音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

パンクス (punks) にとってABBAは仮装敵であった説

20180520

児島由紀子「なんと35年ぶりに新曲を書いてリリースし、ホログラムを使ったツアーもやるABBAについてです。意外かもしれませんが、ABBAってイギリスでも昔からすごくポピュラーだったんですよ。」

渋谷陽一「意外でもなんでもないですよ。」

児島「そうですか。どうしてですか。ユーロビートの元祖みたいなサウンドじゃないですか。」

渋谷「でもあまりにも巨大じゃないですか。」

児島「そうですけれども、一番最初に火がついたのもイギリスだったんですよね。日本人も好きですけれども。1974年のユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)以来、出すシングル全部が1位か2位という。」

渋谷「すごいですね。」

児島「それで、シングル18枚連続でトップ10に入ったそうです。」

渋谷「ABBAってそんな感じですよね。」

児島「私も1970年代後期にイギリスに来て、まさにパンクの真っ最中の時にABBAが大人気だったんですよ。それで仮装敵の一つになっていたんですけれども。我々パンク世代にとっては。」

渋谷「なるほど。それが復活して大いに話題になっているんですか。」

児島「そうなんです。未だにすごい熱狂的なファンが多いので。それで、最近もテレビ、ラジオ、新聞などいろいろな所で特集番組が続いているんですよ。ラジオ局で英国民が選んだABBAの名曲という投票番組があるんですけれども、たくさん投票が来るみたいです。1位から5位までをご紹介すると、

  1位 Waterloo

  2位 SOS

  3位 Mamma Mia

  4位 Fernando

  5位 Dancing Queen

 となっています。このDancing Queenはエリザベス女王が大好きな曲だそうです。そういうことを聞くとますます私はパンク時代のことを思い出すんです。で、私実はABBAのスタジオに行ったことがあるんですね。ABBAの取材じゃなくて、ザ・ハイヴス (The Hives)というスウェーデンのバンドがいたじゃないですか。彼らが新作をレコーディングしたスタジオがABBAのスタジオだったんですね。私はそれを知らなくて、ストックホルムまで一緒に行ったときに、 スタジオに入るとABBAの写真があちこち飾ってあるから、ヘンだなぁと思ってメンバーに聞いたら、これはABBAのスタジオだと。それで、そのラウンジにピアノとか置いてあるんですね。これはビョーン・ウルヴァース(Bjorn Ulveaus)がABBAの曲を書いたピアノだとかメンバーがいちいち教えてくれるんですよ。ストックホルムにはABBA博物館もあるから、取材が終わったら見に行けばって言われたんですけれども、私は帰りの飛行機に乗り遅れるのでって丁重にお断りしました。」

渋谷「でもやっぱり、ABBAが久しぶりによみがえったということは、そこに青春の思い出をたくさん持っている人達にとっては、大変なことなわけですね。」

児島「そうですね。パンク世代以外にとっては非常にうれしいニュースだと思いますよ。来年からはホログラムを使ったツアーもやる予定だそうです。」

渋谷「ホログラムじゃなくて本物は出てこないんですか。」

児島「今の老いた自分たちの姿を見せてくないんでしょう。1970年代のイメージを保っておきたいみたいですよ。」

渋谷「それもなかなか興味深いので、ぜひ児島さんにも行っていただいて、チェックしていただかないと。」

児島「そんなことを強要するんですか。」

渋谷「どんな感想を持つのか楽しみだなと思って。ABBAって時代を代表するというか、ひとつの現象の象徴のようなものすごいものですけれどもね。曲目の紹介の必要はないですけれども、Dancing Queen。」



