音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

今の世界的なポップミュージックのスタンダードは地味な曲である説

20180729

 ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー (5 Seconds of Summer)でMoving Along。



 彼らのサードアルバム「Youngblood」は全世界的に売れまくり、全世界のチャートのナンバーワンを席捲し、この番組の海外情報でも何度このアルバムのタイトルを言ったのかわからないという作品です。オーストラリア出身で、出すアルバム出すアルバムが全世界でナンバーワンを獲得し、圧倒的な人気を誇るアイドルポップバンドです。ワン・ダイレクション(One Direction)の前座をやったりしてその人気を高めていったことから、ミーハー人気を誇る、つい最近まで10代でしたからね、若手バンドというイメージがあるのですが、今聞いていただいて分かると思うんですけれども、確かにポップなメロディーで圧倒的に受け入れやすいサウンドデザインになっていますが、でもよく聞くとこの音数の少なさとメロディーの非常に洗練された佇まいと、すごいなと思います。もともと地元のロックバンドとして活躍していて、それが大人の耳にとまり声がかかりというサクセスストーリーの中にあるので、決して作られたアイドルではないわけですね。ポスト・マローン(Post Malone)にしても何にしてもそうなんですが、今現在のポップミュージックの最先端の音の一種の洗練度とストイックさというのはものすごくて、ポスト・マローンもナンバーワン8週間で、では聞いていただきましょうというと、なにこの地味な曲って日本人的な感性からすると思ってしまうような、内外時間差というのがすごくあって、洋楽を紹介する仕事をやっていると日本の音楽シーンとのディレイを感じてならないんですけれども、ファイヴ・セカンズ・オブ・サマーもそんなバンドの一つであります。今やこのアルバムのタイトルナンバーはシングルヒットして全世界的に席捲していますが、この洗練度はすごいなと思います。Youngblood。



 アメリカでもイギリスでもオーストラリアでもとにかくナンバーワンで売れまくっていますけれども、とにかく世界的なポップミュージックのスタンダードと、今J-POP、J-ROCKと言われるもののスタンダードの音のモードの違いというのはかなりなもので、だから何だっていうわけではないんですけれども、自分のような仕事の人間は、この差ってなんとかしなくちゃっていう根拠のない焦りを感じたりします。

ロック鎮魂歌、ポスト・マローン(Post Malone)のRockstar

20180708 
 
 ポスト・マローンのセカンドアルバム「Beerbongs & Bentleys」を紹介します。アメリカでは4月末にリリースされましたが、今年最大の話題作と言っていいと思います。とにかく今、世界中でもっとも売れてるアーティストですが、日本ではそういうことを言われてもいまひとつピンときません。ポスト・マローンを語るときにまず言われる情報が、全米チャート100位以内にアルバム全18曲がすべてランクイン。そのうちトップ20に9曲が同時チャートインという、54年ぶりにザ・ビートルズ(The Beatles)の記録を塗り替えたと、ありえないですよね。空前絶後の売れ方というか、本当に天文学的な成功を手に入れたポスト・マローンなんですが、写真を見てもわかるのですが、冴えない白人の兄ちゃんだかおっさんだか、基本的には兄ちゃんなんでしょうけれども、髭面でもじゃもじゃ頭だからおっさん感があるんですけれども、でもすごいんです。その中でも一番象徴的なRockstarという曲を聴きますが、この曲は全米ナンバー1をシングルチャートで8週間ですよ。聞いていただければわかりますが、地味です。でもはまってしまうと離れなられない不思議な魔力をもった曲で、タイトル通りにロックスターの曲で、酒と女とロックンロール、この豪華な暮らしを俺はロックスターだからしてるぜっていう歌詞からみるとすごくイケイケな曲なんですけれども、でもこの全体に漂う得も言われぬたそがれ感というかやるせなさが、まさに今の時代を象徴する、すごい曲だと思います。Rockstar。



 2017年、去年の9月にリリースされて、そこから8週間ナンバー1を獲得し、2017年最もトップの座に君臨したヒップホップシングル、そして配信の初週では2500万回再生されて、これも空前の記録になっています。面白いのはロックスターという言葉がすごくやるせなさと斜陽の象徴みたいな感じで、歌詞的には豪華だぜ、豪華だぜ、最高だぜと歌われているんですけれども、メロディーの佇まいは最高でも豪華でもなんでもなくてたそがれているという、ロックに対する鎮魂歌という趣が、時代の雰囲気といろいろなものののテーマが一体となって、この素晴らしいメロディーで人々の心を打ったと、私の心も打ったんですけれども、そういう感じがします。この番組のリスナーに、ポスト・マローンはこういう人なんですよという一番わかりやすい楽曲を聞いていただこうと思います。Stay。



