ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

ギャラガー兄弟の喧嘩は最高のプロモーションである説

20171020

1、ノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)、オアシスタイプの曲しか書けないシンガーソングライターにはなりたくない

児島由紀子「実験的なニューアルバムを出すノエル・ギャラガーについてです。」

渋谷陽一「リアムに続いてノエルも新作を出すんですね。」

児島「リアムのアルバムが出た約一か月後にノエルも新作を出すんですよ。」

渋谷「いいタイミングですね。」

児島「本格的なチャートバトルが始まるんですよ。両方とも一位になってほしいと思いますが。」

渋谷「実験的な作品なんですか。」

児島「これまでのアルバムの中で最も実験的だと思いますよ。」

渋谷「何故そんな作品を作ったんですか。」

児島「プロデューサーはプライマル・スクリーム(Primal Scream)とかU2とかアイス・キューブ(Ice Cube)を手掛けたことで有名なデイビッド・ホルムズ(David Holmes)。エレクトロニカ系のプロデューサーなんですね。そして、曲を書く時にいつもは原曲を書いてスタジオに入るのですが、今作ではスタジオに入った後に書いていくという実験的な方法をとったんですよ。最近ノエルにインタビューをしたんですけれども、最初はそのやり方にとまどったけれども、こうやってアルバムを作り終えた今は、もう昔のやり方に戻りたくない心境になったって言っていました。」

渋谷「彼にとってはそんなに手ごたえのある作品になったんですね。」

児島「そうなんですよ。私も最初聞いたときは他のアーティストかと思ったくらいですよ。ビックビートとか、クラウドロックとかあるんですよ。」

渋谷「すごいですね。一曲だけ聞いた作品も・・・。」

児島「先行シングルのHoly Mountainはまだギターロックの形態をなしていますが、他の曲は本当に、エレポップとか映画のサントラみたいなインストが3曲も入っていたり。」

渋谷「どうしちゃったんでしょう。」

児島「このデヴィッド・ホルムズは革新的な作り方をするプロデューサーだったみたいで、ノエル自身も自分はもうオアシスタイプの曲しか書けないソングライターなんだと思いかけていたらしいんですけれども、デヴィッド・ホルムズはいや、君はもっと上のレベルだと。もっとほかの作り方ができるレベルだと励まされて、いろいろな曲のスタイルを今回は試してみたそうです。」

渋谷「市場は受け入れてくれるんですかね。」

児島「本人もギャンブル作だって言っていましたので。その辺は本人も分かっているみたいです。」

渋谷「でもやってみたかったんですね。」

児島「そう。一生オアシスタイプの曲しか書けないソングライターにはなりたくなかったんですね。最近はゴリラズ(Gorillaz)とコラボしたりして、刺激になっているんでしょうね。」

渋谷「それではその注目のナンバーを聞いてみたいと思います。Holy Mountain。」



渋谷「児島さんもこれはアルバムの中で真っ当な曲だと言っていましたけれども、この曲はゴキゲンなロックナンバーですよね。」

2、ギャラガー兄弟の喧嘩は最高のプロモーションである説

 児島さんはノエルもリアムも両方ともチャートの一位をとってほしいといっていましたけれども、リアムの新譜「As You Were」は堂々のチャートの一位を取りました。ノエルも負けてられません。でも、このギャラガー兄弟の一種独特の話題作りって、本人達は意識しているのか意識していないのか分からないですけれども、ものすごいプロモーションですよね。どちらかがどちらかについて何かコメントを言い、リアムのアルバムが出て一位になると、ではノエルはどうなるんだって我々のようなメディアが騒いで、必然的にいろいろな話題が盛り上がるという。やらせとまでは言わないですけれども、この辺の話題作りの感覚ってやっぱりすごいなぁと思います。


リアム・ギャラガー(Liam Gallagher)はプレゼンテーションする能力に長けている説

1、リアム・ギャラガー、ことごとくかつての発言の逆をやる

20170616

児島由紀子「3年ぶりに音楽界に復帰するリアム・ギャラガーについてです。過去3年はほとんどSNSで吠えるだけの人になりかけていたので、ファンとしても悲しかったんですけれども、ついに新曲を出してフルアルバムを最近作り終えたばかりみたいで、リリースされるのは今年の秋みたいですけれどもね。これからいろいろシングルをだすんでしょう。多分。」

