ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

日本ポップス伝2(7) 古賀政男の登場

1999年 大瀧詠一の日本ポップス伝2第一夜より

 昭和3年に、ビクターの邦盤の第一回新譜というものが出ました。一番最初に出たレコードの新譜というものがありますから、これを聞いてみたいと思いますが、作詞は童謡運動でも出てきました野口雨情。そして作曲は何度も出てきますけれども中山晋平。そして、藤原義江が歌いました。曲名は「波浮の港」という曲でございます。



 野口雨情と中山晋平は全国を歩いて、日本の新しい民謡を作ろうということで、新民謡運動というのをやったんですよ。本物の民謡調のものもあるんですよね。「船頭小唄」も利根川の民謡ということで、これは「波浮の港」ということで、「天竜下れば」も昔からある民謡ではなくて、中山晋平が作った民謡なんですよ。土着の民謡だけではなくて新しい民謡も作ろうということで、「東京音頭」も中山晋平の音頭ですね。だから民謡だから昔からあるとか、以前からあるとかそういうことではないのですね。「波浮の港」は赤盤と黒盤という同じ曲を違う歌手で、男女で歌い分けて、同時に発売しました。とにかくいろいろなことを初期はやっているんですね。女性歌手は佐藤千夜子といいまして、東京音楽学校に入って、帝国劇場に歌い方を教えに来ていた人から習った人です。この当時は学校を出ているか正式な教育を受けていることが、一つのレコーディングをする歌手の資格条件だったんですね。譜面が読めるということで。浅草オペラの人もレコーディング歌手に使われたのは、譜面が読めるからですね。では、佐藤千夜子の「波浮の港」を聞いてみましょう。





 藤原義江も歌い上げる。三浦環も歌い上げる。ちゃんとした歌唱力というのは、しっかりとした発声にあるものだということが最初にあるわけですね。こういう系統というのはいまだにありますね。例えば、声量がある人は、これの流れにあると思うんですよ。後々戦後編でじゃんじゃん出てきますけれども、声量としっかりとした発声をもった歌手の流れというのが、この辺で出来ているということになりますね。それから、昭和4年にこれが現在の流行歌の原点になったといわれるものがあるんです。それが「東京行進曲」という、まさにタイトルにぴったりで、歌っているのは今の佐藤千夜子なんです。テーマは当時菊池寛の『東京行進曲』という小説が、150万部のベストセラーとなって、まずはベストセラーとのタイアップ。それから作詞が西條八十です。この人は純粋詩を書いていたんですけれども、はじめて流行歌を書きます。自分で「グッと調子を落とした」って言ってるんですね。作曲は中山晋平です。この「東京行進曲」が近代歌謡の、近代歌謡の第一号ってたくさん出てきますけれども、レコードやタイアップという意味合いも含めて、大きかったと思います。




 近代流行歌の祖は中山晋平にあると。西條八十、中山晋平のコンビは戦前すごかったですね。西條八十は戦後もすごいですけれども。それにベストセラーとのタイアップというのも最初の頃からすでにありました。だから、昨今はタイアップだらけとか言いますけれども、全然昨今でもなんでもありません。最初からそういうものです。さて、中山晋平の後を継いで出てくるのが、なんといっても古賀政男さんですね。古賀政男さんはとにかく戦前、戦後と一般的な意味合いからいって、この人が最大の作曲家だったんだろうと思いますね。大衆的な意味合いでいったらもうナンバーワンでした。この人が学生時代に曲を書いたんですね。明治大学マンドリン倶楽部でしたからね。自分でギターも弾いていますから。さっきの佐藤千夜子さんに歌ってもらいたいということで曲を作りまして、佐藤千夜子さんが歌ったバージョンがあります。それを聞いてみましょう。「影を慕いて」。




 この頃から古賀メロディーですね。最初のイントロは都都逸をやろうとしたそうですね。都都逸とこういう歌謡というか、歌謡というのはまだできていなかったんでしょうけれども、中間のものを狙いました。佐藤千夜子さんはベルカントを教わっていますから、朗々と歌い上げていましたね。ただし、これでは、今でもそうかもしれませんが、当時の人には届かなかったらしくて、全然ヒットはしませんでした。次に、この古賀メロディーには切っても切れない人が登場するんです。当時は芸大の学生で、二十歳でした。芸大でそんな流行歌を歌ったりすると大変でしたから、学校には内緒で古賀さんが連れてきました。その人が藤山一郎です。藤山さんの歌は、三浦環や藤原義江のように朗々と歌い上げるのではなくて、マイクを生かした歌ですね。調子を落としたということで。次の歌が大ヒットするんですけれども、それが「酒は涙か溜息か」です。今でいう所の演歌の三要素が出だしから入ってますね。では「酒は涙か溜息か」を聞いてみましょう。


Comment

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
記事検索
スポンサーサイト
スポンサーサイト
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

プライバシーポリシー
ラジオFMのメモ