 ヒップホップじゃなくてロックじゃんって思われるかもしれませんが、ヒップホップなんですよ。まさにこれこそが23歳のメタルバンドのギタリストになるためにオーディションを受けていた若者が、最終的にヒップホップを選んで、ヒップホップで世界的な大成功を手にしたという今日的な在り方そのものが、67歳だから許してもらおうと思うんですけれども、それがロックなんだという感じが僕なんかはするんですけれどもね。Better Now。



ジョニー・マー(Johnny Marr)に学ぶ、ギタリストが歌うことの意味

20180701 

 ジョニー・マーでMy Eternal。



 彼の三枚目のソロアルバム「Call the Comet」の中の一曲をピックアップさせていただきました。ジョニー・マーのソロアルバムについては、児島さんが「私はジョニー・マーにとっとと歌えって言ったのよ。昔は俺が歌うなんてって言ってたんだけれども、本格的に歌ったらすごくかっこよくてこんなにすばらしいアルバムができました」っていうレポートをしていただいて、その時に一曲かけて、皆さんの中でもジョニー・マーの新作がどういうものであるのかについて、それなりに刷り込まれているわけですけれども、今日じっくりと聞いていこうと思います。ジョニー・マーというのはみなさんご存知の通り、モリッシー(Morrissey)とともにザ・スミス (The Smiths) の中心メンバーとして、コンポーザーとして、そしてなりよりギタリストとして、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のキース・リチャーズ(Keith Richards)的な立場として活動していましたが、解散後はギター一本を背中に抱えた渡り鳥みたいな感じで、プリテンダーズ(The Pretenders)をはじめいろいろなバンドをフラフラと渡り歩いて、自分でもちょっとしたバンドをザック・スターキー(Zak Starkey)なんかと一緒に作ったりしたのですが、なかなか定まらず、これぞジョニー・マーがやるべき大プロジェクトという所がなかなかなくて、ファンにとってはもどかしい日々が続いていたわけですけれども、この作品は今聞いていただきましたように非常に優れてますし、商業的にも結構行きそうな作品になっています。これでジョニー・マーは新たなミュージシャンとしてのアイデンティティー形成に成功するのではないかと、そういう手ごたえがあるアルバムであります。Hey Angel。



 ギター弾きまくって最高ですね。ジョニー・マーのギターに対するファンの満足度も高いでしょうけれども、でも歌もいいですよね。ギタリストが歌を歌うっていうのはどういうことなのかなと、自分としては常にギターを弾いているつもりだったんだけれども、何かいろいろな環境のもとで歌わなければならないという状況が出てきたときに歌うっていうのは、それなりにハードルがあるみたいですね。ジミ・ ヘンドリックス(Jimi Hendrix)は歌を歌っていますけれども、やっぱり自分の歌がそんなにうまくないということにコンプレックスがあって、ギターはそれこそ銀河系一のギタリストなわけですけれども、それに対して自分の歌をどう位置づけるのかというのは、かなり悩む所のようであります。悩んでいた所にAll Along The Watchtowerを歌った彼の歌を聴いていたボブ・ディラン(Bob Dylan)に、「最高じゃん」みたいなことを言ってもらえて、背中を押してもらって、ボブ・ディランに背中を押されるということは大きいことで、ジミヘンにとっても歌を歌うということに踏み出せるきっかけになったのでしょうけれども、例えば、エリック・クラプトン(Eric Clapton)だって歌を歌うつもりはなかったと思うんですよね。ジミヘンもクラプトンも、ナンバーワンボーカリストではないんだけれども、何かをきっかけに歌うということに踏み出して、そのことによって自分自身の音楽が最終的にすごく立体的に完成されるというそういうプロセスがあります。ジョニー・マーもここに来るまでにものすごい長い時間がかかって、モリッシーというモンスターが横にいたので余計にそういうことなのかもしれませんけれども、でもそうやってジョニー・マーが自分自身の音楽的世界をある意味完成させた、そんな作品だと思います。Day In Day Out。



