20180826
児島由紀子「2年ぶりの新作を出すエイフェックス・ツインについてです。いつもぶっ飛んだビデオを作る人ですけれども。最近の音は、以前のような暴力的で不快感を催す感じではなくて、上品にアンビエント風になってきているんですよ。やっぱり大人になってきたんでしょうね。今回の新作は5曲入りのEPが出るんですね。新曲のT69 Collapseが公開されたばかりなんですけれども、このビデオもすごいですね。音もブライアン・イーノ(Brian Eno)とかピンク・フロイド(Pink Floyd)っぽくなってきましたよね。」
渋谷陽一「そうですね。オーガニックなにおいもありつつ、すごくスピード感もあって、なかなか迫力がありますよね。」
児島「ありますね。でも、1990年代の奇妙で夜中に起きられないようなビデオがちょっと懐かしくなりますけれども。」
渋谷「そうですね。怖い感じはなくなって、でも今はそういう時代じゃないから、彼自身もすごく時代を感じているんじゃないんですかね。」
児島「そうですね。その辺も時流に合わせたんでしょう。」
渋谷「そちらでの反響はどうですか。」
児島「エイフェックス・ツインは新作を出すとき、いつも謎の出し方をするんですよね。いきなりクラブの広告に出たりとか、道の標識にパッとでたりとか。今回もそういう感じで、ある特定の場所にだけ出て、ファンが必死になって謎解きをするという。いつもの楽しみが今回は倍増した感じです。」
渋谷「時代も変わって、エイフェックス・ツイン以外にもダンスミュージックってすごく変わってきているし、こういうインストゥルメンタルな打ち込み系の音楽も進化している中で、エイフェックス・ツインも。」
児島「いまはまさにエレクトロニカがピークの時期じゃないですか。アンダーグラウンドな動きではありますけれども、いまはエレクトロニカが一番尖っている時期なんですよね。アンダーグラウンドシーンでは。」
渋谷「そうですね。ただ、新しい世代が台頭してきている中で、オールドスクールなエイフェックス・ツインというのは。」
児島「たしかにこの人はオールドスクールになりますよね。」
渋谷「それでも若い世代からリスペクトはある感じなんですかね。」
児島「ありますよ。こういうある種ホラー映画を想像させるような音作りとビジュアル作りをするエレクトロニカ系のアーティストって他にはいないじゃないですか。」
渋谷「そうですね。」
児島「だから今でもユニークでオリジナルな存在ですよね。」
渋谷「ではこれで本格的に新作を発表して、ライブとかそういうこともやってくれそうですかね。」
児島「やってくれるんでしょうかね。その辺のところはまだ発表されていないんですけれども、新作を出すならツアーくらいはするでしょう。」
渋谷「でも、それも楽しみですね。どういう技を繰り出してくるのか。」
児島「楽しみですね。リリースされるのが9月でフェスシーズンが終わる頃なんですけれども、自分用のイベントを企画するんじゃないんでしょうかね。」
渋谷「わかりました。そういう動きが具体化したらまた教えてください。それでは最新型のエイフェックス・ツイン、どんなサウンドなのか聞いていただきたいと思います。T69 Collapse。」
渋谷「児島さんが言っていましたけれども、エイフェックス・ツインの怖い顔ありますよね。まさにあれが彼の時代感覚の姿勢なんですけれども、例えば今年のサマーソニック(SUMMER SONIC)で来日したマシュメロ(Marshmello)という、今のダンスミュージックのトレンドの彼の持っているすごく漫画みたいなキャラとすごく好対照で、まさに今がマシュメロ的なああいう顔が時代感覚に合っているとするならば、エイフェックス・ツインがそれとどう戦うのかというのは、すごく興味深いというか、彼自身の新作の全体像がどうなっているのか注目したいと思います。」
1997年のエイフェックス・ツインのCome to Daddyから2016年のマシュメロのAlone。約20年でダンスミュージックもだいぶ変わっています。
1997年のエイフェックス・ツインのCome to Daddyから2016年のマシュメロのAlone。約20年でダンスミュージックもだいぶ変わっています。