音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

ロックはどのようにサバイバルしていけばよいのか? ザ・ナショナル (The National)編

20170922

 フー・ファイターズ(Foo Fighters)のようなハードでヘビーなロックバンドがどうサバイバルしていくのかという問題がある一方、オルタナティブなロックバンドがどうシリアスな言葉を持ちながらシーンで戦い抜くかという戦いもあります。例えば、アーケイド・ファイア(Arcade Fire)はその戦いの中で、アバ(ABBA)みたいなポップミュージックを鳴らしてみせましたけれども、言葉はすごく暗かったです。ザ・ナショナルもオルタナティブな非常に優れたロックバンドで、同じような立場にいると思います。彼らも重い言葉をどうポップミュージックシーンの中で、しっかりと商品として成立させるのかという戦いと正面から向き合っている感じがします。Day I Dieという曲なんですけれども、僕が死ぬ日、僕が死ぬ日、僕らはどこにいるんだろうというすごくダークでヘビーな言葉が、こんなポップな曲として歌われております。Day I Die。



 ヒップホップでケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)のようなアーティストがすごくリアルな言葉を伝えている中、ロックがどのような言葉をどのようなビートでどのようなメロディーで歌うのかというのは、オルタナティブとシリアスなロックバンドが常に向き合って行かなければならないテーマで、それはアーケイド・ファイアなんかと同じなわけです。今の曲はアーケイド・ファイアのEverything Nowとイメージがダブりますよね。ザ・ナショナルもテーマと向き合って、非常にすばらしい作品を作ってくれたと思います。続いてはGuilty Partyという曲です。

  昼も夜の眠っている君
  どうすればそんなに寝られるの
  僕は目がさえて眠れないんだ
  敗北感に襲われたまま
  また一年が過ぎてまた愛の夏が訪れる
  なぜ消えないのかなぁ
  毎年夏を見逃しているのに
  すべてにすべてに僕は追いつかれてしまう
  すべてにすべてに追いつかれてしまうんだ
  いつもいつも



 ドラマティックでいい曲ですよね。やはり、今この時代に自分達の言葉を伝えるにはポップでないといけない、このグッドメロディーが必要だと、彼ら自身の決意のようなものが強く伝わってくる、そんなナンバーでありました。もともと彼ら自身はポップな要素を持ってるし、ライブもハッピーで楽しいし、日本では小さなライブハウスで本当に貴重なライブを僕たちは見ることができましたけれども、前作も全米3位、全英3位とセールスの面でもオルタナとかインディーとかははるかに越えた大衆性を持っています。彼らは今回は4年ぶりのアルバムになりますが、彼らにこのアルバムを作らせたのはやはりこの時代の切迫感、すごく後がないなぁという緊張感、それを彼ら自身は強く感じて、だから歌詞もすごく暗くなっていてシリアスになっていて、でもそこでそれをただ単にダイレクトに歌うのではなく、大衆音楽として成立させているところがすごいなぁと思うし、今同じようなロックバンドが持っている意識だなぁという気がします。Dark Side of the Gym。


ロックはどのようにサバイバルしていけばよいのか? フー・ファイターズ( Foo Fighters)編

20170922

 フー・ファイターズでLa Dee Da。



 彼らの最新作「CONCRETE AND GOLD」の中からの一曲であります。フー・ファイターズは来日をしてサマーソニックでこのアルバムの中からガンガン曲をやっていたので、ようやくアルバムがでるんだっていうタイム感なんですけれども、今回の作品の一番の話題は、グレッグ・カースティン(Greg Kurstin)というアデル(Adele)やシーア(Sia)などの大ヒット作品を手掛けたプロデューサーを起用したことです。今聞いたいただきましたように、デイヴ・グロール(Dave Grohl)自身は、ギターリフをものすごくポップな形で展開してくれるのではないだろうかとそういう目論見があって彼を起用したという発言がありましたけれども、まさにその通りになっております。確かに、音はデカいは、シャウトしてるは、ものすごいんですけれども、でもものすごくポップですよね。そこが今回のアルバムの特徴だし、今ロックが置かれている状況のなかで、どのようにロックというジャンルがサバイバルしていくのかと、彼らはそのようなことは考えていないかもしれませんけれども、そういうようなテーマと向き合った作品で、そしてその解決策が示されている作品だと思います。Make It Right。



 レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)っぽくて、ギターのリフがカッコいいですよね。このアルバムがグレッグ・カースティン、そしてクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Queens of the Stone Age)の最新作「Villains」がマーク・ロンソン(Mark Ronson)と、ポップミュージックあるいはダンスミュージックのプロデューサーによってロックバンドが新しい領域を切り開こうとしているということは単なる偶然ではなくて、一つの時代の必然だし、ロックがロックであることによって存在理由となっていた時代はとっくに終わっていて、その中でどう戦っていこうかという試行錯誤の段階にあり、その中で自分達が新しいサバイバルの形をしっかり見出していこうという意思がすごく強く感じられる作品だと思います。Dirty Water。




