ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

伊藤政則、ニュー・メタル (Nu Metal) は「ダメだね」

world rock now 20000107

渋谷陽一「リンプ・ビズキット(Limp Bizkit)とかコーン(Korn)とかあの辺のいわゆるヒップホップがかったハードロック。あの辺は伊藤さんはどうなんですか?」

伊藤政則「ダメだね。」

渋谷大爆笑

大貫憲章「コーンもダメなの?」

伊藤「俺は正直だからさ。嘘ついてもしょうがないじゃん。ここで好きですなんて嘘ついても。まあまあ。」

大貫「でもさ、リンプとコーンじゃあ今度のアルバムじゃ全然違うじゃん。対照的だよね。コーンはある意味暗いじゃないですか。逆にリンプがダメなのはわかるけどコーンは・・・。」

渋谷「コーンも前のアルバムで少し明るくなって今度のアルバムでまた暗くなっちゃったけど。」

伊藤「アートワークが暗いもん。もう。」

大貫「そう。だけどこう耽美的なものを求めたりするじゃないですか。」

伊藤「ゴシック的な?感じなかったよ。俺。」

渋谷「だけど、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)をうちのスタッフがイギリスで見たんだけど、ゴスのファンしか来なかったらしいよ。どうなんですか、ナイン・インチとか?」

伊藤「ダメだねぇ。」

渋谷「あの辺がだって、今のハードロックの主流じゃん。」

伊藤「リンプも悪くなかったんだけど、ただ最近元モトリー・クルー(Motley Crue)のトミー・リー(Tommy Lee)がメソッズ・オブ・メイヘム(Methods Of Mayhem)っていうラップ系のバンドやってるんだけど、確かにアルバムを聞いてみると彼の人間の人となりがよくわかってるせいか、メタルにいた人間がラップをやるとこうなるんだろうなというのがわかって、メソッズ・オブ・メイヘムは面白かったよ。」

渋谷「まだルーツにメタルがあるからね。」

伊藤「自分の先入観かもしれないと思う。」

渋谷「だけど、コーンとかナイン・インチだろ。今。」

伊藤「俺ね、今これだろうとか明日これだろうとかという感じで聞いてないから。」

渋谷「それでやってられるんだもんなぁ。昨日というか大昔に生きてるんだもん。」




パフ・ダディ(Puff Daddy)に学ぶ社会で成功するための秘訣

world rock now 19991217

佐藤めぐみ「ノトーリアス・B.I.G.のラストアルバムがリリースされました。」

渋谷陽一「ノトーリアス・B.I.G.はこの世にいないんですけど・・・。」

佐藤「2年半前にドライブバイシューティングで撃たれてなくなったラッパーなんですけれども。その亡くなった時がキャリアのピークで史上最高のラップアーティストといわれて、そういうタイミングに亡くなってしまったんですよね。亡くなって2年半の間影響力が全く衰えていないんですよね。亡くなった直後にリリースされたアルバム「Life After Death」も400万枚以上売れて、全く神通力が衰えていなくて、とにかくビギーの新しいアルバムがでたらみんな欲しいという状況のなかで、今度ニューリリース「Born Again」というアルバムがリリースされました。どういう内容かというと、もう彼は亡くなってしまっていますので、ビギーの短いキャリアの中でのラップのアウトテイクとかデモテープとかをトラックだけ新しくして、プロデューサーはもちろんパフ・ダディで、まるでフランケンシュタインを作るかのようにつぎはぎで作ったというそういう風なものであります。ゲストは結構豪華なゲストで、Snoop Dogg、Ice Cube、Nas、Lil' Kim、Missy Elliott、Eminemまで参加していて、さすがグレーテストラッパーの名に恥じず、彼を慕うビックネームが揃ったという感じです。内容の方は、「Life After Death」に完成度というか、あの手の切れそうなエッジな部分には及ばないんですけれども、とにかくビギーの声がここで新しいものが聞けるということはうれしくなるなと私も含めてみんな思っております。やっぱり彼に勝るラッパーはまだ現れていないと思うんですよ。才能とか、パーソナリティーとか、リアリティーとかで。しかも、リアリティーがあってコマーシャル性があるという矛盾したものがちゃんとあるという、この辺はパフィーの力の賜物ではあるんでしょうけれども、こういうアーティストはまだ現れていないですね。」

渋谷「それでは、その話題のアルバムからパフ・ダディの手による、そしてリル・キム(Lil' Kim)

が参加している、布陣だけでも非常にコマーシャルな佇まいなんですけれども、タイトルも物凄いナンバーを聞いていただきたいと思います。Notorious B.I.G.。」



