ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

2016年、アルバムをCDで発売しないミュージシャンが増える

20161216 
  
中村明美「2016年の年間ベストについてご紹介します。アメリカのメジャーメディアが2016年のベストアルバムを次々と発表しています。全体的にみるとダントツで一位になっているのが、ビヨンセ(Beyonce)のレモネード。テーマ的にも人権問題を扱ってすごく目標の高い作品を作ろうとして、それを実際に形にした能力があったと絶賛されているんですけれども、音楽的にもビヨンセにしたらすごく珍しく、ジェイムス・ブレイク(James Blake)とか、ジャック・ホワイト(Jack White)など新しい才能とコラボをして、ありがちな有名なプロデューサを起用した作品ではなかった、彼女自身も挑戦しながら、しかも彼女はいままで優等生的な感じで歌を歌ってきたんですが、いままで見せてこなかった自分のエモーションをむき出しにした作品であるということで、非の打ちどころのない作品なので、すごく絶賛されています。それ以外に注目すべき点は、今年はカニエ・ウェスト(Kanye West)、フランク・オーシャン(Frank Ocean)、チャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)というヒップホップとR&Bの天才的の作品が今年を代表する作品として年間リストに必ず入っているんですけれども、彼らはアーティストとしてすばらしい作品を作っただけではなくて、三人ともCDを発売しなくてですね、ストリーミングのみでアルバムを発表したという。さらに、フランク・オーシャンとチャンス・ザ・ラッパーに関してはもうレーベルにも所属していないと、自分のみでアルバムを発表していくという、アルバムの内容だけではなくてそのあり方に関しても先を見ている、新しいミュージシャン達が出てきているという点も注目されました。あと注目すべきは、レナード・コーエン(Leonard Cohen)とデヴィッド・ボウイ(David Bowie)。彼らは今年亡くなってしまった偉大なるスターなんですけれども、亡くなる前に発表した最後の作品が亡くなる前から絶賛されていて、二人とも死を予期しながらすばらしい作品を作ったということで、そこらへんが偉大なるアーティストの偉大なる所以だなと思います。ロック勢はなかなか振るわなかったんですが、レディオヘッド(Radiohead)がさすがにリストに入っておりまして、その他は若者なんですがカー・シート・ヘッドレス(Car Seat Headrest)が必ずリストにはいっておりました。今日ご紹介したいのはミツキ(Mitski)という25歳のブルックリン出身の若い女性シンガーです彼女は日本人とアメリカ人のハーフではあるんですけれども、世界各国を転々としておりまして、サウンドを聞いていただければわかると思うんですが、90年代のアメリカインディーロックっぽいサウンドが聞こえてくるんですが、日本のポップミュージックのようにも聞こえてきて、そういうものを重ねながら、独自のポップソングとして強靭な音を作っております。まだ25歳なんですがこれから楽しみな才能なので、今年聞いていない人はぜひ今年が終わるまでに聞いていただきたいです。」

渋谷陽一「なるほど。基本的に2016年は豊かな年だったなぁという気がしますよね。」

中村「そうですね。激動の年だったことと関係しているのかもしれませんけれども、去年に引き続きすばらしいアルバムが出まくったすばらしい年でした。」

渋谷「たくさんのアーティストの名前が登場しましたが、ここではミツキさんという日本人とアメリカ人のハーフの女性シンガーを聞いていただこうと思います。90年代のインディーロックのみならず、彼女は中島みゆきやユーミンのファンだということなんですけれども、いろいろな音楽的要素がたくさん入っている、でもこの一曲を聞いていただくとどれだけすごいものなのかがすぐにわかると思います。Your Best American Girl。」



 ※ 2012年7月から始めたWorld Rock Nowのメモが約4年半かかってやっと最新の放送までたどり着きました。

レナード・コーエン(Leonard Cohen)の最期

20161209 

 レナード・コーエンの遺作になってしまったYou Want It Darkerという作品を紹介したいと思います。デヴィッド・ボウイ(David Bowie)は自分の死を予感して最後の作品を作りましたけれども、レナード・コーエンの場合はそうではなかったと思います。でもこれがいつ最後の作品になってもいいというものが彼のアルバムの中には込められていて、そうした意味では彼の重い決意と、でもすばらしいエネルギーが込められたすばらしい作品です。まずはアルバムタイトルナンバーを聞いていただこうと思います。You Want It Darker。