 最後はすごいギターリフでしたけれども、このアルバムを聞いて、あるいはサマーソニックのフー・ファイターズを見て思ったんですけれども、とにかく音がデカくハードになっていけばいくほど重くならずに軽く明るくなっていくという不思議な作用があって、これは新発明だなぁと。これは非常にポップだと思いました。

40年前にLCDサウンドシステム (LCD Soundsystem)の音を鳴らしていたホルガー・シューカイ(Holger Czukay)

20170915

1、LCDサウンドシステムの4th「AMERICAN DREAM」

 フジロックでもすばらしい演奏を繰り広げましたLCDサウンドシステムの最新作「AMERICAN DREAM」を紹介したいと思います。Call the Police。



 彼ららしい非常にご機嫌なダンスナンバーで、でも歌詞は「警官を呼べばいい警官を呼べばいい」というのがサビで繰り返されるという、この辺もLCDサウンドシステムらしいところであります。2011年に活動を休止し、6年間のインターバルがあったのですが、やっぱりロックファンの間では、絶対彼らは最高のライブをやってくれるという期待感がフジロックの会場に満ち満ち溢れていました。そういう期待に沿った、すばらしいライブでありました。6年間の休止中にジェームス・マーフィー(James Murphy)は、アーケイド・ファイア(Arcade Fire)のプロデュースをしたり一人でもすばらしい仕事をしていましたが、もう一度LCDサウンドシステムという装置を使って、自分の音楽をしっかり出したいという思いから再結成されて、真っ青な青空に「AMERICAN DREAM」という皮肉のきいた、すばらしい作品を作ってくれました。続いてはToniteという曲を聞いていただこうと思います。

  そうヒット曲なんてみんな同じことを言っているんだ
  今夜しかないって
  ああ人生は限りがあるもの
  だけどマジか永遠みたいに感じるのさ
  みんな同じことを感じているんだろうか
  僕たちはみんなワイルド君以外はね
  そして君は自分のことが分かっている
  これはラブソングなんだ


 2005年、2007年、2011年と三枚のアルバムを発表して、2011年のサードアルバムはものすごいヒットをしましたけれども、彼らの作り上げたダンスパンクビートというか、こういうスタイルというのはやっぱり2017年においても十二分に有効だと証明された、すごい力の入った作品になりました。

2、40年前にLCDサウンドシステムの音を鳴らしていたホルガー・シューカイ

 ホルガー・シューカイが9月5日に亡くなりました。今の時代だからこそ彼の偉大さは改めて認識されるということがあるのかもしれません。ホルガー・シューカイと言ってますけれども、我々世代はホルガー・チューカイという呼び方が割となじみがあります。Cool In The Pool。


 1979年、38年前の作品ですが、これがLCDサウンドシステムのアルバムの中の一曲としておさめられていても違和感のない、時代を超えた先駆的なすばらしいサウンドだと思います。

元マンサン(Mansun)のポール・ドレイパー(Paul Draper)、マンサンの悲劇的な解散後14年ぶりに復活する

20170901

児島由紀子「14年ぶりに初のソロアルバムをリリースする元マンサン(Mansun)のポール・ドレイパー(Paul Draper)についてです。」

渋谷陽一「マンサンいましたねぇ。まだやっていたんですか、この人は。」

児島「マンサンは2003年に解散しているんですよ。それ以後は他のアーティストのプロデュース業をやっていたんですね。バンドの解散の事情が非常に最悪だったので、そういう時期に本人もガンの診断をうけたりして、疲れ切っていたようなんですよ。当分業界からは離れていたかったそうで。」

渋谷「でも14年の期間がたって、やっぱり自分は音楽をやるんだと。」

児島「そうですね。マンサンといえば、英国伝統のギターロックが流行っていた時に、ビートルズとかストーンズとかキンクスのサウンドを真似ていたころに、プログレみたいなアルバムを作っていた不思議なバンドだったんですけれども。」

渋谷「独特の世界観がありましたよね。耽美的な。わりと人気もありましたよね。」

児島「ありました。ファーストアルバムは全英一位になったくらいですから。レコード会社から言われて外部プロデューサーを入れたサードアルバムあたりからおかしくなってきたんですよ。内部抗争もあったし、メンバーの一人がバンドの金を使い込んでクビになったり、非常に悲劇的な解散の仕方をしたんですね。今回のソロアルバムにも、その頃のことを歌っている曲、Friends Make The Worst EnemiesとかYou Don’t Really Know Someone ‘Til You Fall Out With Them、喧嘩別れしてみないと人間の本当なんて分からないと、こういう歌がたくさん入っているんですよ。 」