渋谷「しかし、パフ・ダディ。やることがあざといというか。Notorious B.I.G.というタイトルをつけ、しかもデュラン・デュラン(Duran Duran)のNotoriousを使うという・・・。誰もが考えるけれどもこれだけはやってはいけないなぁと思うことはいきなりやってしまうという・・・。しかも、いきなり直球を投げるという・・・。やっぱりこれですよね。世の中で成功する人の秘訣というのは。改めてビックリしましたけれども。」





マスターP(Master P)に学ぶポップキャピタリズムを体現するには

world rock now 19991217

 紹介するのはポップキャピタリズムを全身で体現する大人気アーティストマスターPの新作「Only God Can Judge Me」です。多少ヒップホップ系に興味がある人は、「えぇ、引退したんじゃないのかよ」と思われた方もいると思いますが、引退宣言から1年もたたずして新作、引退してすぐアルバムを作らないとこのタイミングではでないんじゃないかというそれくらいナメたものづくりをしていますが、このマスターP、とくにくこのヒップホップビジネスの中での最大の成功者でありまして、本人もとんでもない人気者でありますが、彼の主宰するレコード会社がこの2年間で売り上げたレコードは3500万枚という、とにかく音楽ビジネスだけじゃなくて、スポーツシューズからTシャツからとんでもない関連産業を膨大に持ってましてそれで金を儲けまくり、で、この1年ぶりのCDのジャケットにはいきなり開くと自分のところのスニーカーなどのカタログになっているという、そこまでやるかっていう非常にしゃれにならない奴でありまして、アメリカの雑誌が選ぶ40歳以下の最も金持ちな40人の中に選ばれているそうでございまして、これくらいまでやるとロックしか知らないヒップホップに興味がない人もどんな奴なんだと興味を持っていただけるのではないかと思います。その引退してなかったマスターP。一曲聞いてください。Ghetto in the Sky。



 ヒップホップのCDというのはですね、本当にいい作品が多いんですけど、なかなかうちの番組みたいなところでピックアップする作品はいいのがなかなか難しいんですよね。しかしやはりマスターP。この曲とこの曲をかけるよなぁっていう、我々のロック業界にもあう曲を用意してくれておりまして、この辺のかゆいところにも手が届くところが実にすばらしい。やっぱり、この曲だろうというそのナンバーを、これは非常に美しいバラードのナンバーなんですけど聞いていただきたいと思います。Crazy Bout Ya。




ZZ Topに学ぶベテランミュージシャンの生き残り方

world rock now 19991210

 まるでビックビートの新人バンドといった佇まいでまるでファットボーイ・スリム(Fatboy Slim)の新譜かと思われた方もいると思いますが、そんな新しいバンドじゃなくて、なんとキャリア30年をほこるZZ Topの最新作からDreadmonboogalooを聞いていただきます。



 エライ!!ZZ Top、30年たってこの音ですよ。やっぱり人間年取ったからうんぬんじゃないですよね。時代感覚というのは感性の問題でありまして、生理的年齢じゃないということを堂々と示したZZ Top。本当に結成してから30年、1969年に結成されてそこから始まった彼らの歴史。もう、アルバム1000万枚の空前絶後のビックヒットを記録し、アメリカの本当に代表するバンドとして、なんだかバッファローとかなんとかいっぱい野生動物を引き連れてのツアーとかそういうようなことが話題になりつつも、本当に自分達のスタイルは一切変えないでここまでやってきて、いまのZZ Topの曲は本当にビックビートな佇まいがありますけれども、じゃあ本来の自分達のスタイルを裏切ってヘンテコなことをやったのかというとそんなことはないんですよね。考えてみれば、ビックビートの連中だってヒップホップの連中だって、基本的なロックンロールサウンドやブルースサウンドをサンプリングして自分達の音楽に取り入れているわけですから、ZZ Topがそれをやればそのまんまなわけでありまして、そのへんの本当に基本に返った、このアクチュアリティのある佇まいはエライ!!聞いてビックリしました。30年というとですね、ちょうど私の評論家キャリアと同じという感じでしてね、私も負けていられないという、だんだん言い方がオヤジくさくなってきましたので曲の方に行きたいと思います。Poke Chop Sandwich。



