ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

AORについて ヨーロッパのAOR

  • 2018年07月14日
  • AOR
 今回は、「今日は一日“AOR”三昧リターンズ」よりAORについてまとめます。解説は、金澤寿和氏です。

 AORシーンは現在でもベテラン勢のアーティスト達はがんばっていて、ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)とか、ボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)とか、マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)とか、クリストファー・クロス(Christopher Cross)とか、ロビー・デュプリー(Robbie Dupree)とか、マイケル・フランクス(Michael Franks)とかこの辺のベテラン勢は、そんなに売れたりはしないんですけれども、着々と来日をしたりとか、アルバムを出したりとかしてくれているんですね。ただ、アメリカのシーンはヒットチャート中心に動きますので、すぐに見えるところにはなかなか登場してきません。だから、ベテランのリスナーは名前を知っているので追いかけやすいですけれども、若いリスナーにはなかなか届かないというところは確かにあります。ではAORシーンは動いていないのかというと、アメリカのベテラン勢は別にして、結構ヨーロッパの方で新しいアーティストとか新しい動きが出てきているので、その辺にスポットをあててみたいと思います。まずは、ピーター・フリーステット(Peter Friestedt)というギタリストが、TOTOの三代目のシンガーであるジョセフ・ウィリアムズ(Joseph Williams)とユニットを組んで、2年くらい前にアルバム「Williams/Friestedt」を出し、今年来日しました。そのユニットの曲を聴いていただこうと思います。Swear Your Love。


 ピーター・フリーステットは、スウェーデンの実力派ギタリストで、まだ30代終わりくらいの人です。セッションミュージシャンやアレンジャーとして、現地では活躍しています。若いころ、1990年代末くらいにLAに音楽留学していて、その頃にジョセフとかTOTO人脈と友達つきあいをはじめて、帰国してから自分でThe LA Projectというユニットを組んで、LAのミュージシャンと現地スウェーデンの仲間たちで2枚アルバムを出しました。この作品には、ビル・チャンプリン(Bill Champlin)とか、ランディ・グッドラム (Randy Goodrum) とかそういった人達も参加しています。このThe LA Projectが発展して、「Williams/Friestedt」というデュオアルバムを作ったといういうわけです。これが2011年ですね。そして今年(2013)来日と。ジョセフ・ウィリアムズとピーター・フリーステットに、さらにビル・チャンプリンが入ってスウェーデンとか北欧ツアーをやりましたけれども、まもなくそれのライブアルバム+映像作品が近々日本発売されるようですね。

 AORというと太陽とか、青空とか、海とかのイメージで、北欧の白夜のイメージとはずれるんですけれども、逆にないからこそさわやかなLAの雰囲気に憧れるという部分はあると思います。あとは、何年か前にスウェディッシュ・ポップが日本で流行りましたけれども、ああいうメロディーセンスが日本人の感性と近いと思うので、LA産のAORに反応しやすいんだと思いますね。新人といっても30代、40代に出かかっているの世代の人が多いんですけれども、みんなスタジオミュージシャンだったりで、かなり音楽レベルの高い人たちが往年のAORを自分たちでもやっているという流れがあります。TOTOなんかも、今はアメリカではあまり人気がなくなってしまいましたけれども、ヨーロッパではすごく盛り上がるというのは、そういう所とリンクしているんですね。あとは、ピーター・フリーステットもそうですけれども、アメリカの当時活躍していたベテランミュージシャンをリスペクトして、一緒に組んでやるというパターンが結構多いですね。だから、去年来日したトミー・デナンダー(Tommy Denander)というスウェーデンのギタリストがいますが、VOICE OF AORというユニットで各地でライブをやって日本にもきましたけれども、その時のボーカルがビル・チャンプリン、TOTOのボビー・キンボール(Bobby Kimball)とファーギー・フレデリクセン(Fergie Frederiksen)、後はジャーニー (Journey) のスティーヴ・オージェリー(Steve Augeri)でした。ステイト・カウズ(State Cows)というグループがあるんですけれども、ジェイ・グレイドン(Jay Graydon)がゲスト参加しています。こういった、往年のミュージシャンに対するリスペクトは、北欧系のアーティストは持っていますね。イタリアでは、産業ロックやメロディックロックの元気なレーベルがあって、必ずしもAORだけじゃないんですけれども、ジャーニーとかエイジア(Asia)とか、プログレですけれどもイエス (Yes) とか、ベテランバンドを復活させています。産業ロックとかAORとか1980年代のサウンドを、今はヨーロッパ主導で動かしているという状況があるんですね。