渋谷「なるほど。この14年を清算するような意味で。ある意味エモーショナルではあるんですね。」

児島「ものすごいエモーショナルです。この人独特のエモーショナルなボーカルで。今回のアルバムはシンセが主体ですよね。マンサンはギターバンドでしたけれども。」

渋谷「一曲しか聞いていないですけれども、そんな感じですね。」

児島「この人独特のシンセの感覚が出ていて、非常にいいアルバムだと思います。」

渋谷「では、イギリスでも結構話題になっていますか」

児島「話題になっていますよ。」

渋谷「では、本格的にソロ活動が始まるということで、注目している感じですね。」

児島「さらに今回はソロツアーもあるんですよ。」

渋谷「気合が入っていますね。じゃあ注目していきたいと思います。Things People Want。」



アーケイド・ファイア(Arcade Fire)に学ぶ、現在を象徴する「すべてが今である」という世界観とは

20170901

 アーケイド・ファイアでInfinite Content。



 アーケイド・ファイアの最新作「Everything Now」。今聞いていただいたのは、1分38秒の非常に短い曲なのですが、Infinite Content、無限のコンテンツという内容の曲です。こんな歌詞です。

  無限のコンテンツ
  無限のコンテンツに僕たちは限りなく満たされている
  君はすでに有り金をはたいてしまった
  君はすでに有り金をはたいてしまった
  無限のコンテンツ
  無現のコンテンツを手にした僕たち
  無限のコンテンツに僕たちは限りなく満たされている
  すでに君は有り金をはたいてしまった
  無限のコンテンツに

 このアルバムのテーマはまさにタイトル通りのEverything Now。すべてが今であるというメッセージなんですけれども、そのひとつの断面を象徴する、まさに僕たちは無限のコンテンツを持っていて、ありとあらゆるコンテンツが手に入る。昔は書店に行って本を買って、物がなければ注文して、でも絶版でそれもなければ云々とか、映画を見ようにも昔の映画は手に入らず、DVDも出ないで、名画座であと3年後に回ってくるのを待つかみたいなのどかな時代だったわけですよ。無限のコンテンツなんて手に入らない。けど、今はどんな形にしろ、それこそ廃盤になってしまったクラシックロックもクラシックポップも、ネットを探せばすぐに手に入れることができて、ましてや見た事もないような映像まで手に入るという時代にあって、まさにInfinite Content、我々は無限のコンテンツに囲まれながら暮らしている、僕たちはそれに有り金をはたいてしまう、そういうシャープなナンバーなんですけれども、今回のアーケイド・ファイアの今の時代とはどういう時代であるのかっていう世界観が非常に象徴的に歌われております。僕は、彼らの「The Suburbs」というアルバムが出た時にすごいと思ったんですよね。まさにあそこで歌われていた彼らの世界観というのは、世界が郊外になっている、すべてが郊外化しているという。これはすごいなぁと思いました。ちょっと郊外に出たショッピングモールの絵は、日本でも、中国でも、それこそナイジェリアでも、あるいはヨーロッパにおいても、みんな似ているんですよね。全世界で均一な郊外が存在しているというSF的で怖い世界観というのが、まさに今の世界を象徴しているという彼らのメッセージは見事なものだったと思います。今、アーケイド・ファイアが僕たちに示している世界観は、すべてが今であるという。とにかく今、すべてを手に入れなければならないという僕たちの欲望。そしてそれが実現されることによる、ある意味での不幸、みたいなものがテーマになっております。このアルバムを象徴するEverything Nowという曲を続いてかけようと思います。

  道路は標識ですきまなく埋め尽くされ
  少年たちは一人残らず同じフレーズを使い
  僕はすべてにいますぐ忠誠を誓う
  そして今までに僕がきいてきた曲が
  ひとつのこらずいっせいに鳴っている
  とりとめとなく
  その様子が僕に思い出させるのさ
  すべてを今すぐ
  さあスピーカーが壊れるまで音量を上げよう
  君がほほ笑む時はいつもフェイクだから
  見せかけはやめてくれ
  君がもっているかのように
  今すべては僕には必要ない
  すべてが今欲しいんだ
  すべてを今
  生きていけない
  すべてが今なければ生きていけない
  すべてが今なければ
  すべてが今なければ
  道路のいたるところが街に開発しつくされているのに
  父さんどうしてあなたはいつまでたっても来てくれないんだ
  今何につけてもあなたが恋しいよ
  母さん食べ物をコンロの上に置きっぱなしにして
  道のど真ん中に車を乗り捨てて
  この幸せな家族は今すべてを手にしているんだ
  さあスピーカーが壊れるまで音量を上げよう
  君がほほ笑む時はいつもフェイクだから
  見せかけはやめてくれ
  僕の部屋は一つ残らずなくては生きていけない物でいっぱいになるまで
  僕には必要なんだ
  すべてが今
  すべてがなければ生きていけない
  すべてが今なければ
  すべてが今なければ
  また暗闇にはまってしまった
  もう元通りには戻れない
  すべてを今手に入れなければ気が済まない