  あなたがゲームの親なら私は抜けさせてもらう
  あなたが医者なら私は砕かれて傷ついている
  栄光があなたにあるなら私にあるのは屈辱に違いない
  あなたはこの世界をさらに暗くしたい
  でも人間が最後の炎をともす
  彼らは囚人を一列に並べ看守が銃の狙いを定めている
  私はいくつもの悪魔と戦ってきた
  そのどれもが飼いならされた中産階級であった
  知らなかった許されていると  
  殺したり傷つけたりすることを
  あなたはこの世界をさらに暗くしたい
  Hineni, hineni
  私はここにいます
  覚悟はできていますよ
  主よ

 

 このアルバムはものすごい、すばらしいアルバムなんですけれども、一曲やはりレナード・コーエンでしか表現できないOn the Levelという曲を聞こうと思うんですけれども、彼はもう80を超えているんですけれども、でも世界中で彼しか表現できない、世界中で彼しかこの歌を歌えないのではないかと思える、非常に性的な官能性というものを見事に、この年齢で表現している、すばらしい曲を聞いていただこうと思います。

  最初から分かっていた
  この関係は間違っていると
  少しの疑いもなかった
  私は人生の夕暮れに近づいていた
  あなたの人生はこれから始まるところだった
  私は言った 
  「そろそろお暇しなければ」
  あなたは言った
  「まだ時間はたっぷりあるわ」
  あなたは私が若者であるかのようにほほ笑んだ
  私はドギマギし息を飲んだ
  あなたの魅惑的な香りが辺りに漂っていた
  あなたは一糸まとわず私の前に立っていた
  私は気が動転し「途方に暮れた」は「見つけた」になり
  「やるな」は「やれ」になった
  率直に言おう
  私があなたから歩み去った時私は悪魔に背を向けた
  と同時に天使にも背を向けたのだ
  私の心は表彰されるべきだ
  あなたを手放したことに対し
  私が悪魔に背を向けた時天使にも背を向けたのだ
  私はいまこの寺に住んでいる
  ここで私はいつも命令される
  老いた私は妥協しなければならない
  異なる見解に対し
  私は誘惑と戦っていた
  でも勝ちたくなかった
  私は見たくなかった
  誘惑が手を引くのを
  あなたの魅惑的な香りが辺りに漂っていた
  あなたは一糸まとわず私の前に立っていた
  私は気が動転し「途方に暮れた」は「見つけた」になり
  「やるな」は「やれ」になった

  


ア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)、18年ぶりの新作でラストアルバムを発表する

20161202

中村明美「ア・トライブ・コールド・クエストの18年ぶりの新作でラストアルバムについてです。ア・トライブ・コールド・クエストは90年代に活躍して、ジャズサウンドを取り入れて、ヒップホップシーンでもオルタナ的なものを持つ伝説のバンドでした。1998年に一度解散をして、2000年代には何度か再結成的なものをしたんですけれども、25周年にテレビ出演をしたことがきっかけで、四人が集まったので新作をつくろうではないかということで盛り上がったらしくて、ここから新作を作ることになりました。しかし、その作っている最中にファイフ・ドーグ(Phife Dawg)が亡くなってしまいまして、じゃあこれがラストアルバムだということになって、ラストアルバムを作ることになりました。18年ぶりということで、ふたを開けてみたらさすが伝説のグループだけあって、今の若き才能達が結集しておりまして、ケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)、カニエ・ウェスト(Kanye West)、Anderson Paak、アンドレ・3000 (André 3000)、ジャック・ホワイト(Jack White)なんかも面白い形で参加しています。サウンド的にはいかにもア・トライブ・コールド・クエストのこういうサウンドがききたかったという、すごく懐かしいようなサウンドでありつつも、歌詞が今のトランプが大統領になることが分かっていたのではないのかというほど今の狂ったような混乱を言い当てている、さすがQティップ(Q-Tip)のすばらしい歌詞だなと、ダークなユーモアもあるすばらしいアルバムになっていて、アメリアでも絶賛されています。さらにそれだけではなくて、グループ史上初の一位を獲得したという、すばらしい作品で盛り上がっております。」

渋谷陽一「ゲストの面々を見ると、彼らの影響をうけただろうなぁという感じがすごくしますよね。」

中村「そうですね。彼らがいなかったら、ケンドリック・ラマーのような才能も生まれてこなかったという、彼らが参加したことでそれが若い世代にも伝わると、そういう感じになっていると思います。」

渋谷「そういう感じがしますね。今起こっている、ヒップヒップとジャズとのスタイルとしての接近というか影響のし合い、それはヒップホップにジャズが導入されるだけではなくて、ジャズの中にもヒップホップ的な要素が入っていくとう大きな時代の潮流をまさに予感していたというか、そのまま体現していたというか、そういう存在のバンドであったのかもしれません。どうどう初登場ナンバーワンを獲得した彼らの作品から聞いてください。We the People....。」

 


ロビー・ウィリアムズ(Robbie Williams)に学ぶ、エンターテイメントとは何か?