渋谷陽一「お兄ちゃんに負けてられないですからね。」

児島「本人としてもライバル意識は微妙な所じゃないですか。」

渋谷「新しく発表されたリアムの音はどんな感じですか。」

児島「非常に今っぽいですよね。アデル(Adele)をプロデュースしたグレッグ・カースティン(Greg Kurstin)とか、トム・オデール(Tom Odell)を手掛けたDan Grech-Margueratとか、今風で売れっ子のプロデューサーを導入したのはさすがだなと思いました。」

渋谷「先行リード曲を聞いたんですけれども、もろオアシスというか、これ分かりやすすぎないかという気もしないでもなかったんですが。」

児島「リアムの声だからオアシスに聞こえるのかもしれませんが、曲自体はオアシスとは違うでしょう。」

渋谷「そうですか。僕は結構王道が来たなぁと。」

児島「つい最近、ロンドンでライブがありまして見て来たんですけれども、新曲6曲やったんですけれども、残りの曲はぜんぶオアシスの曲をやってました。」

渋谷「お兄ちゃんがそれをやるなら、俺だってみたいな。」

児島「オープニング曲からしてRock 'n' Roll Starですからね。次がMorning Glory。それで盛り上がるなと言う方が無理ですけれども、すごかったですよ。野郎どもが一緒に歌って。本当にオアシスのライブを見に行ったみたいでしたよ。」

渋谷「本人はお兄ちゃんがそういうライブをやると文句を言っていましたけれども。自分もそういう風になっちゃったんですね。」

児島「最近、以前自分が批判していたことをどんどんやるようになっていっているんですよね。以前は「俺はソロアルバムなんか絶対に作らない」って言っていたのに結局作ったし。オアシスの曲はやらないって言っていたのに、今はオアシスの曲だらけだし。」

渋谷「でもお客さんは大喜びなんですね。」

児島「もちろん大喜びですよ。行きの地下鉄の中から周りの人がDon't Look Back in Angerを歌い始めた途端、会場の最寄り駅につくまで歌いっぱなしなんですよ。」

渋谷「イギリス人面白いですね。」

児島「もううるさいって。帰りの地下鉄でもやっぱりそういう人たちに囲まれてしまいまして、もう本当にやめてくれっていう感じだったんですけれども。」

渋谷「でもオアシスは愛されているんですね。」

児島「本当にそうですよ。野郎どもには好かれているんですよね。リアムって。そういうカリスマ性がある所が人気がある理由なんでしょう。」

渋谷「彼自身の佇まいはどうでしたか。自信にあふれた感じでしたか。」

児島「相変わらずですよ。以前よりは少し動いてたかなって感じで。でもミック・ジャガー(Mick Jagger)みたくステージのスミからスミまで動いて煽るとか、そういうことができない人ですから。」

渋谷「相変わらず後ろに手を組んで、マイクに向かってっていう感じで。」

児島「そう。男はそんなチャラチャラしたことはしないんだっていう。」

渋谷「わかりました。じゃあ、フルアルバムを楽しみに待ちたいと思います。それではリアム・ギャラガーの注目の新曲を聞いてください。Wall Of Glass。」



2、リアム・ギャラガーはプレゼンテーションする能力に長けている説

20171013

 リアム・ギャラガーの最新作「As You Were」を紹介します。すでに、ロンドン情報で紹介しておりますし、今回はリアムの初のソロということで、今までとは違うモードで向き合って、それが成功しているということを児島さんにレポートしていただきました。そして、すでにリリースされたこのアルバムは日本でもかなり熱い支持を得て、多くの人に聞かれております。ビーディ・アイ (Beady Eye) とはかなり違う温度で迎え入れられているなぁという感じがします。Come Back to Me。



 今回の作品はプロデューサーを迎え、いろいろな人と楽曲を共作したり書いてもらったりと、いままでのリアムとはかなり違った佇まいの作りになっております。だいたい「俺はソロなんて絶対つくらねぇ」なって言っていていたにもかかわらずに作ってしまったというところからして全然モードが違うんですけれども、それがすべてうまくいっている感じがします。リアムというのは基本的にはすごく賢い人間で、「オアシスナンバーなんてくだらなくてやってられるか」「ソロなんてやってられないよ」なんて言って、それをずっと意固地に守るのかというと、コロコロ変えてしまうわけですよね。それはその時々において正しいことは何であるのかが分かって、それによって自分の反射神経を的確に動かしていくという。でも面白いことを相変わらず言い続けるという。非常に上手に自らをプレゼンテーションする才能に長けた人だと思います。これもリアムファンにとってはたまらないナンバーだと思います。Universal Gleam。



