ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

それでもザ・ダークネス(The Darkness)はロックンロールをやった

20191020 

 ザ・ダークネスでHow Can I Lose Your Love?



 ザ・ダークネスの最新作「Easter Is Cancelled」という作品。これがものすごく面白いというか、興味深いというか、楽しい作品です。これはどういうものをテーマにしているかというと、ロックンロールが復活する、それはないぞという、まさに「Easter Is Cancelled」、復活はキャンセルされたというロックンロールの死をテーマにした作品であります。まず一曲目にRock and Roll Deserves to Die、ロックンロールは死ぬことが約束されているというタイトルのナンバーです。

  ロックンロールよいよいよお前の番だ
  あいにくだがお前は死んでもらわないと
  ロックンロールよいよいよお前の番だ
  それじゃああいにくだが死んでもらわないと
  俺たちがみな築いたのは砂上の楼閣
  台風の中で全身タトゥーのペテン師たちは傷ひとつつかない
  演じているのはすべて作り事
  その首が飛ぶことになるのさ
  判決が下ったらお前の旗がしっかり結ばれていたのは沈んでいくガラオン船のマストだったと気づくだろう
  死に値する
  ロックンロールは死に値する



 これがファーストシングルなんですけれども、これから始まるという。でも実は、本当にロックンロールの死を歌っているわけではなくて、むしろロックンロールが死につつある現状の中で、でもロックンロールは俺たちの命なんだということを歌い上げるナンバーで、今聞いていただいたように、今時ここまでオールドスクールなロックンロールをやるかという音が鳴っていますけれども、まさにこれがザ・ダークネスのスタイルであります。続いて聞く曲はLive 'Til I Die、死ぬまで生きよという曲なんですけれども、ザ・ダークネスはジャスティン・ホーキンス(Justin Hawkins)というボーカルが世界観を作り上げているんですけれども、彼自身の人生と、彼自身の今の在り方みたいなものを、それこそ今ロックンロールが死にいく中で、自分はどうやってアイデンティティーをきっちり形成していこうかとそのメッセージが歌われているナンバーです。

  俺が婚外子として生まれたのは1975年3月17日のこと
  父親が寸暇を惜しんで必死に働く姿を見ていた
  俺が夢を追い続けられるようにって
  三人の子のうち俺が長男
  プレッシャーを感じたことは一度もなかった
  こんな考えを抱いていたよ
  手に入らないかもしれないことはそんなことは考えるな
  崖っぷちに立たされるまでは
  死ぬまで生きよう
  泣くまで笑おう
  死ぬまで生きよう
  泣くまで笑おう
  自分が何を探しているのか分かっているから
  もう耳は貸さない
  もうこれからは
  そうだな14歳になることにはいくつかの変化を経験したよ
  ロックファッションの楽しさを経験した
  ありえないほど細身のジーンズをはく主義で
  髪を伸ばすように心がけた
  だが子どもっていうのは残酷で
  俺は学校じゃ嫌われ者
  集団でからかわれる対象になっていた
  それでも俺は自分を貫き無茶な連中の笑い声を乗り越えるのさ
  死ぬまで生きよう
  泣くまで笑おう
  自分が何を探しているのか分かっているから
  もう耳は貸さない
  俺が人生でうけた一番適格なアドバイスは
  父親からもらった俺がどう生きたいかということについてだ
  もしそれがお前の歩んでいきたい道ならば
  好きな服をもう一度着て周りのことは気にするな
  俺はいつだって味方だしお前がうまく言えないときは俺が分かりやすく話を聞かせてやろう
  学校でピエロ役を演じないといけないなんて思わなくていい
  お前には素質がある
  お前が望めば失敗から学ぶことだってできるんだ
  死ぬまで生きよう
  泣くまで笑おう
  死ぬまで生きよう
  泣くまで笑おう

 続いてはHeavy Metal Lover。もうタイトルの通り、自分のヘヴィメタル好きの恋人について歌っている歌でございます。



 このアルバムは全10曲になっています。それで、今聞いていただきましたように一つの物語が貫かれていて、ロックンロールをテーマに、現在の逆境の中でどう戦い、そして自分はその中でどう生きていくのかというテーマが歌われていくんですけれども、一番最後の10曲目がWe Are the Guitar Men。つまり、この世の中で虐げられているロックンロール。そして、最近はピート・タウンゼント(Pete Townshend)がギターはもうロックの主役じゃなくなったと発言をしておりますけれども、そうなったのは何年も前かもしれません。でも、We Are the Guitar Menという曲でこのアルバムは閉じられます。

  もし俺のギターがなかったらこの両手はやることがなく暇だっただろう
  俺の脳は死にたくなっていたはず
  この心の中に押し寄せる感情のたかぶりのはけ口がなくなって
  涙をこらえているときは彼女の首根っこをつかみ
  ピックで彼女をかき鳴らすのさ
  伴奏のない人生じゃ俺は難破してしまうから
  俺たちに決して別れが来ないことを願う
  俺にギターをくれ
  俺の魂の延長部分
  彼女をこの腕に抱くと自分を抑えられなくなるのさ
  彼女に満たされ自分が完全だったと思える
  俺たちはギターマン
  言葉が見つからないときは
  この指が語ってくれるのさ
  苦しみ喜び愛憎しみ
  だから聞いてくれ
  俺の楽器が大勢の人にあてたメモを書きとるのを
  この可愛いギターをどれほど愛しているのか
  弦楽器職人にはとても感謝している
  このフレットの一つ一つを作ってくれて
  この愛しのベイビーをこの腕に抱くと
  自分にも居場所があると感じるのさ
  俺にギターをくれ
  俺の魂の延長部分
  彼女をこの腕に抱くと自分を抑えれなくなるのさ
  彼女に満たされ自分が完全だったと思える
  俺たちはギターマン
  ロックンロール万歳!

 このアルバムについてメンバーはこう語っております。

  アルバムの曲たちはたとえ話を通して人間の存在を定義する。ゆっくりとした死と最終的なロックンロールの輝かしい再生。これは文字通り聖書のようなレコードだ。ロックンロールは悪魔の音楽だといった人は、このアルバムを聴いて、実際にはロックンロールこそが神の声であると理解しなければいけない。

 どこまで本気でどこまで冗談なのかよくわからないですけれども、全部本気だと思います。一番最初に紹介しましたロックンロールは死が予約されているというナンバーがリードシングルになるんですけれども、ビデオクリップを見るとメンバーが一生懸命演奏しているとだんだん風が強くなって、かつらが全部飛んで頭に毛がないことが明らかになるという超お笑いビデオで、コミックバンドなのかなと思う人もいるかもしれませんが、笑いは笑いで真剣、でもテーマは別に笑いじゃなくて、そういうような方法論を通じてものすごくシリアスなメッセージを伝えるというのは彼らの基本的なありようでございまして、すごいですよ。エド・シーラン(Ed Sheeran)の前座でUKツアーを周るらしいですけれども、エド・シーランファンはどう彼らを聞くのか、エド・シーランはこのバンド好きだろうなぁというのを感じます。


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