ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

ダーティー・プロジェクターズ(Dirty Projectors)はノイ!(NEU!)である説

20121221

渋谷陽一「ダーティー・プロジェクターズはいわゆるブルックリンを主体とするネオ・フォークとかネオ・サイケとかと言われているもので、これがライブがすばらしかったんですよ。わりと伊藤さんも好きな70年代のフォークとかロックとか、それこそクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(Crosby, Stills, Nash & Young)とかああいうのとも共通する何かがありますよね。実は最初でてきた時はイェール大学で音楽を学んでみたいなところがインテリ臭くて、音楽研究家っぽいところで、私はちょっとこういうのはなぁって思っていたら、どんどん肉体化していって、ちょっと私の読み間違えでどんどんよくなっていっちゃってあせったりしたんですけれども、でもすごいですね。伊藤さんにも絶対に気に入ってもらえるんじゃないかとそんな予感がします。Offspring Are Blank。」



渋谷「伊藤さんどうでしたか?」

伊藤政則「ノイ!だね。」

渋谷「ダーティー・プロジェクターズをノイ!ってはじめて聞いたよ。」

伊藤「ノイ!とかクラスター(cluster)とか、私のプログレ人生の中でも最も相性の悪い・・・。」

渋谷「これをノイ!って言ったのは笑った。」

大貫憲章「Offspring Are Blankを聞いてノイ!を思い浮かべたんだ。」

伊藤「最初の10秒ね。」


ニール・ヤング(Neil Young)、クレイジー・ホース(Crazy Horse)の演奏が下手な事を認める

20121214

 今年になって二枚目のアルバムになるという、ものすごい量産体制に入っておりますけれども、ニール・ヤング。しかも今回のアルバムは二枚組み。もう表現意欲と表現エネルギーが爆発している状態のニール・ヤング65歳でございます。前作が世の中に存在するプロテストソングのスタンダードナンバーを集めて、それをカバーするという、これはこれで実にニール・ヤングらしい作品だったんですけれども、今回は完全なオリジナル作でございます。いきなりディスク1の一曲目の曲が27分の曲で、どうしちゃたんでしょうニール・ヤング。すごいですね。本当に長い曲が多く爆発しております。今回は、クレイジー・ホースと久しぶりにやったということなんですが、最近ニール・ヤングは自伝をだしまして、これが大変面白い作品で、一行目から僕はやられてしまったんですけれども、非常に正直にニール・ヤングらしい文体でいろいろなことが書かれているんですが、最新作をクレイジー・ホースと一緒にやっていることについて、いろいろな人に「クレイジー・ホースみたいに演奏もできないバンドと一緒にやって何が面白いんだ」みたいなことを言われるけれども、俺はクレイジー・ホースのグルーブが大好きであそこでしか表現できないものが欲しくてレコーディングをするんだとコメントをしていて、演奏できなっていう部分は否定しないんだみたいな、ビックリしたんですけれども、このハチャメチャなクレイジー・ホースのエネルギーと八方破りの演奏スタイルと、ニール・ヤングの今のテンションと表現欲求みたいなものがものすごい高いレベルでぶつかり、有機的に結合した作品となっております。She's Always Dancing。



Psychedelic Pill (Alternate Mix)



For the Love of Man



サウンドガーデン (Soundgarden)はなぜ日本での認知度が低いのか?

20121123

1、最も印象に残ったグランジアルバムベスト10

 最近、アメリカを代表するローリング・ストーンズ誌が最も印象に残ったグランジアルバムベスト10というものの読者投票をやって、読者が選んだ代表的グランジアルバムが、

 1位 パール・ジャム (Pearl Jam)「Ten」

 2位 ニルヴァーナ (Nirvana) 「Nevermind」

 3位 アリス・イン・チェインズ (Alice in Chains) 「Dirt」

 4位 ニルヴァーナ (Nirvana) 「In Utero」

 5位 サウンドガーデン (Soundgarden) 「Superunknown」

 6位 サウンドガーデン (Soundgarden) 「Badmotorfinger」

 7位 ニルヴァーナ (Nirvana) 「Bleach」

 8位 パール・ジャム (Pearl Jam)「Vs.」

 9位 テンプル・オブ・ザ・ドッグ(Temple of the Dog)「Temple of the Dog」

 10位 マッドハニー (Mudhoney)「Superfuzz Bigmuff」

 となっています。

2、サウンドガーデン (Soundgarden)はなぜ日本での認知度が低いのか?

 トップ10にニルヴァーナが3枚、パール・ジャムとサウンドガーデンが2枚と、この三つのバンドでほとんどのトップ10をおさえてしまっているわけですけれども、つまり、この三つのバンドがグランジシーンを代表するバンドであるという認識が、アメリカにおいては当然のごとくあるんですが、日本ではちょっとないですよね。このサウンドガーデンのこってり感がちょっと日本人の草食感に合わないのか、正確に認識されていない側面もあります。だから16年ぶりのオリジナルアルバムすごいぞとアメリカでは盛り上がっていても、日本ではイマイチという所もあるし、それからもともとグランジシーンの中において、サウンドガーデンはお兄さん格というか先輩格で、ニルヴァーナやパール・ジャムがグランジらしい音をたたき出す前に、佇まいと方向性は同じなんですけれども、メタルシーンにおいて強いバンドとしてサウンドガーデンが出てきてしまって、グラミー賞でベストメタルパフォーマンスとかベストメタルバンドとかそういう感じで賞を貰った部分が、日本においてサウンドガーデンのキャラクターが見えにくくなってきた理由だと思います。しかし、せっかく再結成をしたわけですので、もういっぺんサウンドガーデンの偉大さを我々のような人間がアピールしていくのがいいのではないのかと思います。Non-State Actor。



Been Away Too Long



Bones of Birds




グリーン・デイ(Green Day) に学ぶ、なぜ人はパーティーを必要とするのか?

