ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

Eminem(エミネム)を選ぶか?ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領を選ぶか?

20171208

中村明美「エミネムが2013年ぶりの4年ぶりの新作を完成させたという話題です。「Revival」という作品なんですけれども、この新作がこれまでの作品よりもより楽しみだなと思える点がいくつかありまして、一つはこの新作を発表する前にテレビに出演していきなりフリースタイルを披露したのですが、そこでなんとトランプ大統領を思いっきり批判したんですね。その中でファンに対して、俺を選ぶか、トランプを選ぶかどっちかにしろとハッキリと言ったところで、翌日のメジャーなメディアは大絶賛というか、大騒ぎしていたんですけれども、その理由というのはそこまでトランプを思いっきり批判するアーティストはなかなかいないということと、エミネムはケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)みたいなアーティストとは違って、彼のファンはトランプ支持者が多いような区域に多いので、彼が言ったことが実際にファンに届くというか、トランプ支持者に本当に響くのではないかということで、そういう意味では彼のキャリアも危険になるんですけれども、そこまでアーティスト生命をかけてはっきり言ったということにすごく意味があるということでメジャーなメディアは大絶賛していました。そこがこれまでのエミネムとは違うなというモードが現れていた一つの理由です。もう一つは、最初に発表したシングルがいきなりビヨンセ(Beyonce)との共演だったという。ビヨンセくらいの大スターとエミネムという大スターが二人で共演するなんて誰も思っていなかったので、それだけでもビックリしたんですけれども、その内容も俺は神じゃないんだと。アルバムを作るたびにみんなに絶賛されるけれども、俺は神じゃないからすごく苦労しているという、自分の内面をすごく語った作品で、そういう作品だからこそ理解してくれるのはビヨンセのような人だろうなと思って、彼女とは長年共演したかったそうなんですけれども、今回これがピッタリだろうと思って、彼女に聞いてもらって気に入ってもらって、共演してもらえたといういきさつがあります。これまでとは違ったモードで、大人というか、彼なりに成長した作品が期待できるのではないかと思います。プロデューサーもリック・ルービン (Rick Rubin)とドクター・ドレー(Dr. Dre)ということで、大御所二人と仕事をしていて、怒りといっても、エミネムはこれまでも怒りを表現してきたアーティストですが、もっと大きな世界に対する怒り、政治に対する怒りみたいなものがこの作品で期待できるのではないかなぁということで、すごく楽しみです。」

渋谷陽一「本当に楽しみですね。アルバム全体を聞けるのが。心待ちにしたいと思います。それではエミネムがビヨンセをフィーチャリングしたナンバーを聞いてください。Walk on Water。」





ゲイリー・ニューマン(Gary Numan)、第二の黄金期を迎える

20171208

 ゲイリー・ニューマンの新作「Savage (Songs from a Broken World)」を紹介します。日本のロックファンにとっては「ゲイリー・ニューマンってまだやっているんだ」っていうイメージがあるかもしれませんが、このアルバムは夏くらいに発表されまして、なんとイギリスのチャートの2位。つまり、ゲイリー・ニューマンは今復活していて、ある意味第二のゴールデン・エイジを迎えているアーティストなんです。1970年代後半から1980年代初頭にかけてTubeway Armyとかゲイリー・ニューマンのソロとして出すアルバム出すアルバムナンバーワンになり、まさに時代の寵児として活躍し、でもその後のかなり長い低迷期を経て、日本のロックファンにとっては過去の人というイメージがついたのかもしれませんけれども、実はゲイリー・ニューマンはここにきて、それこそナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)など彼の影響をうけた多くのアーティストのリスペクトを含めて、そして彼自身の音楽がより一層力強くなって再評価があり、そしてこのアルバムは堂々初登場2位という、まさに今旬なアーティストとしてもういっぺん返り咲いた彼の作品を聞いていこうと思います。このアルバムのリードシングルになっている My Name Is Ruinという曲なんですが、

  俺の名前は破滅
  俺の名前は復讐
  俺の名前は誰でもないもの
  誰でもないものが呼んでいる
  俺の名前は破滅
  俺の名前は傷心
  俺の名前は孤独
  俺の悲しみは暗闇
  俺の名前は破滅
  俺の名前は邪悪
  俺の名前は戦いの歌
  君に歌おう新しい戦いを
  俺の名前は破滅
  俺の名前は崩壊
  俺の名前は恥知らず
  君の世界を破り続けよう

