いたら「僕らとは関係ないよ」って言っているアーティストもいましたので、その辺は時代によって違うと思います。今、AORといって日本へ来日するアーティストは、日本的なAORをちゃんと理解していますね。
5、AORとはサウンドスタイルである
5、AORとはサウンドスタイルである
今一般的にジャンルとしてAORという言葉を使ってしまいますが、時代背景があっていろいろな流れがあって移ろうものなので、例えばAORの全盛期である1970年代末から1980年代初頭は、AORのアルバムを作っている人でも、もともとはソウル系の人だったり、カントリー系の人だったり、そういう人達がこの時代はAORを作って、AORが下火になると他の方へ行ったり、元のルーツの方へ戻ったアーティストもたくさんいますので、僕なんかはジャンルというよりは一つのサウンドのスタイルとしてAORをとらえた方が、あまり堅苦しくなくていいと思います。アーティスト自身が、自分はAORをやっているという感覚がなかったりしますので、自然につくって、今の時代ならこういうサウンドのテイストがうけるよねっていう感じでできたのが、その時代はAORだったという人が多いのです。自分はAORをやりますとか、自分はAORはやりませんとかそういうものでもなかったと感じなので、AORというのはサウンドのスタイルだと思います。AORがまだ流行りだす前、1970年代半ばくらいに、自分のルーツからはみ出してだんだん洗練に向かっていく過程で出したヒット曲を二曲お届けしたいと思います。シールズ&クロフツ(Seals and Crofts)でDiamond Girl、ジェームス・テイラー(James Taylor)でHow Sweet It Is (To Be Loved By You) 。