デーモン・アルバーン(Damon Albarn)はワーカホリックである説

20180624

児島由紀子「今月末に最新アルバムをリリースするゴリラズ(Gorillaz)についてです。去年新作を出したばかりなのに。」

渋谷陽一「いっぱいやりたいことがあるんじゃないでしょうかね。」

児島「イギリスの音楽業界で一番のワーカホリックじゃないでしょうかね。毎年マルチタスクオブザイヤーをとっている人ですから。音楽関連だけでも三つ四つありますからね。それプラス、シアターとか映画とかのプロジェクトもあるし、それを同時にやっているんだからすごいですよ。渋谷さんみたいな人ですよ。」

渋谷「足元にも及ばないですけれども、なによりもすごいのは、すべてがハイクオリティーであるということがすごいですよね。」

児島「特にゴリラズは、ブラー時代には実現できなかったアメリカでの成功もしてますからね。去年でたアルバムはアメリカでも2位だったじゃないですか。」

渋谷「そうですね。常に売れ続けてますからね。」

児島「ブラーがすごく英国的な表現だったので、アメリカで成功できなかったことをデーモン自身も気にしていたみたいですからね。」

渋谷「それで、この新作なんですが、どうですか。」

児島「昨年でた「Humanz」と対をなすような作品で、もうちょっとパーソナルなんですね。「Humanz」ってポリティカルで戦闘的なバイブのアルバムだったじゃないですか。今作は、ゴリラズ内のデーモンが扮するキャラの2Dが一人で世界ツアーを周って、現地の社会状況のバイブを感じた歌の集まりという感じですね。」

渋谷「2曲くらい聞かせていただいたんですが、ジョージ・ベンソン(George Benson)がフューチャーされた曲はものすごくポップだし、また新しいところにデーモンが来ているという感じがしますね。」

児島「そうなんですよ。今回も以前にも増して音楽スタイルがものすごく増えているんですよ。1970年代のStudio 54系のディスコトラックもあるし、ラテンミュージックの要素が入った曲もあるし、それでこのプロジェクトと同時に、以前ザ・クラッシュ(The Clash)のメンバーと組んで、The Good, the Bad & the Queenというプロジェクトをやりましたが、あのプロジェクトもなんとトニー・ヴィスコンティ(Tony Visconti)をプロデューサーに迎えて、レコーディングを終えたそうです。これも今年中に出るそうです。」

渋谷「すごいですね。それで、その働き者のデーモンにインタビューしたんですって。」

児島「そうなんです。西ロンドンに所有する自身のスタジオで。スタジオといってもビル全体を今は本人が買っているんですけれども。そこのキッチンでたっぷり話を聞いてきましたよ。」

渋谷「面白かったですか。」

児島「楽しいです。この人は頭いいし、頭の回転が速いし。でも、こっちの質問通りに答えてくれないんですよ。自分のいいたい方に話を持っていくんですね。だから、インタビューに慣れないと結構手ごわい相手ですよ。」

渋谷「でも児島さんならうまくやれたんじゃないですか。」

児島「私もあっちこっち引っ張りまわされて、やっと本題で終えたという感じだったんですけれども。すごく最近はレイドバックしたモードになって、前みたいに皮肉たっぷりな人ではなくなったんですよ。やっぱり子どもを持つと変わったんでしょうね。子どもを持って自分でもメロウになったって言っていましたし、昔とは変わってきているって言っていましたね。自分が働きすぎるっていうことは、いつも家族に忠告されているって。」

渋谷「それは変わらないと。」

児島「だって、スタジオのすぐ近くに住んでいるんですもん。だから、スタジオにいる時間の方が長いみたいですよ。家にいる時間よりも。」

渋谷「それでは、ゴリラズのジョージ・ベンソンがフューチャーされたナンバーを聞いていただきます。Humility。」



ウィリー・ネルソン(Willie Nelson)に学ぶ、優れたアーティストは何歳になっても時代に適応する説

20180617

 ウィリー・ネルソンの最新作、といっても前のアルバムから1年インターバルがあるかないかくらいなんですけれども、「Last Man Standing」を紹介したいと思います。ウィリー・ネルソンは85歳になっていますけれども、6月9日は僕の誕生日でたくさんのカードをいただきましたが、その時自分のブログで「俺も67年やって人生いろいろ・・・」みたいなことを書こうと老人コスプレをしようと思ったんですけれども、その時にこの85歳のウィリー・ネルソンの作品を聞いて、それってものすごい恥ずかしいことだなと思いました。何を言っているんだ67歳でと。この85歳の若々しい作品、でも人生が終わることを見据えて、すごく深い洞察力。すごい作品でした。まずはアルバムタイトルナンバーのLast Man Standingを聞いていただこうと思います。