AORについて レア・グルーヴ(Rare groove)

  • 2018年07月09日
  • AOR
 今回は、「今日は一日“AOR”三昧リターンズ」よりAORについてまとめます。解説は、金澤寿和氏です。
 
 1980年代の終わりに、AORリバイバルがありましたが、これは1980年代初頭のAOR全盛期を知っている世代が懐かしむ形でリバイバルが起きたんですけれども、これは1990年代半ばくらいにはしぼんでいってしまいました。これと入れ替わって、1990年代後半にレア・グルーヴ、日本で言うとフリー・ソウルという言い方があると思いますが、そういう若い世代が今度はAORに目を向け始めました。クラブが舞台ですから、何よりも踊れること、また踊るまではいかなくてもリズムにのれることなど、心地よさを求める感じですね。若い世代がAORを再評価するようになってきます。彼らは世代的にリアルタイムを通っていませんから、ものすごく新鮮に感じたことがあったと思うんですけれども、これでAORの再評価が始まって、1980年代のロック系の音とは違う、むしろ1970年代の初めの頃の、ソフトアンドメロウの音で踊るという感じで、いわゆるブルー・アイド・ソウル系の音楽がいっぱい再評価されました。DJ達が掘る時代なので、当時全く目を向けられなかったレア盤とか、それこそ自主製作盤だとか、こういうレア盤もどんどん発掘されたりして、全く違った切り口で、AOR的な音楽が再評価されました。丁度この時期に私も『AOR Light Mellow Remaster Plus』という本を出して、はまったのは、リアルタイム派のAORだけじゃなくて、クラブ世代の切り口も盛り込んだことで、結構評判がよかったです。そういったものを紹介したいと思います。まずは再評価の代表格と言っていい、ジョン・バレンティ(John Valenti)。白いスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)なんて言われますけれども、1976年のAnything You Wantです。この曲は1976年に全米トップ40に入っているんですけれども、当時日本ではあまり知られていなくて、逆に再評価されてアナログ盤の値段がいきなり五桁に上っていったということがあります。もちろんCD化もされたんですけれども、それを最初に聞いていただきます。続いておかけするのはJaye P. Morgan。お色気系のジャズシンガーだったんですけれども、実はこの人が1976年にデイヴィッド・フォスター(David Foster)のプロデュースでアルバムを出しているんですね。これはデイヴィッド・フォスターの初めてのフルアルバムプロデュースなんですね。これもメチャクチャレア盤で、僕が本に載せたころはアナログ盤が五桁の真ん中くらいの値段になっていましたね。これも再評価されて、そのあとCD化されたんです。Keepin' It To Myself。



AORについて AORリバイバル

  • 2018年07月08日
  • AOR
 今回は、「今日は一日“AOR”三昧リターンズ」よりAORについてまとめます。解説は、金澤寿和氏です。

 1985年頃はAORが一番ピークというか、逆に飽和状態になり始めた時期ですけれども、この後AORはいろいろなバックボーンで、楽器が進化して打ち込みが流行ってきて、産業ロックみたいなものが出てきて、ロックっぽいものはそちらに取り込まれていって、ちょっとソウルっぽいものはブラック・コンテンポラリー(Black Contemporary)って当時は言われましたけれども、そういったマイケル・ジャクソン(MichaelJackson)みたいなああいうタイプの音楽がどんどん流行ってきて、それに取り込まれていきました。いわゆるいい時代のAORというのは、だんだん活動の場がなくなっていきました。それでフェードアウトっぽくなっていくんですけれども、AORで青春を迎えた方々が、1980年代の終わり頃に、あの頃よかったよねみたいな懐メロ的なニュアンスで、1988年にボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)が「Other Road」というアルバムで復活して、この後立て続けに、ネッド・ドヒニー(Ned Doheny)という1970年代終わりにアルバムを出したきりだった人がいるんですけれども、この人もボズに続いて復活します。ボズが「Other Road」の中で、ボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)の曲をやったんですけれども、ボビー・コールドウェルも売れない時期は、職業ライター的に動いていましたから、その曲をボズが自分のアルバムに取り入れたんですけれども、そうしたら、そういう波もあって、ボビーもいろいろな人に書いた曲のセルフカバーと新曲でまた復活を遂げました。これが1988年、1989年ですね。ですから、AORリバイバルということで、今回は2曲ご紹介したいと思います。ボビー・コールドウェルでHeart of Mine、ネッド・ドヒニーでHeartbreak In The Making。