カーディ・B( Cardi B)に学ぶ、SNS時代は人格から人気が出る説

20180513

中村明美「カーディ・Bを紹介したいと思います。ニューヨーク出身の25歳なんですけれども、去年発売したBodak Yellowがビルボードのヒットチャートの1位を獲得して、ヒップホップのソロ女性アーティストとしてはなんと、1998年のローリン・ヒル(Lauryn Hill)以来というすばらしい快挙を達成した新人です。満を持して今年デビュー作を発表したのですが、それも1位を獲得するという大スターなんですけれども、彼女の何がすごいのかというと、簡単に言ってしまえばミレニアムを象徴するようなスターであるということです。そもそもデビューしたのも、ミックステープを発表したということでもなく、なんとInstagramから出てきたというところが今どきという感じなんですけれども、Instagramの中で何が人気を得た理由かと言いますと、普通Instagramはフィルターをかけて自分の実際の生活をより美しく演出して見せて競い合うような場所だったんですけれども、彼女の場合はフィルターなしの態度というのが人気を得た理由でして、それが衝撃的でした。もともとはニューヨークのすごく荒れた地域の出身で、彼女自身はラッパーをやる前はストリッパーをやっていたという生い立ちだったんですけれども、そういうことを否定するわけでもなく、痛々しく披露するわけでもなく、影があるわけでもなく、すごく堂々と等身大で、自分が自分らしくあることが良いんだということをアピールして、その自分を肯定しているところが圧倒的に新しかったんです。それは今の全体的な流れを考えてみても、例えばビヨンセ(Beyonce)などから始まって、MeToo運動などにもつながって、女性の人権や女性のエンパワーメントにつながって、彼女は彼女らしく自分を肯定しているところが素敵だなぁという所につながって、人格から人気が出たというすごく面白い経緯なんです。その後リアリティーテレビなんかにも出演して、そこでまた人気を獲得したんですが、それではラップの実力はどうなんだというと、彼女自身ラップの歴史なんかを非常に勉強しておりまして、ミスティ・エリオット(Misty Elliott)が大好きだったなどと言っていて、新しいアルバムを聴いていただければわかりますけれども、フックが非常に強烈で、どの曲を聴いてもパンチがあるすばらしいラップを披露していると同時に、チャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)などすごい面子が参加しているんですけれども、やはり彼女のラップが一番聞きどころであるということと、歌詞の内容も、例えばストリッパーの自分だけれども、ラップの世界でバカにしないでよねっていう所から、女性心を歌ったり、成功に対する祝福の事を歌ったり、それも自分らしくてチャーミングで、人生をエンジョイしているなぁというところがすごく人気だと思います。」

渋谷陽一「ミーゴス(Migos)のメンバーとの結婚、妊娠、それからありとあらゆる曲へのフューチャリングアーティストとしての登場と、いろいろな意味でシーンを象徴するというか、今のヒップホップシーンを代表するアーティストという感じですよね。」

中村「そうですね。ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)とスタイルがよく比べられるんですが、彼女はずば抜けた才能があったにもかかわらず、どこかのシーンにフィットしようとしすぎて、彼女らしさが見えなくなってしまったのに対して、カーディ・Bはこの間のコーチェラ・フェスティバルで妊娠したお腹を出してライブをしていたんですけれども、彼女はそれも自分をエンジョイして、自分らしくやっているところが素敵だなぁと思いました。」

渋谷「それではそのカーディ・Bのナンバーを聞いていただこうと思います。 I Like It。」



渋谷「カーディ・Bすばらしいですよね。新しい形の黒人女性の生き方のロールモデル的な形で、いろいろな音楽番組で語られていることが多くて、すごいなぁと。でも音楽もキャッチーですばらしいなぁと思いました。」

ギャズ・クームス (Gaz Coombes)に学ぶ、白人中流男性はいかに生きにくいか

20180506

児島由紀子「スーパーグラス (Supergrass)というブリット・ポップバンドを覚えていますか。」

渋谷陽一「懐かしいですね。」

児島「1990年代はヒットアルバムを6枚も出したすごい人気だったんですけれども、2000年代に解散して、それ以降メインソングライターだったギャズ・クームス (Gaz Coombes)はソロアーティストとして活躍しているんですよ。」

渋谷「そうなんですか。日本ではちょっと知らない人が多いと思いますけれども。」

児島「今回、5月に3作目のソロアルバムを出すんですよ。日本にも数年前ソロで行ったことがあるんですけれども。」

渋谷「そうなんですね。いわゆるクラブイベントみたいなものでちょっと来ましたね。」

児島「イギリスでは昔からこの人18歳でデビューしたにもかかわらず、ミュージシャンズミュージシャンで、ミュージシャン仲間にリスペクトされているアーティストなんですね。ソングライターとして非常に高く評価されているんですよ。今度のアルバムは英国の近代アーティストにGrayson Perryという人がいて、この人は本も書いているんですけれども、いわゆる中流白人男性、世界でいうアルファメイル、今の世界でアルファメイルとして生きていくことがどれだけ難しいかという本なんですけれども、その本にインスパイアされてたそうです。」