 というナンバーです。My Name Is Ruin。


 かっこいいんですよ。私ももう少しレトロなものなのかと思ったのですが、バリバリの今の音です。すごいと思います。もう一曲Ghost Nationという曲を聞くんですけれども、これもすごいです。彼はこのGhost Nationを自分の体にタトゥーとして入れてるそうで、彼にとっては今現在を象徴する、そして彼自身の体に刻みたいというくらいの曲なのかもしれません。これもすばらしい音像のナンバーです。Ghost Nation。




 

モリッシー(Morrissey)の歌詞は深くて文学的であるが英語はシンプルでわかりやすい説

20171208

 モリッシーでI Wish You Lonely。


 モリッシーらしいタイトルのナンバーですけれども、彼の三年ぶりのニューアルバム「Low in High School」から聞いていただきました。ジャケットを見ると、モリッシーTシャツを着た少年が反君主制と書かれたプラカードを持って、斧をもって立っているという。モリッシーはやっぱりモリッシーです。I Wish You Lonely、君が孤独でありますようにというタイトルからしてモリッシーらしいんですけれども、この曲もやはりアンチ君主制を基本としたメッセージ、そして愛にドラッグに安直に依存する人間の有り様に対しての抜本的な批判が、いまのポップなメロディーで歌われております。続いてはSpent the Day in Bedという、これまたモリッシーらしいタイトルですが、この曲がリードシングルになっております。日本語訳はまで出ていないんですけれども、これは私のような最低の英語力でもわかります。

  Spent the day in bed
  Very happy I did, yes

 という。とにかく家で寝ていることが最高だぜ。一日そうやって暮らそうぜという。

  I spend the day in bed
  I’m not my type, but
  I love my bed

 俺はそんなタイプじゃないし自分自身でもこんなのは好きじゃないんだけれども、やっぱりベッドって最高だよねと。

  I recommend that you

 これを君にも勧めるぜ、という。そして、サビの部分が、

  No bus 
  No boss
  No rain 
  No train
  No highway

 バスもいらきゃ、上司もいらなきゃ、電車もいらなきゃ、ハイウェイもいらなきゃ、何もいらないぜというのが延々と続きます。そして、とにかくSpent the Day in Bedとそういうメッセージのナンバーです。Spent the Day in Bed。



 モリッシーというのは言うまでもなく非常に文学的な才能が高く、その歌詞の詩的な完成度の高さは誰もが認めるところですけれども、それと同時に、聞いていただければわかりますけれども、ものすごくわかりやすいメロディーを持ったポップなサウンドを作るそうした意味でもすごく才能に長けた人で、それにのる言葉というのはある意味深くて文学的なんだけれども、すごくシンプルで分かりやすいというそういう本当にすぐれた能力を持ったソングライターなわけでございますけれども、I Wish You Lonely、これは誰でもわかる英語でございます。Spent the Day in Bedも非常にわかりやすい英語でございます。続いてはWhen You Open Your Legs。これも中学生でも十分わかります。君が股を開くときという曲でございまして、すごくシンプルなメッセージといえばシンプルなメッセージで、モリッシーらしい歌詞というえばモリッシーらしい歌詞なのですが、でもこれは同時に政治的な意味合いみたいなものを持っていて、君が足を開くとき政治的な困難さはみんな忘れ去れてしまうという、読み込めば読み込むほど意味の深い楽曲であります。でも、エキゾチックなメロディーラインとポップなサウンドというのは、普通に聞くと楽しいなぁという曲になっております。つまり、モリッシーワールド大爆発のナンバーを聞いてください。When You Open Your Legs。





