ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

グレタ・ヴァン・フリート(Greta Van Fleet)に学ぶ、21世紀のメタルとは?

20181230

伊藤政則「みんなが大好き、グレタ・ヴァン・フリート。」

渋谷陽一「これは、メタルの希望の星ですよね。」

大貫憲章「俺もこれはいいなって思っています。」

伊藤「アルバムはどうでしょう。」

大貫「すごくよかったよ。少しづつEPが出ていて、たまってアルバムが出たんですけれども、最初に思っていたことと最終的にアルバムで出てきたものがそんなに不一致ではなかったので、今渋谷先生もおっしゃいましたけれども、希望の星になりうるんじゃないかなと思いました。」

伊藤「渋谷さんはどうですか。」

渋谷「そういう感じですよね。本当に、時代に合ったメタルって可能なんだっていうことを証明した、そういうバンドだと思います。これはメタル業界的にはどうなんですか。」

伊藤「アメリカやヨーロッパでのブレイクのすごさと、日本まあまあという差がどんどん開きつつあって・・・。」

大貫「日本はまあまあなの。」

伊藤「欧米がすごすぎて。来年はニューヨークのスタジアムのヘッドライナーなの。2万人くらいの。やっぱり、このバンドは欧米の人気がすごいよ。」

渋谷「でも、今洋楽のアーティストってみんなそうだよ。だから、グレタ・ヴァン・フリートなんてそんなに内外格差が大きくないバンドだよ。イマジン・ドラゴンズ (Imagine Dragons) なんてどうなの。」

伊藤「そうだね。日本に比べればでしょ。」

渋谷「でも、このグレタ・ヴァン・フリートは時代に合ったメタルというかハードロックというか。」

大貫「俺は、ハードロックというよりはロックだと思うけどね。フリー (Free)とかが昔言われていたような感じのロックだと思うけど。」

伊藤「ちょっとフォークっぽい所もあるじゃない。」

大貫「完全にあるね。アーコースティックをうまく使って、ルーツミュージックをやっているような所。」

伊藤「一番年上の兄弟が21歳の三兄弟。海外のテレビ番組を見ていたら、最近何聞いているのって聞かれて、クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス(Quicksilver Messenger Service)って答えていていました。では、グレタ・ヴァン・フリートでLover, Leaver (Taker, Believer) 。」





メタルゴッドは動かなくてもよい説

20181230

伊藤政則「ジューダス・プリースト (Judas Priest) でFire Power。」



渋谷陽一「前々から聞きたかったんだけれども、ロブ・ハルフォード(Rob Halford)は何であんなにゆっくり動くの?」

伊藤「昔からなんだけれども、特に1980年代以降ああいう動きになりました。メタルゴッドは動かなくていいっていう。ゴッドはやっぱり、派手な動きをせずに重い動きで圧倒する方がいいという結論だったみたいですね。だから別に疲れているとか、体が重いとかそういう理由ではないよ。」