渋谷「中流白人男性は生きていくのが大変なんだ。」

児島「そうそう。ドナルド・トランプ(Donald Trump)とか、最近のセクハラ問題とかで、ちょっとした言葉や態度で攻撃される立場にいるわけですよ。中流白人男性というのは。それについて、近代男性はいかに生きにくいかという本なんですけれども、その本にインスパイアされて書いた曲が多いんだそうです。数年前に出た2ndアルバムは非常に高く評価されて、Mercury Prizeにノミネートされたりしたんですけれども、非常にリスペクトされているソロアーティストとして今活躍をしているんですね。出身はレディオヘッド(Radiohead)なんかと同じオックスフォード(Oxford)なんですけれども、ナイジェル・ゴッドリッチ(Nigel Godrich)とかあの辺からも非常にかわいがられている人物なんですね。スーパーグラス時代のキャピキャピしたイメージは本当に作っていたんだなってわかる、非常にシリアスなアーティストになっているんですよ。」

渋谷「成長したんですね。二曲ほど聞かせていただいたんですけれども、今のイギリスでの評価がリアルなものだなと感じられる、すごく高度なソングライティングと、コンテンポラリーな音の造形と、こんな人だったんだっていう感じですね。」

児島「昔のアイドル人気が信じられないような作風ですよね。」

渋谷「そうですね。そういう感じがしますね。Deep Pockets。」


ザ・ヴァクシーンズ(The Vaccines)に学ぶ、インターネット時代に入って誰もが公平な条件で勝負できるようになった説

20180415

 ザ・ヴァクシーンズでI Can't Quit。



 ザ・ヴァクシーンズの3年ぶり4枚目になります新しいアルバム「Combat Sports」からのナンバーでございました。この3年の間にザ・ヴァクシーンズの激動の時間が過ぎたわけでございまして、ドラマーのピート・ロバートソン (Pete Robertson) が脱退し、新しいメンバー二人が入り、その間に3年間の時間があり、前作「English Graffiti」が時代の音を取り入れた作品だったんですけれども、そこからもう一度ザ・ヴァクシーンズの本来的な魅力である、このようなストレートなロックンロールにまた回帰したと、そういう作品が発表されました。非常にエネルギーに満ちたすばらしい作品だと思います。Out on the Street。



 彼らの魅力が爆発というか、彼らのファンは「これだよこれ」という思いが沸き上がるナンバーだと思います。今言いましたように、前作「English Graffiti」がまさに時代の音をたくさん取り入れて、時代のリアルの中でロックバンドはどうあるべきかという方向性と格闘したすばらしい作品だったと思います。ただ、メンバー自身これを作っているうちに、俺たちの本当の核って何だったんだっけという所が見えなくなってしまって、そういう所に陥ってしまったようです。例えば、この音を聞くとロックをはなから信じて、時代とちゃんと向き合っていない、先週ジャック・ホワイト(Jack White)が批判したロックバンドになってしまう、そんな危険性を感じるかもしれませんけれども、彼らは全然そういう所にはいなくて、まさに「English Graffiti」でいろいろな事に挑戦して、時代の音であろうとしながら、でも俺たちって本来的に何なんだろうってことをもういっぺん向き合って、ここにきたという、彼らなりの時代との向き合い方をしっかりやっている、そういうバンドだと思います。その証拠にインタビューで、今のインターネット時代において、楽曲ごとにいろいろな曲が消費されている、そういう時代ってロックバンドって不利ですよねって、実際そうだと思いますが、その状況について彼らが何て言っているのかというと、そういう状況ってあなたたちは生きていくのが難しいですかっていう質問に対して、