テイラー・スウィフト(Taylor Swift)、アゲインストな風の中アルバムを発表する

20171201

 大変な話題になっておりますテイラー・スウィフトの「Reputation」を紹介したいと思います。みなさんご存知のようにテイラー・スウィフトというのは今のポップミュージックシーンの女性シンガーのヒールとして、悪役としてイメージされ、攻撃された女性アーティストであります。ケイティー・ペリー(Katy Perry)と確執があったとか、最近では白人至上主義的なメッセージがあったとか言われたり、アルバムの売り方がエグいと言われたり、そしてなによりも彼女自身がかつて自分と付き合った男性との交際経験、そしてその多くを振ってきたというそういうようなことをモチーフに曲が作られていると、ありとあらゆる言われ方の中で、まさに「Reputation」、評判のすごくアゲインストな風の中にいるというその中でアルバムを作りました。彼女にとってこのアルバムを作るということは、ものすごく大きな決意のもとの行為であることが、なんとアルバムにセルフライナーノーツがついていまして、「私が人々について学んだこと」というかなり長文の原稿を彼女が書いています。これがすばらしい。長いので一部だけ紹介したいと思います。

  今の時代は自分の人生の物語全体をインターネット上に記録した写真で振り返ることができる最初の世代で、それと同時に私達はみなやがてそれの後遺症に気づくことになる。結局のところ、人が写真をネットに投稿するのは、自分のことを見知らぬ他人にどう思ってもらいたいのか、キュレーションするため。とはいうものの、目が覚めて鏡をのぞけば、そこに映っているのはシワやキズ跡やシミのある顔で、嫌気がさしてしまう。私達が願うのは、同じ起き抜けの顔を見ても、そこに未来やパートナーや永遠を見出してくれる誰かにいつか出会えたらということ。物語のあらゆる側面を知り、そして私という万華鏡とあらゆる角度から見た上で、それでも自分を選んでくれる誰かに。私は15歳の時から世間の目に晒されてきた。そのすばらしくてうれしい面はとても幸運にも音楽で生計を立てていられるということ。そして愛情にあふれた大勢の人々、刺激をもらえる大勢の人々に出会えていたということ。その反面、私が犯した過ちが批判材料に使われ、経験した悲しみがエンターテイメントとして扱われ、そして私のソングライティングが個人情報の過剰な公開として矮小化されてしまっている。このアルバムが世に出たら、ゴシップ系ブログが歌詞をくまなく調べ、それぞれの曲にあてはめられるであろう男性を探し回ることでしょう。まるで音楽を生み出すインスピレーションが親子鑑定検査と同じくらい簡潔明瞭なものであるかのように。間違った各説を裏付ける写真のスライドショーもきっと作られるはず。だって今は2017年で、写真が添えられていない場合は、起こりえなかったことということになってしまうわけだから。でしょ。後ろの方にいる人たちにも聞こえるように、もっと大きな声でもう一度言わせてね。誰かの事を分かっていると思っても、実際それはその人がこちらを見せようと思っている姿だということ。説明はこれ以上ありません。あとは評判。Reputationが出回るだけです。

 すごい。27歳だと思うんですけれども、本当に過酷な状況の中で、覚悟をもってこのアルバムを作ったというのがヒリヒリと伝わってきます。そしてかける曲がEnd Game。そしてそこでフィーチャリングされているのが、元カレと噂のあるエド・シーラン(Ed Sheeran)。やりますね。

  大評判大評判
  あなたと私は大評判になっている
  私の噂は聞いているでしょ
  手ごわい敵は何人かいるかって
  大評判大評判
  あなたと私はきっと大きな話題のタネになる
  あなたの噂は聞いているわ
  あなたも悪いタイプが好きなのね
  あなたには触れたくないのよ
  なりたくない
  ただの元カノの一人になんて
  あなただって見たくないでしょ
  会いたがったりしたくない  
  ほかの女の子のようにあなたを傷つけたくないのよ
  望んでいるのはビーチでお酒を飲みながら二人でいちゃついているってだけ
  世間がどういうかわかっている
  だけど遊びっていうわけじゃない
  あなたとのカップルエンドをむかえたい
  あなたの選抜メンバーになりたい
  あなたのAチームになりたい
  あなたとカップルエンドをむかえたい