  
 まさにこれはABBAかと思うくらいにポップなナンバーで、すごい曲で来たなぁという感じなのですが、歌われているのは今聞いていただいたように、まさに今の時代に対する彼らのすごく暗い認識。彼ら自身は、この先この世界には何もないんじゃないかというくらいに深く絶望しているという、そういう終末感みたいなものをものすごくセンチメンタルでメランコリックに、でもリアルに、どの曲もこのようにメロディアスなことがこのアルバムを独特なものにしています。ただ、すごく内容は暗いですし、かなりリテラシーを要求されるサウンドデザインが多かったりします。今のEDM的なものや、すごくわかりやすいポップソングが隆盛のシーンの中において、このシリアスなロックがどこまでやれるんだろうと思ったら、全米ナンバーワンというチャートアクションを記録しています。次にElectric Blueという曲をかけるんですけれども、このシングルをきつくてすごいのをきってきたなとおもったら、いきなりトップ5ヒットになって、それこそザ・チェインスモーカーズ (The Chainsmokers)とか、ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)と並んで、このアーケイド・ファイアが入っている所をみると、すごいなぁと。やっぱりこの音の、時代的な洗練されたアレンジ、そしてメッセージのすごく的確さみたいなものがちゃんと市場をうっているんだなぁと、そのへんもなかなかすごいなぁと思います。このElectric Blueという言葉もいいですし、そして歌われているこの曲の全体の雰囲気もいいです。

  夏がいってしまいあなたもいなくなってしまった
  空をみて感電死させるのよ 
  あなたにそっくりなたくさんの少年たちを
  私の目をふさいでElectric Blueで
  今の私には理解できないの
  分かったつもりでいたけれども
  分かったのは私が名にも分かっていないということ
  私に似たたくさんの女の子たちが
  あけた海をずっと見つめながら言葉をとなえているわ
  それらが真実になるまで
  私の目をふさいでElectric Blueで
  今あなたは私をとてつもなく困らせているわ
  あなたのブルースをどう歌えばいいのかわからないのよ 
  まったく私に何ができるというの
  あなたのブルースをどう歌えばいいのか分からないのよ
  私の目をふさいでElectric Blueで
  私の目をふさいでElectric Blueで
  来る夜も来る夜も
  あなたの夢を見るのよ
  来る夜も来る夜も
  あなたの夢を見るのよ



 このアルバムの国内盤のライナーノーツを中村明美さんが書いているんですが、その中でこのEverything Nowについてウィン・バトラー(Win Butler)がBBCのラジオのインタビューで答えた発言が引用されています。

  今何もかもがすべてを今という世の中になってきている。すべての出来事にすべての面が包囲されていて、その中でリアルなこともあれば、フェイクなものもある。こちらに何かを売りつけているようなものもあれば、核心をつくようなものもある。そしてすべてものもがすべての隙間に、すべての瞬間に、異なる何千もの屈折したものを生み出しているような気がするんだ。つまりこの作品では、その欠点も、栄光も、すべてをひっくるめて今を生きる経験をとらえようとしたんだ。

 すばらしい発言だと思います。Everything Nowという状況に対して、なんていう世の中なんだでもないし、なんてすばらしい世の中なんだというわけでもなく、我々はこのEverything Nowという時代に生きぜるを得ないわけであって、その時代とは何であるのかということをしっかりととらえて、そういう作品にしたんだと。ただ、今起きていることは正確に見ておこうと、このアーケイド・ファイアです。これにすべての金をかけてくれというナンバーを続いて聞いてもらおうと思います。Put Your Money on Me。



 アーケイド・ファイアはシングルもヒットしているし、アルバムの方も堂々チャートのナンバーワンを飾りました。こういうシリアスなロックが商業的にも成功して、なおかつメッセージ性が強くモダンな作品を作っているという、なかなか今の時代困難なことをアーケイド・ファイアはやり続けていて、今回もすばらしい作品と結果を残しているということは、すごいなぁと思うし、こちらもミュージシャンでも何でもないですけれども、勇気づけられます。
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