20181014
レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)の新作についてです。久しぶりと思われる方も多いのではないのでしょうか。4年ぶりの新作です。レニー・クラヴィッツはこの4年間のインターバルの間に、クリエーターとしての悩みの時期に入って、本当に次のアルバムを作れるのだろうか、自分の中から湧き上がる創作のモチベーションはちゃんとキープできるのだろうかと、そういう状態にあったのですが、ここにきて自分自身の時代に対する危機感というものがすごく強まり、だからこそもういっぺんアルバムを作らなきゃという状態になったそうです。何度この話を私はこの番組で最近したのか分かりませんけれども、こういうような思いで、今の世界に対する危機感、そしてアメリカの現状に対する危機感が、新しい創作のモチベーションにつながったアーティストがたくさんいます。ものすごく皮肉な言い方をするならば、トランプ大統領はある意味アメリカのロックが活性化する、一つの陰の主役だったのかもしれません。アルバムタイトルが「Raise Vibration」。まさにタイトル通りに、もういっぺん俺たちの気持ちを高めるんだと。だからこそ俺たちはこの気持ちで世界に向き合うんだというメッセージが込められたナンバーで、こんな歌詞です。
キリストのように
彼の教えのように
主のように振舞うんだ
キング牧師が剣を持たずに始めたように
ガンジーが戦争に行きながら決して銃を使わなかったように
俺たちは一丸となりそして愛があればそれができる
俺たちは気持ちを高めないといけない
目を覚まして気持ちを高めるんだ
高めろ
気持ちを高めるんだ
レニー・クラヴィッツでRaise Vibration。
今回のアルバムにレニー・クラヴィッツ自身がメッセージを書いているんですけれども、
1989年のデビューアルバム「Let Love Rule」から今作「Raise Vibration」に至るまで、俺の伝えたいことはずっと変わっていない。それは常にLoveについてなんだ。俺たちはとてつもなく困難な時代を生きている。生き残るためには何もかもが要求される。俺たちは気持ちを高めないといけない。そして我々人類はみなひとつということを理解しなければならない。起源と創造者を。そして兄弟を。野生動物と自然を国境なきこの地球上でシェアしているということを。誰かを憎む余地なんてないんだ。これらの楽曲とともにあなたに平和、愛、そして結束を。愛をこめて。
レニー・クラヴィッツはこういうメッセージを一貫して伝えてきたアーティストであるし、この時代においてまさに自分の役割をもう一度しっかり設定して、Raise Vibrationというメッセージを掲げたアルバムを作ろうという気になったと、こういうアーティストは非常に多いですよね。最近はテイラー・スウィフト(Taylor Swift)も自らの投票行動を明らかにして、自分たちのファンに向けてちゃんと選挙人登録をして選挙に行きなさいよと、そういうメッセージを出して、そういう気運がアーティストの間に高まっているということは、日本にいてもすごくリアルに伝わってきます。ただそういう大きなメッセージだけではなくて、今回のアルバムはまさに今生きている一人の市民の生活みたいなものにスポットをあてて、それを非常にすぐれた物語にした楽曲があります。5 More Days ‘til Summerという、夏まであと5日という曲なんですが、これはずっと夜勤で60代後半まで働いていた一人の労働者が、ようやく休みをとり、初めてのサマーバケーションに出かけるという物語を歌にした、そういう楽曲です。5 More Days ‘til Summer。