world rock now19980904
まずはマリリン・マンソンの最新作から聞いてください。I Want To Disappear。
マリリン・マンソンの最新作。今度はですね、前作で非常に物議をかもしだした「Antichrist Superstar」。そして今回は「Mechanical Animals」とそういうコンセプトになってきております。マリリン・マンソンはアメリカでは大変なスーパースターでレコードもものすごく売りますし、コンサートの動員もめちゃめちゃあります。しかし、常に彼自身の行動とか作品というのはいろいろな論議をかもしだしているわけであります。前作、まさにアルバムタイトルになっていますようにアンチクライシスト・スーパースターということで、いわゆるアンチキリスト教的なメッセージが非常に強くでていて、敬虔なキリスト教の信者の方々からはコンサートボイコット運動とか、十分に予想されたことですけれどもそういう行動が起きたり、彼自身のショックロックといわれている非常にショッキングな演出や歌詞のメッセージも非常に道徳的によろしくないということで、一般的な世論からの反発というのが非常に強くありますね。そういう反発が強くなればなるほどファンは余計にマリリン・マンソンに対する支持を高めるという相互の熱のいれようというのがあって、マリリン・マンソンの場合は常にスキャンダルが渦巻いているという感じです。確かにマリリン・マンソンの佇まいというのは非常にショッキングですし、彼のうちだすメッセージというのはものすごいですし、それから彼自身がなぜそうなったのかとう数多くのエピソードもすごく刺激的であります。ただ、それはそれで非常に重要な要素ではあるんですけれども、やっぱり僕はマリリン・マンソンというアーティストがもつ基本的には傷つきやすく、しかしその傷つきやすところからやたら他人に対するコミュニケーションを強く求めるという佇まい、そして強く強く求めるが故に裏切られるとものすごく傷つくとう構造というのは、ロックがずっと持ってきて延々表現してきて、そして表現してきたエネルギーにものすごくたくさんのファンを集めてきたという、一番重要なところを抑えているアーティストだなぁと思います。ロックのもっている基本的なエネルギー、一番コアな部分を最もラジカルに表現しているアーティストではないかなぁという感じがします。で、今回の「Mechanical Animals」というののコンセプトというのは、そういう傷つきやすい自分に対して、世間の全く傷つかない人たち、自分の価値観や他人との距離に対して何の疑問も持たないで生活して、結果人を傷つけている人たちをメカニカル・アニマルズと読んでいるわけなんですけど、その人たちと自分との戦い、そして最終的にはみんなが分かり合える時がくればいいのになぁという希望が今回のアルバムのテーマになっております。そのアルバムのテーマ曲を聞いてください。Mechanical Animals。
マリリン・マンソンのナンバー、ショックロックといわれるくらいでノイジーでシャウトするボーカルも刺激的なんですけれども、逆に僕達みたいに英語のわからない人間が彼の音楽を聞くと彼の音楽の核の部分に触れることができる気がします。マリリン・マンソンは自分でこういう風にいってるんでるよね。
「マリリン・マンソンはある二つのことを行うために考え出されたキャラクターなんだ。一つはマリリン・マンソンのことを理解できる連中に話しかけること。そして理解できない連中を怖がらせること。俺がファンに言ってることは要するに、何が美しいとか何が政治的に妥当だとかそういう社会の決まりごとにうまく馴染もうとすることに気を病むことはないんだ。自分自身を信じて正しいことを貫くんだ。自分自身の神になれっているニーチェの哲学そのものだよ。それを実践するために俺はコンサートで自分を卑しくみせ、俺にむかって唾をはけと観客に言うんだ。お前達はおれとちっとも変わらない同じ人間なんだと叫びかけているんだよ。」
というメッセージで、確かに彼自身のありようというのは汚いものに自分をまみれさせてステージでのたうって見せるとか、そういうビジュアルイメージを物凄く強調して、自分を卑しくみせようとしてるんですけど、それは悪趣味なアプローチではなくて、ロックの持つ巨大なマゾヒズムというか、自分をいけにえにして逆にみんなの共生感を高めてゆくという、ロックの持っているスター性というのは、一種ファシズムであったりサディズムであったりに繋がるところがあるんですけれども、その裏返しで自分をグロテスクなものに見せてゆくことによって、逆にエモーショナルなものに高めてゆくというのは、ショックロック、例えば昔のデビッド・ボウイ(David Bowie)やアリス・クーパー(Alice Cooper)、そして今のマリリン・マンソンやナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)に共有される価値観だと思うんですよね。それってロックの一番重要なところだし、ロックの一番美しいところだという気がしますね。確かに彼はショッキングではありますけれども、もっともピュアなロックアーティストじゃないかなぁと僕は思います。もう一曲マリリン・マンソンのナンバーをきいてください。New Model No. 15。