ザ・ホラーズ(The Horrors)、プロデューサーにポール・エプワース(Paul Epworth)を迎えてすごくポップになる

1、ザ・ホラーズ、少し大人になる

20170915

児島由紀子「サマーソニックソニックマニアで来日したばかりのザ・ホラーズについてです。ついに3年ぶりの新作が出るんですよ。今度のプロデューサーはなんと今の音楽界で一番の売れっ子、ポール・エプワースなんです。アデル(Adele)とかポール・マッカートニー(Paul McCartney)とか大物ばかりを手掛けているプロデューサーなんですよ。彼らはデビューして以来、UKオルタナ界一のカルトヒーローだったんですね。今作でついにこれはメジャーリーズにステップアップするだろうとイギリスでも評判なんですよ。」

渋谷陽一「ちらっと聞きましたけれども、すごくポップですよね。」

児島「ポップになりましたよね。一緒に歌いたくなるような曲をこの人たちが書いたのははじめてですよね。彼らはUKだけではなくてアメリカのインディー界でも以前から評価が高かったんですよね。こういうゴス系は、1980年代にゴス系ムーブメントがあったじゃないですか。イギリスではその名残があって、ゴス系はあまりいいイメージがないんですよ。アメリカ人はちょっとゴス系とか時代錯誤だなぁという感じがないので、よくアメリカのメディアの批評とか読んでいると、なんでこのバンドがイギリス本国で評価されないのかというのばかりだたんです。やっと今作でその辺のバランスもつくのではないのかとみんな期待しているわけです。」

渋谷「これは本当に全世界的に受けるのではないかという感じがしますね。」

児島「驚いたのはデヴィッド・ボウイ(David Bowie)みたいな美しいバラードみたいな曲も入っています。大飛躍ですよ。」

渋谷「彼ら自身もそろそろ違うステージに立ちたいという欲求があったのかもしれないですね。」

児島「彼らの音楽は実験的に走りがちな傾向があったんですけれども、一般的なリスナーを疎外しない程度で実験的なサウンドを鳴らすという課題をポール・エプワースに設けられたそうです。それでやっと自分達の成功に対する欲望にも目覚めたみたいですね。」

渋谷「やってみたらそれだけのポテンシャルがあったということなんですね。」

児島「もともと彼らは音楽的な才能はあったんですよね。ただ、一般リスナーを疎外するようなノイズとか、インダストリアル系の音に走りがちだったんです。」

渋谷「ある意味大人になったのかもしれないですね。」

児島「そう思います。」

渋谷「日本でのステージも結構愛想がよかったですよ。」

児島「彼らが愛想がよかったって・・・。その辺も変わってきましたね。昔から不愛想で有名なバンドだったんですけれども。アルバム視聴会の時にQ&Aもあったんですけれども、5人とも最初から最後までうつむいて、我々記者の顔をみないでボソボソ語っていて、ポール・エプワースが一人でその場を盛り上げていました。」

渋谷「多くの人に支持されると彼ら自身のモードも変わってくるかもしれませんね。」

児島「彼らも、今作は一番アクセス数が増える作品になるように努力したって言ってましたよ。ボソボソと。」

渋谷「世間が彼らの音をどのように受け止めるのか注目したいと思います。Machine。」



2、ザ・ホラーズ、プロデューサーにポール・エプワースを迎えてすごくポップになる

20171006

 ザ・ホラーズの新作「V」。ジャケットは日本語で「ヴィ」と書かれています。これはロンドン情報で児島さんから、ザ・ホラーズがやたらコマーシャルな作品を作りましたということですでに紹介をしていますが、ポール・エプワースというたくさんのビッグアーティストを手掛けた敏腕プロデューサーによって、ザ・ホラーズが持っている本来的なコマーシャルな部分がすごく健全な形でピックアップされて作品化されております。そのアルバムからまずは、Something to Remember Me By。



 ザ・ホラーズってこんなバンドだったっけっていうくらいポップですけれども、プロデューサーのポール・エプワースがやったことは、ザ・ホラーズの本質を変えるのではなくて、君たち本当はキレイだよね、スタイルもいいよね、だったらそのデッカイ帽子を脱いでデッカイコートを脱いでちゃんと分かるようにしないか、そうしたらキレイだしスタイルもいいよねって、そういう作業をやったような気がして、ある意味正しいプロデュースだったのではないのかなという気がします。そうやって、帽子を脱ぎ、コートも脱いだザ・ホラーズをもう一曲聞いてください。Gathering。