渋谷「独特だよね。ただ、全体にメタルの人ってそういう傾向があるよね。」

伊藤「いや、動く人は動くじゃないですか。でも、メタルゴッドのロブ・ハルフォードはこういう感じがいいんだという形を見つけたわけです。」


ジョン・スペンサー(Jon Spencer)のようなロックを商業ベースでやることは困難である説

20181216

 ジョン・スペンサーでBeetle Boots。



 ジョン・スペンサー初のソロ作品ということで、ジョン・スペンサーというとザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンという彼の圧倒的なロックンロールユニットが有名なんですけれども、今回はジョン・スペンサーのソロということです。現在、ジョン・スペンサーは53歳なわけで、53歳にして初ソロというのはなかなか遅咲きですけれども、音を聞いたらバンドの音もこの作品の音も基本的にジョン・スペンサーそのまんまという感じで、ファンとしては十二分に満足できる作品なのではないでしょうか。ソロとして活動する動機としては、彼自身の中にはまだバリバリ言いたいことや演奏したいものがあって、今バンドがないならばソロでやろうという感じで、割と自分自身としては自然な流れでこの作品を作ったようであります。それで、今聞いていただいてもわかりますように、彼のロックンロールは1ミリもブレることなく、ソロだろうとブルース・エクスプロージョンであろうとまさに彼のロックンロールワールドは不動という感じで、みんな3分以下の短いタイトなナンバーがいっぱい入っているんですけれども、次も2分32秒のタイトなロックンロールナンバーを聞いてください。I Got The Hits。



 今回はレコーディングスタジオがKey Club Recordingと言う、ザ・キルズ (The kills)やジャック・ホワイト(Jack White)やザ・ブラック・キーズ (The Black Keys) などが利用している、まさにこういう音作りの最高のスタジオで制作されました。そして、そこのエンジニアのBillと一緒にこの作品を作って、近所にドラマーのM.SORDが住んでいるから彼に声をかけよう、結婚式でSamと会ったので彼をベースに起用してこのプロジェクトが出来上がったんだということです。そんな成り行きでいいんだろうかという感じなのですけれども、でも出来上がったのは音はこのような感じで、ものすごくタイトでまさにジョン・スペンサーはまだまだ作りたい曲、作りたいグルーヴ、作りたいロックンロールを持っているというのがすごくリアルに伝わってきます。Ghost。



 ガッガッとすごい音がしていましたけれども、あれはまさに鉄を叩く音でございまして、ジョン・スペンサーが近所のシカゴの豪雪の中から掘り出したガソリンの缶を思いっきり叩いている音だそうです。ジョン・スペンサーの本当にかっこいいリフとすごいタイトなロックンロールを短い中で世界がガチっと構成されていますが、これは誰もがやりたいことだと思うんですよね。特に、「俺はロックやるぜ」ってギターバンドを作ると、まずはここに行きたがるんですけれども、でも全世界を探してこのかっこいいシンプルなギターリフをやったロックンロールバンドってほとんどなくて、商業ベースでこれがしっかりと作品として完成され多くの人に支持されているというのはそんなにたくさんなくて、本当にジョン・スペンサーになる、ラモーンズ(Ramones)になるというのは、一番ロックンロールでハードルの高いところなんだと思います。


ギターロックバンドの心の支え、THE 1975

20181209

 THE 1975は今やギターロックバンドの心の支えというか、その成功と評価と人気、すべてにおいてギターロックバンドの象徴的な存在となっています。ただ、今作はサードアルバムで、非常に若いバンドでもあります。今回の新作は、「ネット上の人間関係についての簡単な調査(A Brief Inquiry into Online Relationships)」という長いタイトルで、でも前のアルバムのタイトルはもっと長く「君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから(I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It)」というタイトルだったので、それからはけっこう省エネされてるのかなという気がします。今作は問題作です。ファーストアルバムが全英1位。セカンドアルバムは全英全米ナンバーワンという申し分のない成功を手に入れた彼ら。しかし、その成功の中でいろいろなことに疲れ、果たして自分たちはこれからどう行くんだろうといういろいろな意味で厳しい時期を過ごしてきて、その何年かを体験して、それを踏まえて、タイトルにも象徴されていますけれども、「ネット上の人間関係についての簡単な調査」という、ある意味内省的な作品を作りました。それまでの自分、いろいろなものに依存症になったり、精神的に非常にダメージを受けたり、本当にこれでいいのかという悩みに入って、そういうようなものを踏まて、今回の作品は非常にナイーブな過去を振り返りながら、前を向いた作品になっております。まずは、リードシングルのGive Yourself a Tryというのを聞くんですけれども、ここでも正直に自分の心情が歌われております。