AORについて TOTO

  • 2018年07月07日
  • AOR
 今回は、「今日は一日“AOR”三昧リターンズ」よりAORについてまとめます。解説は、金澤寿和氏です。

 TOTOはスタジオミュージシャンユニットです。ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)のバックとして世に出てきました。もともとはハイスクールバンドなんですけれども、メンバーがみんなそれぞれスタジオミュージシャンとして活躍をして、ボズの1976年の「Silk Degrees」で活躍して、スタジオミュージシャンとして広まって、バンドデビューして、1982年に大ヒットしてグラミー賞総なめみたくなったのが、TOTOの4枚目「TOTO IV(邦題:聖なる剣)」です。そこから全米ナンバーワン曲でAfrica。


 1970年代後半からセッションミュージシャンという言葉もすごくクローズアップされて、ジャズ/フュージョン系がメインではあったんですけれども、実はその前のジェームス・テイラー(James Taylor)のバックなんかで出ていたセクションのメンバーあたりからスタジオミュージシャンが注目されて、TOTOが出てきて一気にひっくり返りました。ラリー・カールトン(Larry Carlton)とかジャズ/フュージョン系のメンバーもいたんですけれども、歌もののバッキングの世界でこれだけロックっぽいバッキングをするのはTOTOが最初でした。エアプレイ(Airplay)と兄弟関係みたいなものですけれども、この辺によって世の中がひっくり返ったという意味で、象徴的なグループだと思います。

 TOTOのドラマーであるジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)はソロは叩かないですけれども、ノリが独特で、ジェフ・ポーカロにしか叩けないものです。タイム感が思いっきり溜まっているというノリはなかなか他には出せません。そのあとTOTOはサイモン・フィリップス(Simon Phillips)というドラマーにかわりましたけれども、技術的には多分サイモンの方が上なんですよね。でもノリが全然違います。ジェフ・ポーカロは黒人の音楽をよく聞いていたので、溜まったノリがでますけれども、サイモンは16ビートというか、ジャズからきている人なので、手数は多いですけれども黒っぽいノリではないんですね。だから、ジェフ・ポーカロが突然亡くなってサイモン・フィリップスが入った時は、Georgy PorgyとかAfricaなんかも、わりとカラッとしたアレンジになりました。最近はサイモンも黒っぽいノリが出てきていますけれどもね。これはどちらがいい悪いではなくて、バックボーンの違いの話です。

AORについて 『なんとなく、クリスタル』

  • 2018年07月02日
  • AOR
 今回は、「今日は一日“AOR”三昧リターンズ」よりAORについてまとめます。解説は、金澤寿和氏です。

 1980年代に入った頃、AORについて日本で特徴的な現象であったことに、『なんとなく、クリスタル』があります。いまや政治家になっていますが、田中康夫さんの小説です。この当時のヤングアダルトの生活実態みたいな、ブランド志向で、小金持ちで、外車乗り回してという、そういうようなクリスタルな時代、AORがライフスタイルな、そういうものが流行りました。もちろん本が流行ったんですけれども、そこに若者の生活実態があって、みんなそれに憧れた時代だったんですね。今の若者は車はいらないという世代なので全然違う世界ですが、あの当時の20代の人は上昇志向が強かったというか、いい車に乗りたいよねとか、いい洋服着たいよねみたいな文化だったので、それが本の中にスタイルとして書かれていて、そのサウンドトラックがAORだったという時代ですね。その小説が映画化されて、その映画に入っていたのがポール・デイビス(Paul Davis)です。テーマ曲のように使われました。かとうかずこさんのセリフで映画は始まるんですけれども、そこでBGM的に流れていたのが、ポール・デイビスです。I Go Crazy。


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