 こういう音を聞くと本当に励まされるというか、ベテランミュージシャンがどうシーンの中でサバイバルしていくのかというのは結構重い課題ではあるんですけれども、こうやればいいんですよね。どんどん新しい時代の音を自分達の中に取り込んでいけばいいわけで、しっかりロックンロールなりブルースなりなんでもいいんですけど本来のまっとうな道を歩んでいけば時代の音はいくらでも自分の中にとりこんで変えていくことができるわけで、その最大の成功例がローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)という本当に怪物のようなバンドがいるわけで、彼ら自身が常に新しいプロデューサーを導入して自分達の音を骨董品にならないように作り変えていくというあのやり方は本当に正しいと思いますね。今回のZZ Topはその上を行くという感じがして、ここまで大胆にやっていいのかという感じもするし、逆にいえば、ZZ Topの音ってこういうことをやっても全然大丈夫だなぁって改めて認識させられると思います。こういうことをガンガンやればいいというベテランミュージシャンも本当に数多くいて、ロックミュージシャン40代50代になってそれなりにきつい局面にたつことも多いですけれども、こういう音をきいて励まされるというか、私は友人の日本人のロックミュージシャンの中に何人もこのZZ Topを聞かせたい奴がいますね。実名を挙げると殴られるんでやめますが。これは王道のブギーナンバーですが、それでもこれでけかっこいいという。Fearless Boogie。




ベック(Beck)に学ぶ90年代のロックとは?

world rock now 19991112

 ベックの最新作「Midnite Vultures」からSexx Laws。



 今のロックの最も先端的な部分をナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)とともに担ってるアーティストですし、そういう自覚の下にものを作ってくれたなぁっていう感じがします。ベックというのは「Odelay」において何をやったのかというと、90年代におけるロックというのはもはやのどかな楽天主義によって、例えばギターを鳴らしてそのグルーブが最高とかいうそういうところにはいない、そういうところにいないのならどういう風にして物をつくればいいのかというところで、解体と批評と再生と編集によってもういっぺんロックのグルーブを回復するのだというのを明確に打ち出した人だと思います。例えばサンプリングという方法論、いろいろなアーティストのいろいろな音源を持ってきてそれを組み合わせて新しい音楽をつくっていく、つまり、ギターを弾くのと同じように何かの音を聞いてそれをサンプリングしてそれを加工するという表現行為そのものが、もはや歌うとかそういう表現行為と同じ意味合いを持つんだというのを明確に示したし、逆にいえばそういうことをやらないと90年代のロックは作れないんだよということを指し示したアーティストだと思もうんですよね。今回の作品で彼自身は言っているんですけれども、「Odelay」と同じように作ったと、しかしテクノロジーによって昔4トラックで作られたものよりもどんどん洗練されて方法論も洗練されて、どんどん作業が緻密になっていったといっているわけですね。例えば彼自身は、70年代のファンクなどが大好きで、当時のミュージシャンの「チャラチャラン」というグルーブを聞くと「うわぁ、すげえ」って思うんですけど、ならその「チャラチャラン」を90年代で再現するにはどうすればいいのかというと、もはや僕らはのどかな「チャラチャラン」は鳴らせないわけです。一番単純なのは70年代のレコードからサンプリングして持ってくるということですけれども、もうそれは今の方法論としては愚かだと思うんですよね。そこでベックは何をするのかというと、それを全部解体していくわけですよ。そしてベースとギターのリズムのズレからどうなっていくのかというのを全部見定めて、一個一個全部ばらして「チャラチャラ」の「チャ」の部分の音とこっちのベースの音をどうくっつけて、どうはっつけて全体の構造をどう見ていくのかという解体と編集の作業を延々、それこそ朝から晩までやっていくなかで自分の表現を高めていったというんですよね。だからこの作品をきくとその緻密な作業が息苦しいまでに伝わってくるんですけれども、全体はいいグルーブの楽しい音楽になっているんですよね。まさに、60年代70年代のロックとは違う90年代のロックの作り方というものをどう突き詰めてどう自分の中で責任を負っていくのかということを本当に考えて考えぬいた作品だと僕は思います。解体と批評と再生と編集のもっとも先端的な部分を聞いていただきたいと思います。Hollywood Freaks。Peaches & Cream。





 この曲すごいですけれども、ライブでの再現性はどうなるのかということが誰もが思うことですけれども、本人はその辺はのどかなもので「まあ、なんとかなるんじゃない」とか言っているわけですけれども、考えてみればレコードの作り方も抜本的に変わっているわけですから、最近はライブといっても生音の再現性にのみ固執するのではなくて、もうテープというのは楽器の一つとして使われているわけですからね。そういうこだわりはどんどんなくなっていくのかもしれません。ちょっと難しい曲が2曲続いたのでこういうポップな曲も入っています。Pressure Zone。




記事検索
スポンサーサイト
スポンサーサイト
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

プライバシーポリシー
ラジオFMのメモ