 今回のアルバムは「ネット上の人間関係についての簡単な調査」というタイトルがついているように、インターネット上で作られる世界、その中で構成される人間関係みたいなものが大きなテーマになっていて、The Man Who Married a Robot / Love Themeというこれを象徴する曲があります。ロボットと結婚した男の物語なんですけれども、ずっと物語が朗読されるだけなんですよね。

  これはとても孤独なひとりの男の物語 
  彼が暮らしていたのは孤独な家孤独な通り
  この世界における孤独な一角であった
  だが彼にはインターネットがあった
  インターネットはご存知の通り彼の友達であった
  彼の親友と言ってもいい
  彼らは一日一緒に遊んだものだった
  
 という書き出しで始まって、最後は男の死で終わるんですけれども、

  それから彼は死んだ
  彼が亡くなったのは孤独な家孤独な通り
  この世界における孤独な一角であった
  彼のSNSは現在一般公開中

 ということで終わるんですよね。現状のインターネットで構成されている、つながっているようだけれども全然つながっていない、その世界に対する違和感みたいなものが大きなテーマになっていて、当然作家自身もその登場人物であるという。




 続いて聞くのはSincerity Is Scaryという、そういった心情を素直に表現するのは怖いよねという、でも僕はしっかりやっていきたいというそういうメッセージの曲なんですけれども、このアルバムはいろいろな音楽的な傾向性があって、どこで切るのかでかなりアルバムの印象がかわるんですけれども、今回はあまり他ではやらないだろうなという切り口で曲を選ばせてもらいました。でもこの曲はすばらしいと思います。Sincerity Is Scary。


  
 続いての曲はMineという曲です。これはすばらしい曲です。




スマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins)のアルバムはタイトルが長いと内容がいい説

20181209

 スマッシング・パンプキンズでMarchin' On。



 今回のスマッシング・パンプキンズはなんとジェームス・イハ (James Iha)復帰ということでございます。2000年の解散して、スマッシング・パンプキンズは再結成をして結構時間が経ちましたが、ジェームス・イハ復帰は18年かかって、かなり気持ちが揺れ、このバンドで彼がプレイするにはこれだけの時間がかかったんだなぁという感慨があります。というわけで、今回はビリー・コーガン (Billy Corgan)、ジェームス・イハ、 ジミー・チェンバレン (Jimmy Chamberlin) の3人が結集したスマッシング・パンプキンズ。ほぼ全員という所でございます。ダーシー・レッキー (D'arcy Wretzky)はちょっと根深いみたいですね。そう簡単に復帰ができる人間関係ではなさそうです。でもこの三人が一堂に会して、この音です。すばらしいと思います。アルバムには8曲入っているんですけれども、今回のプロデュースをリック・ルービン(Rick Rubin)に頼むということで、ビリー・コーガンが音を送って、この8曲中1曲リードシングルみたいなものをプロデュースしてくれたらいいかなという意向で送ったら、これ全部いいじゃん、8曲全部俺がやるよということで、全曲彼がプロデュースすることになったんですけれども、本当に8曲全部いいなという素晴らしい作品になっています。Silvery Sometimes (Ghosts)。



 今度のアルバムはタイトルが長くて、彼らの場合はアルバムタイトルが長いと内容がいいという法則がありますけれども、「Shiny and Oh So Bright, Vol. 1 / LP: No Past. No Future. No Sun.」というタイトルがついていまして、もともと二枚組とかシリーズとかが得意なバンドでございますけれども、きっとVol. 2も用意されているんだろうと思います。8曲ということですごいタイトな仕上がりになっているんですけれども、お聞きになった通り、もともとビリー・コーガンは楽曲の制作の面でもスマッシング・パンプキンズ絶好調という感じがあるんですけれども、いよいよ焦点が絞れてきて、自分たちが求められているものが何であり、それに答えるのが自分たちの役割であると、そんな手ごたえががっちり感じられる作品になったと思います。次の曲もファンにとってはこれだよと思う曲だと思います。Travels。




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