20181021
マッドハニー (Mudhoney)の最新アルバム「Digital Garbage」からOh Yeah。
1分半以下の非常に短い曲で、いかにもマッドハニーという、そういう感じの楽曲でした。マッドハニーは、誰もが言う言い方なんですけれども、グランジシーンの先駆者というか、ゴッドファーザーというか、ニルヴァーナ (Nirvana) のカート・コバーン(Kurt Cobain)に影響を与えたグランジシーンの兄貴というか、シアトルで30年のキャリアを誇るバンドです。メンバー的には、「俺たちが出てきた頃にはグランジなんて下火で、もしニルヴァーナがないかったらグランジシーンなんてなかったかもしれないよねぇ」と等身大の発言をしっかりとする、クールなバンドでありますけれども、彼ら自身が非常にストレートなロックンロールを30年間叩きつけてきたものというのは、まったく劣化していないし、彼ら自身の存在、エッジの立った在り様というものも、ずっと一貫してロックファンの中で支持されてきました。ただ、前作から5年のインターバルがあり、今回は久しぶりの作品となりました。タイトルが「Digital Garbage」。デジタルのゴミというタイトルがついています。アメリカの今日的な状況に対する危機感、それがロックバンドにどれだけ多くの影響を与え、その危機感が彼ら自身をどう突き動かしているのかということをすごく感じさせるアメリカのバンドが多いですけれども、マッドハニーも現在のアメリカに対するすごい危機感があるし、大人である彼らが今のデジタル社会に対する今の在り様、こんなことでいいんだろうかという危機感をすごく持っていて、それがこの作品に反映されています。続いて聞くのがKill Yourself Live。自殺を生中継するという今日的で生々しい、でもすごく暗く絶望的なテーマを取り上げたナンバーです。
俺が自殺の生中継をしたときはすごい数の「いいね」をもらった
ほら君も試してみなよ自殺の生中継
超有名になれるぜ
超人気者になれる
皆が小さな画面で視聴するんだ
最高だろうね
きっと信じられないくらい
自殺を生中継
自殺を生中継
しなよ「いいね」をもらうために
君は実に特別な子どもだった
君は追悼されるだろう
社会がいかに君を見捨てたかが問われ
君の名を冠した法律が可決される
そして君は生き続けるんだ
ネット空間のデジタルなゴミにまじって
「Digital Garbage」というアルバムタイトルになった基本となる楽曲なんですけれども、こういうすごく荒涼とした社会。こんなことで本当にいいのだろうかと。ここで今の若者たちが消耗し、すり減っていくことの危機感。そんなものがこのアルバムは貫かれております。Kill Yourself Live。
続いては、21st Century Phariseesというナンバーを聞きます。Phariseesとは、イエス・キリストから偽善者とみなされた律法学者パリサイ人を指す言葉なんですけれども、世の中には倫理だとか正義だとかを語りながら、現実的にはすごく偽善的なことをやっている人達がたくさんいる。そういう人間に対する怒りと糾弾みたいなものが歌われている、マッドハニーのグランジ魂が爆発している曲です。21st Century Pharisees。