  
 ビデオクリップをみると、最近のテイラー・スウィフトの方向性というのは、このアルバムで新しい自分になると、すごくサイボーグ化されたものすごく強靭なイメージで、彼女自身は自分を高めているのかもしれませんけれども、このアルバムを聞くとそこにいるのは若い、傷つきやすい一人の女の子のリアルで、そしてものすごくたくさん出てくるモチーフが「逃げる」ということなんですね。やっぱり彼女自身はここから逃げたいという正直な思いがある。戦わなければ、でも逃げたい。そういう切り裂かれた思いというのがエモーショナルな楽曲につながっていて、でもすごいのが、そういうのがセンチメンタリズムで後ろ向きな、文学的な方向に行かずに、ポップな、ものすごく強靭な、コマーシャルな楽曲につながっていくという構造がすごいなと思うんですけれども、その典型的なのがGetaway Carという曲があります。逃走車という曲なんですけれども、

  あなたが走らせていたのは逃亡車
  ふたりで空を飛んでいた
  でも遠くまでは行けなかった
  不可解な謎に見せかけないで
  初めて出会った場所を思いうかべるの
  逃亡車に乗りながらサイレンが響き
  あなたの鼓動と共鳴していた
  私から先にさよならをすべきだったのね
  初めて出会った場所を思い浮かべるの
  逃亡車に乗りながら
  でも遠くまでは行けなかった
  逃亡車に乗り込むのはそもそも間違いというもの
  逃亡車を走らせていた私
  逃亡しながら泣いていた
  逃亡車の中で死にそうになりながら
  逃亡車の中でサヨナラを告げて
  逃亡車を走らせていた私
  逃亡しながら泣いていた
  逃亡車の中で死にそうになりながら  
  逃亡車の中でサヨナラを告げた




ノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)はカニエ・ウェスト(Kanye West)やレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)に影響を受けてもノエル・ギャラガーである説

20171201

 ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(Noel Gallagher's High Flying Birds)でIf Love Is The Law。



 ノエル・ギャラガーの「Who Built The Moon?」という最新作。すでにロンドン情報で、今回は全然変わっちゃってすごいぞという児島さんのレポートがありましたけれども、その最新作から一曲聞いていただきました。今回はデヴィッド・ホルムス(David Holmes)という、それこそプライマル・スクリーム(Primal Scream)やU2を手掛けた打ち込み系先端プロデューサーを起用しまして、すっかりノエル・ギャラガーは変わってしまったと。Holy Mountainという先行シングルを聞いて、本当に変わったなぁと思われた方も多いと思います。確かにサウンドデザインから方向性からすっかり変わったんですが、かといってノエルがどこかとんでもない所に行ってしまった作品ではないんですよね。これは従来のオアシスファンもノエルファンもすごく満足できる作品に仕上がっているし、それ以外の新しい層にもささる、非常にすばらしい作品だという印象を持ちました。インタビューを読むと、デヴィッド・ホルムスとノエルは曲作りから一緒にスタジオでやっていたんですけれども、カニエ・ウェスト(Kanye West)のFadeを聞いて、俺たちもこういうの行こうぜって話し合ったって、まずドラムのループから作ってさぁって。俺の中のノエル・ギャラガーのイメージが変わっていくなぁって感じなんですが、どれもこれもノエル・ギャラガーの基本の骨太のメロディーラインに、それこそ今21世紀、2017年のすごくコンテンポラリーなサウンドが合体した力強い楽曲が並んでおります。She Taught Me How to Fly。



 いいですよね。従来型のオアシスメロディーではなくても、彼のグッドメロディーというのはやはり普遍性を持っていて、それがこの四つ打ちと合体して、でもグルーヴはやっぱりノエルだよなぁという本当に気持ちの良い世界が構成されております。先行シングルのHoly Mountainで、今回は飛距離あるなぁと思った方も安心なさったと思います。そしていよいよ究極の安心ナンバーを聞こうと思います。オアシスメロディーの王道を行っています。でもそのサウンドデザインにおいて、全然今までとは違った世界が展開されております。でも本人はこれはレッド・ツェッペリンだと言っているみたいなのですが、でも彼のオアシスメロディーが大好きな人にはたまらないナンバーじゃないでしょうか。The Man Who Built the Moon。



 今度の作品はノエルにとって新しい挑戦であり、でも彼自身のポップソングライターとしての魅力はより拡大していることが十分伝わったのではないかという気がします。


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