20120921
この「Banga」というアルバムを作るについて、パティ・スミスは自分の中でいろいろな作品に向かうモチベーションを高め、そしてこの作品を素晴らしいものにするための試行錯誤として旅をし、いろいろなことを考え、その中で自分が思い至ったことや刺激をうけた音楽を自分の作品に取り込みながら、非常にスケールの大きい、そして時事性のある、そしてシリアスなテーマをもった作品を作りました。まず一番最初はアルバムの一番最初のナンバーなんですけれどもAmerigo。私は旅をしてこの作品を作ったんだよということが歌われ、まさにアメリカという国がどうしてできたのかというような大きなテーマまで向かい合って、アルバムがこの曲によってはじまりますというような、オープニングナンバーに相応しいナンバーになっております。Amerigo。
この曲が一曲目に出てくると今度の作品は気合が入ってるなぁという手ごたえを感じます。このアルバムはほんとうにいろいろな曲が入っているんですけれども、時事性があるというか、2012年の作品として発表される、そういう作品ならではのナンバーをこれから聞いていこうと思います。まず最初に取り上げるのはFuji-sanという曲です。これはまさに日本の富士山のことを歌っている歌でありまして、東日本大震災直後にニューヨークでオヨ・ヨーコ(Ono Yoko)の呼びかけで行われた震災救済チャリティーコンサートに、パティ・スミスはすぐに参加を表明してみごとなパフォーマンスをやってくれたわけですけれども、彼女自身はこの東日本大震災に対してすごく心を痛め、その思いからFuji-sanという曲という曲を作りました。Mount FujiではなくまさにFuji-sanという日本語そのままに歌詞にしているところが彼女のリアルを感じます。
私の山富士山よ
私達は登っていく
青一色の中へ
偉大なる霧の中へ
明るさの中へ
あなたの光の中へ
私達の目の山よ
私達は呼んでいます
この叫びが聞こえますか
貧しい少年に何が出来るでしょう
貧しい少女に何が出来るでしょう
私達はあなたに呼びかけています
AH 富士山
続いての曲もまさに2012年という時代と、彼女自身が生きたリアルをそのまま歌にしたいという、パティ・スミスの思いが反映されたナンバーです。This Is the Girlという曲を聞きます。これは、先日亡くなったエイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)をとりあげたナンバーで、エイミー・ワインハウスのことをパティ・スミスは非常に好きだったようなんですけれども、その彼女が亡くなったことに対する残念な思いや、パティ・スミスが彼女に感じる共感みたいなものがテーマになっていて、さらに実にエイミー・ワインハウスっぽい曲なんですよ。こんな器用なことが出来る人なんだな、パティ・スミスってと思いました。This Is the Girl。