20121123

1、グリーン・デイ三部作

 グリーン・デイでStop When the Red Lights Flash。



 みなさんご存知のように今グリーン・デイは絶賛三部作を立て続けにリリースしている最中でありまして、前作のUno!が9月26日にリリースされまして、いま聞いていただきました最新作Dos!がそれから約2ヶ月後の11月16日、そしてその次のTre!が1月16日に出るということで、すごいですよね。このガッチリとしたフルアルバムが次から次へと二ヶ月のインターバルで発表し続けるグリーンデイと言うところであります。ビリー・ジョー自身がこの三部作の内容を、一作目Uno!は青春時代、二作目Dos!はセックス・ドラック・ロックンロール、そして三作目のTre!はパーティーの翌朝の自己反省という位置づけをしているようでありまして、別に狙って作ったわけではないんでしょうけれども、大量の曲ができてそれを仕分けしているうちにこういう風に分けるといいんじゃないかということになったようであります。まさにそういうテーマに則った、彼ら流に言うところのロックンロールパーティーがこの二作目のDos!に凝縮されているわけでございます。その中から当然のようにご機嫌なナンバーを聞いていただこうと思います。Stray Heart。



2、なぜ人はパーティーを必要とするのか?

 今回のアルバムはいわゆるパーティーロックンロールみたいなものが一つのテーマとなっているんですが、ただグリーン・デイのパーティーはただ単にみんなご機嫌で楽しいぜっていうものではないことは、この番組を聞いている方は容易に分かると思います。なぜ人はパーティーを必要とするのかというと、日常が幸せではないから一瞬の刹那な喜びに走るという側面もあると思います。ロックンロールパーティーにはそういう側面があり、そして三作目はパーティーの後の自己反省になるようですけれども、今回のアルバムの中にもパーティー自身が持っている暗さ、重さみたいなものが的確に表現されていて、我々は何故パーティーの喧騒の中に身をおかないと日常のやるせなさをやりすごすことができないのか、そんな思いがすごく表現されています。そこがやはりすごいところであるし、だからこそロックンロールアルバムになっているわけですけれども、続いてはグリーン・デイお得意のミディアムナンバーを聞くんですけれども、Wild Oneという曲で、この曲は一人の女の子がテーマになっていて、自分にとってのWild Oneの女の子、それはただ単に幸せではなくて、心に闇を持っているということが歌われております。Wild One。




ハート(Heart)に学ぶ、ロックはどのように継続していけばよいのか?

20121102

1、15th「Fanatic」

 結成から40年以上のキャリアをほこるバンドハート(Heart)が新作を発表しました。皆さんの中でハートがどういうイメージがあるのかは分かりませんが、70年代にデビューしてものすごいヒットをとばし、その後ちょっと低迷して、その後80年代になって当初のハードロックとはちょっと違うビックロック的な佇まいでものすごくヒットを飛ばし、そしてまた下火になり、2000年前後に低迷期やソロ活動を経て、再び最近になって復活して、前作はなんと彼女達にとっては20年ぶりのトップ10ヒットという、全米のアルバムチャート3位までのぼりつめたという、それに続いての作品なんですけれども、まさにこのハートについて、同じシアトル出身のパール・ジャム(Pearl Jam)のメンバーがこのように語っているんですけれども、

  ハートは地元の先輩バンドなんだ。彼女達は曲を書き続け、レコードを出し続け、一生懸命ライブをやればどこまでいけるのかを俺達に示してくれたんだ。

 という言葉がまさにいまのハートを象徴しているように思います。その最新アルバム「Fanatic」からアルバムタイトルナンバーのFanaticを聞いていください。Fanatic。



 もともとのハードなオリジナルのイメージを壊すことはなく、でも懐メロにはなってない、21世紀型の音を作り上げているのがすごいと思うんですけれども、このようなすばらしいサウンドを作ったきっかけはベン・ミンク(Ben Mink)という非常に優れたプロデューサーとの出会いがあって、彼との共同作業が成功を支えているような気がします。次のナンバーも決して古くない、でもやはり40年前のハートの心がるという素晴らしいナンバーだと思います。Skin and Bones。



2、ロックが向かい合う新たな問題、「老い」、「継続」

 パール・ジャムのメンバーが言った言葉は、ロックの基本というか、表現活動の基本というか、基本的なことをやり続け、そして表現を続けてどこまでいけるのかということは、ロックは長い歴史を持つようになってきましたけれども、数多くのミュージシャンが向き合っているテーマだと思います。非常に青春的な音楽、一時的な音楽というような形でスタートしたロックも、その歴史を重ねるにおいて、「老い」というテーマや「継続」というテーマに向き合うことになっているわけで、今日聞いていただいたアーティスト達の作品というのは、それに対する力強い解答になっているのではないのかなと思います。
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