 二曲とも非常にポップな曲であります。市場がこれをどのように受け止めるのか興味深いところであります。


トム・ペティ(Tom Petty)のメロディーは作られた時からスタンダードであった説

20171013

 トム・ペティが10月3日に亡くなりました。彼のロック活動の後半はパクられることの歴史でもありました。そのパクられた相手もザ・ストロークス (The Strokes) 、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)、サム・スミス(Sam Smith)など大物ばかり。サム・スミスの場合はそれを認めて、最終的に曲のクレジットに入りました。トム・ペティのメロディーが作られた時からスタンダードであると逆に証明されたわけです。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのDani Californiaに似てると言われたMary Jane's Last Dance。




 トム・ペティは66歳で、僕と同い年でした。やはり、いくらなんでも若いという年齢だと思います。僕は非常に好きで番組でも何度も紹介しておりました。リスナーから顔が似ているみたいなことを言われて、結構うれしかったりもしているのですが、トム・ペティは非常に不思議な人で、常にいい意味での発展途上感がある人で、次は何をやるんだろう、次は何をやるんだろう、きっと僕たちを驚かせてくれるだろうなと、ひょっとすると次が彼にとっての最高傑作なのではないのかという、いい意味での発展途上感、いい意味で完成されていないアーティストでした。それだけにこれからの可能性もすごく大きくて、ファンにとってはいつも何かやってくれるのではないかと、そういうワクワク感を与えてくれるアーティストでした。そういう人が66歳という若さで突然亡くなってしまったということは本当に残念でなりません。

ロックはどのようにサバイバルしていけばよいのか? ザ・ナショナル (The National)編

20170922

 フー・ファイターズ(Foo Fighters)のようなハードでヘビーなロックバンドがどうサバイバルしていくのかという問題がある一方、オルタナティブなロックバンドがどうシリアスな言葉を持ちながらシーンで戦い抜くかという戦いもあります。例えば、アーケイド・ファイア(Arcade Fire)はその戦いの中で、アバ(ABBA)みたいなポップミュージックを鳴らしてみせましたけれども、言葉はすごく暗かったです。ザ・ナショナルもオルタナティブな非常に優れたロックバンドで、同じような立場にいると思います。彼らも重い言葉をどうポップミュージックシーンの中で、しっかりと商品として成立させるのかという戦いと正面から向き合っている感じがします。Day I Dieという曲なんですけれども、僕が死ぬ日、僕が死ぬ日、僕らはどこにいるんだろうというすごくダークでヘビーな言葉が、こんなポップな曲として歌われております。Day I Die。



 ヒップホップでケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)のようなアーティストがすごくリアルな言葉を伝えている中、ロックがどのような言葉をどのようなビートでどのようなメロディーで歌うのかというのは、オルタナティブとシリアスなロックバンドが常に向き合って行かなければならないテーマで、それはアーケイド・ファイアなんかと同じなわけです。今の曲はアーケイド・ファイアのEverything Nowとイメージがダブりますよね。ザ・ナショナルもテーマと向き合って、非常にすばらしい作品を作ってくれたと思います。続いてはGuilty Partyという曲です。

  昼も夜の眠っている君
  どうすればそんなに寝られるの
  僕は目がさえて眠れないんだ
  敗北感に襲われたまま
  また一年が過ぎてまた愛の夏が訪れる
  なぜ消えないのかなぁ
  毎年夏を見逃しているのに
  すべてにすべてに僕は追いつかれてしまう
  すべてにすべてに追いつかれてしまうんだ
  いつもいつも



 ドラマティックでいい曲ですよね。やはり、今この時代に自分達の言葉を伝えるにはポップでないといけない、このグッドメロディーが必要だと、彼ら自身の決意のようなものが強く伝わってくる、そんなナンバーでありました。もともと彼ら自身はポップな要素を持ってるし、ライブもハッピーで楽しいし、日本では小さなライブハウスで本当に貴重なライブを僕たちは見ることができましたけれども、前作も全米3位、全英3位とセールスの面でもオルタナとかインディーとかははるかに越えた大衆性を持っています。彼らは今回は4年ぶりのアルバムになりますが、彼らにこのアルバムを作らせたのはやはりこの時代の切迫感、すごく後がないなぁという緊張感、それを彼ら自身は強く感じて、だから歌詞もすごく暗くなっていてシリアスになっていて、でもそこでそれをただ単にダイレクトに歌うのではなく、大衆音楽として成立させているところがすごいなぁと思うし、今同じようなロックバンドが持っている意識だなぁという気がします。Dark Side of the Gym。



記事検索
スポンサーサイト
スポンサーサイト
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

プライバシーポリシー
ラジオFMのメモ