  ある意味すごく難しいよね。ストリーミングってポップス系のアーティストが恩恵を受けやすいサービスだと思うしさ。でも一つ思うのは、インターネットやストリーミングによって間違えなく誰もが公平な条件で勝負できるようになったということで、誰もがいつでも誰からでも自分の音楽を聞いてもらえる可能性がある。誰が作った音楽でもネットで発見される可能性があるからさ。

 すごいなぁと思います。まさにそういう時代なんだよねっていう。その中で自分たちが何をやるのかというと、やっぱりいい曲をしっかり作って、そしてツアーをやるんだと。彼らなりのすごく正しい時代との向き合い方というのを設定したからこそ、このサウンドができた、決して過去に向かっている回帰的なものではないんだと、そんなシーンに対する真面目な姿勢がこのサウンドを生んだんだなぁとそんな感じがします。Take It Easy。


ブロッサムズ(Blossoms)、プロ意識がない

20180323

児島由紀子「2年前にUKシーンに登場したブロッサムズという新人バンドについてです。デビューアルバムでいきなり二週連続全英1位になったり、アデル(Adele)のアルバムを蹴落としたり、マーキュリー賞にノミネートされたり、すごいんですよ。彼らはあの後、リアム・ギャラガー(Liam Gallagher)さんに俺のソロ用の曲を書いてくれと頼まれたり、そのすぐ後に今度はノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)兄貴に会った時に、お前は俺とリアムのどっちにつくんだってせめられたり、もう引っ張りだこなんですよ。」

渋谷陽一「迷惑な兄弟ですね。」

児島「今年の7月からノエル・ギャラガーのバンドのサポートとして欧州ツアーに出るんですけれども、さすがノエル兄貴手が早い。弟のリアムが手を出す前に俺が取り込むんだと思ったんでしょうね。」

渋谷「そうですね。ノエルに続くグッドメロディーを書く若者ですからね。」

児島「というわけで、90年代UKシーンでナンバーワンソングライターと言われているノエル兄貴にも非常に気に入られている新人なんです。で、ついに新作が出るんですね。待望のセカンドアルバム。新曲が出たんですけれども、必殺のメロディーラインですよね。あの若さでどうやってこんなメロディーを書いているんでしょうね。」

渋谷「より一層ポップになっている感じですよね。」

児島「そう。なんか80年代のメジャーポップバンドみたいな曲。」

渋谷「そうですね。でもやっぱりモダンですよね。」

児島「そう。基本的には彼らはギターバンドなんですけれども、キーボードの比重がすごく高くなりましたね。」

渋谷「やっぱり時代を見ているんだと思いますよ。」

児島「そういうところがすごく賢いと思うんですね。この子たちは。」

渋谷「普通に若者だっていう感じがしますよね。」

児島「彼らはそういう賢い所がある半面、いい意味で、悪い意味かな、プロ意識がないんですよ。インタビューするために5人一緒に来るんですよ。それで、宴会のノリになってまともな話を聞けないんですね。それを分かっていたから、取材の前にマネージャーに1人か2人にしてくれって言ったんですよ。メインソングライターを入れて。なのに結局5人でくるんですよ。マネージャーもメンバーと同じくらいの年で、友達のノリだからコントロールできないんですね。だから私後で、あなたちもっとちゃんとしたマネージャーを雇ったほうがいいよって言ってやろうと思ったんですけれども。ほんと、これからバンドがビックになっていくにつれて、あんなマネージャーだとほんと仕切り切れないと思います。なんて余計な心配をしてしまったんですけれども。」

渋谷「すべてのロックバンドのお母さんとしての児島さんが出てきますね。」

児島「まだそんなよく知らないうちからお説教めいたことは言いたくなかったので、次に会った時でも言ってやろうかと思います。」

渋谷「でも本人たちはいくら幼くても、楽曲はパワーがあるので、セカンドアルバムでより一層大きくなりそうですね。」

児島「すごいアルバムになると思いますよ。だいたい、新人のセカンドアルバムってかなり微妙なんですね。バンドにとっては。でも、これは軽くクリアーできると思います。」

渋谷「児島さんが言っていたようにセカンドアルバムはなかなか新人バンドにとって難しいハードルなんですけれども、ブロッサムズは軽く越えてきそうですね。I Can't Stand It。」


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