20161202 

 ロビー・ウィリアムズでPretty Woman。 

 

 ソングライティングチームにエド・シーラン(Ed Sheeran)を迎えての非常によくできたポップナンバーだと思います。ロビー・ウィリアムズは言うまでもなくイギリスを代表するスーパースターで、出すアルバム出すアルバムがとにかく売れまくり、そして各賞を独占し、ライブにおいてもものすごい動員を誇っている、そういうアーティストで、マッチョで脂ギッシュな雰囲気にすごいなぁというイメージがあるんですけれども、実は彼は非常に繊細な人で、自分自身の有り様、そして周りとの軋轢、その中でほとんど鬱状態になって部屋からでなくなって、かなり内面との苦しい戦いをやってきた人でもあるんですね。そういう戦いの中から、自分としてはこういうキラキラしたエンターテイメントを繰り広げるんだという所に自分を追い込みながらやっていると、そういうキャラクターのアーティストです。今回は、まさに彼のそういう方針がアルバムのコンセプトになっていて、The Heavy Entertainment Show。なぜこの作品を作ったのかについてロビー・ウィリアムズ自身の言葉がありまして、

  僕が子どもの頃から親しんできたテレビ番組は、同時に何千万人の人がいっしょに視聴している。大勢の人たちが同じ番組を共有する。それがLight Entertainmentだ。それは時に間違ったとらえ方をすることもある。僕にとってそれは、Heavy Entertainmentだった。僕は自分のアルバムでそれをやってみたいとおもったんだ。何百万人もの人達と同じ体験をする。ライトやステロイドで強化したエンターテイメントの媒体を通してね。The Heavy Entertainment Showとは地球上のありとあらゆる瞬間であり、僕らは誰もそのショーの登場人物なんだ。

 すごく正しく、ショービジネスというかロックというかポップミュージックをとらえて、その中に自分の役割をちゃんと位置付けている、そんな手ごたえのある彼の言葉だと思います。そしてこのアルバムの最初のシングル曲がParty Like a Russian。この曲はロシアで俺たちの事を冷ややかに見ているのではないのかということがニュースで取り上げられたくらい、問題作なんですけれども、それを第一弾にするところが、まあ聞けばわかるので聞いてみましょう。Party Like a Russian。

 

 これがファーストシングルって結構挑戦的ですよね。実にロビー・ウィリアムズらしいという感じなんですけれども、エド・シーラン以外にも注目すべきソングライティングチームを導入しているんですけれども、次はルーファス・ウェインライト(Rufus Wainwright)。距離感がありそうだけれども、でも近いよなぁと思えるキャスティングだと思います。彼のよさ、そしてルーファス・ウェインライトのよさの両方がでたナンバーだと思います。Hotel Crazy。

 


渋谷陽一はなぜミュージシャンの暗黒面を強調するのか?

1、渋谷陽一の最初の外タレインタビューはマーク・ボラン(Marc Bolan)であった

20161125

 私二十歳くらいの時、はじめての外タレインタビューがマーク・ボラン(Marc Bolan)だったんですけれども、本当によくわかっていないままやってしまって、いろいろなことを考えてしまいます。一種、なだらかな下降線に入った時のマーク・ボランだったので、環境やいろいろなことがあったりして、今思い出してみるとああいうこと聞けばよかった、こういうこと聞けばよかったみたいなそんな思いもあります。

2、渋谷陽一がインタビューのコツをつかんだのはグレッグ・レイク(Greg Lake)へのインタビューであった

20161216

 渋谷さんがグレッグ・レイク(Greg Lake)にインタビューをした際、インタビューの最初はありきたりな質問で渋谷さんもグレッグも煮詰まっていた時に、渋谷さんの質問「あなたの曲は人生の孤独が基礎になっていると思いますが」という質問に、グレッグが雄弁に語りだし、これが渋谷さんのミュージシャンへのインタビューの手法をつかんだきっかけとなったとのコメントをよく覚えています。多分1977年夏のエマーソン・レイク・アンド・パーマー(Emerson, Lake & Palmer) のツアーの事だったと思います。

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