  最後の生き残りにはなりたかない
  だけど待てよ
  それもいいかもな
  何なら新しい商売でも初めて
  よくよく考えてから決めることにしよう
  そんなに急いでいるなら先に行ってくれ
  まるで天国は待っちゃくれないと言わんばかりだな
  最後の生き残りになりたかないけれども
  よく考えてみるとそれもいいかもな
  仲間がくたばるのを見ることがどんどん辛くなってきた
  使い古したナイフで身を切るように痛むよ
  道を突っ走ることについてひとつ学んだのは
  永遠なんてものは人生には当てはまらないってこと
  Waylon、Ray、Merle、それにNorro爺さんも
  俺と同じくらい放蕩な暮らしぶりだった
  まだ生き残っている親友はたくさんいるけれども
  お次は誰になるだろうなぁ
  おそらく俺たちみんなまた
  あの世で出会って楽器弾いて歌って
  バスに荷物を積み込んで走っていくんだ
  そうさそれもいいかもな

 続いてはSomething You Get Through、なんとかするぜっていうナンバーです。Throughっていうのがキーポイントでございます。

  愛する人を失った時
  自分の世界はおしまいだと思うはず
  彼らがいないんじゃこんな世界命の浪費だと思ってしまうんだ
  どうにかやっていく術もなく
  人生がただただ悲しい歌に感じられるけれども
  愛は俺たちみんなよりももっとでかくて
  おしまいは全く終わりなんかじゃないのさ
  そいつは乗り越えるものじゃない
  くぐりぬけThroughしていくもんなんだ
  そいつは俺たちに課せられたつとめなんかじゃない
  ただやらなきゃならないことがあるんだ
  命はずっと続く
  いったん消えても新しい誰かの中で生きている
  そいつは乗り越えていくものじゃない
  くぐりぬけていくもんなんだ
  そいつは乗り越えるものじゃない
  くぐりぬけていくもんなんだ

 続いてはI Ain't Got Nothin’という曲を聞いていただこうと思います。

  俺には犬がいる
  猫もいる
  スマホも持ってるし
  ヒップホップの帽子も持っている
  だけどお前がここに一緒にいないんじゃ
  なんにもないのと同じさ
  ある晩お前に挨拶しようと家に帰ると
  別れを告げる書置きがあった
  「あんたのお金はみんなもらっていくわ」
  俺にはベンがいる
  あいつが草を持っているのさ
  男に必要とされるものはなんだって持っているけれども
  お前がここに一緒にいないんじゃ
  なんにもないのと同じさ
  またおなじみの孤独な夜
  思い出がいつまでも居座っている
  あの時俺が指輪をささげると 
  お前は俺に向かって中指を突き立てた
  馬を飼ってた
  蔵もある
  シアトルにコーヒーショップも持っている
  だけどお前がここに一緒にいないんじゃ
  なんにもないのと同じさ
  そうさお前がここに一緒にいないんじゃ
  なんにもないのと同じさ

 ウィリー・ネルソンは85歳という年齢もあって、自分のなじみのスタジオとなじみのミュージシャンとなじみの環境で作っているかのように我々は思いがちですけれども、この作品はBuddy Cannonという相棒と一緒に楽曲を作ったりして作り上げた作品なんですが、情報のやりとりは全部ネット上でやったようであります。直接会わずに、ネットでいろいろな素材のやりとりの中から作られた、まさにスーパーオーガニズム(Superorganism)と同じ、十何歳の日本人少女が作った非常にコンテンポラリーなロックバンドなんですけれども、常に時代としっかり向き合って、方法論なんかもちゃんと大胆に取り入れて、でもそこで無理にいろいろなものを時代に合わせるわけではなく、でもちゃんと方法論自身は自分の中に取り込んでいくという姿勢が、傑作アルバムを生んだと思いますし、前作の「God's Problem Child」というトランプ政権に対する大批判アルバムもすごかったですけれども、今回の作品もすごかったです。
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