ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

最近のバンドはなぜアルバムを三枚くらい発表して消えていくのか?

world rock now 20081219

大貫憲章「UKに限らずアメリカもそうなんだけれども、メジャーレーベルから出発していないアーティストの方が断然多いじゃないですか。成功したらある程度メジャーに入っていくっていう形になると思うんだけれども、そういうバンドが一杯いるんだけれども、メジャーに行ってそこからどう展開していくのかということを期待するじゃないですか。けど、三枚目くらいになると「あれ、最近聞かないよね」みたくなって。」

渋谷陽一「多いね、そういうの。」

大貫「いつのまにか立ち消えみたいなのが。ハードロックの人たちってなんでしぶといのか分からないですけど。」

伊藤政則「ていうか、昔というか最近でも、ライブの場数を踏んでデビューのところに向かっていないから、結成してショーケースだけで契約するので曲作る訓練とかライブの訓練ができないうちに契約してしまって消耗しちゃうんじゃないの。」

大貫「まさにその通りで、話が横にそれちゃうかもしれないけど、洋楽の場合ライブの動員数は上がっているらしいんですよ。統計によると。でもCDのセールスはどんどん下がっている。ライブの本数も多くなっているし、来るアーティストの量も多いんだけれども、だから、ライブは微増しているのにCDが売れないっていうことはどういうことなの。ファンが増えているんだか減っているんだかわからない。イベントには行くんだけれども、そのアーティストの音楽まで突き詰めて聞こうっていうことが多分ないんだと。」

アルバムの出る出ないが十大ニュースになったバンド、ガンズ・アンド・ローゼズ (Guns N' Roses)

world rock now 20081219

伊藤政則「ガンズ・アンド・ローゼズ、17年ぶりですよ。」

大貫憲章「出ました。」

伊藤「信じられないね。」

渋谷陽一「信じられないですね。」

伊藤「毎年この時期になるとロックシーンの十大ニュースで、一位、ガンズまた出ないって17年くらいずっと。」

大貫「出ないことがニュースなの。」

伊藤「そう。」

大貫「出ると思ってるんだ。みんなは。」

渋谷「いや、多くの人は出ないと思ってたと思うな。俺は出ないと思ってたよ。」

大貫「俺もでないと思ってたもん。」

伊藤「だから、今年は一位がついにガンズが出たって。」

大貫「出ても出なくても十大ニュースに入るんだ。」

伊藤「それだけガンズ・アンド・ローゼズっていうのはセンセーショナルな話題を持ったバンドであるんだよ。今だにね。」

大貫「それ以降のバンドで話題を集めるバンドっていうのはハードロック、ヘヴィメタルシーンにもそれほど多くないってことですか。」

伊藤「間違いないでしょう。ただね。これはいろいろ意見があって、アクセル・ローズ(Axl Rose)のソロじゃないかとかね。だってアクセルしかいないんだから。しょうがないよね。だけど、俺はいい曲をずいぶんそろえたなとは思ったよ。」

大貫「いいの名前使って。ガンズ・アンド・ローゼズはアクセルが持ってるの?」

伊藤「持ってます。」

渋谷「いいのってやってるじゃないか。」

伊藤「あなたが、ザ・クラッシュ(The Clash)っていうバンドを作ったらそれはみんな怒るよ。」

大貫「そうじゃなうて、ジョー・ストラマー(Joe Strummer)一人でザ・クラッシュって名乗ったら俺は納得いかないんですよ。ジョーもそのつもりはないからメスカルロスにしたんだろうと思うんですけれども。」

伊藤「渋谷さん、このアルバムはどうですか。」

渋谷「まず、正直出るとは思っていなかった。出たことに驚いたのと、本当に作ってたんだ。要するに、この数年でババッと作ったんじゃなくて、1曲に1年くらいかけてるんじゃないかと思う曲がずっと並んでいるから、真面目に17年間1曲1曲積み重ねたんだなぁと。」

伊藤「本当に製作は14年くらい。」

大貫「構想何年で製作14年みたいな。すごいね。」

伊藤「レコードスタジオを14年間ロックしていたんだよ。」

渋谷「「Chinese Democracy」っていうアルバムタイトルは当時からあったわけでしょ。ぶれてないわけ。アルバムジャケットなんかもまさにそのままで、十何年前に思ったことを本当に17年の時間をかけて一個一個作ったんだなぁと。聞いてみるとこれギターのテイクが200テイクくらいあるんじゃないのみたいな感じの曲ばっかりなんだよ。」

伊藤「今のデジタルでいろいろな音楽をデータの中に入れることができる時代だからこのアルバムができたのかなと。逆に言うと、ファーストアルバムのような爆発力はないんだよ。人間のエネルギーだけで作ってる感じは。」

大貫「生音の感じはね。」

伊藤「すごく作りこまれているアルバムだけど、今渋谷陽一さんがおっしゃったように、ついに出たということで年の終わりにはかけざるをえませんね。それではガンズ・アンド・ローゼズのニューアルバムからChinese Democracy。」




レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)の再結成を期にクラシックロックが盛り上がった説

world rock now 20081219

伊藤政則「今年は大物の話題のアルバムがたくさん出て、その中のアルバムでAC/DC。」

渋谷陽一「すごかったね。これね。」

伊藤「世界的にこのアルバムが話題になっているということもあるんだけれども、7~8年ぶりに出したアルバムなんですけれどね。」

大貫憲章「そんなに出していなかったんだ。なにやってたのその間に。」

伊藤「休んでた。」

大貫「いいなぁ。これは道楽ですか。」

伊藤「違いますよ。」

大貫「金がなくなった。」

伊藤「違う。練ってたんです。このアルバムですごいなぁと思ったのは、みなさんもご存知の通り7~8年ぶりだけれども何にも変わっていない。」

大貫「変わらないことの美学ですね。」

伊藤「そうですよ。だけど、どのアルバムもベストアルバムだったという過去に習えば、このアルバムもベストアルバムで、AC/DCはやっぱりすごいなと。」

大貫「過去のアルバムがすべてベストアルバムということに習うの?」

伊藤「習います。」

大貫「たまには特例はないの?」

伊藤「特例?ないです。」

渋谷「すべてが完璧なんだ。」

伊藤「完璧じゃないです。すべてがAC/DC流のロックンロールで染められていて軸がぶれない。」

大貫「最近よく軸がぶれないとか使うんだけどさぁ。」

渋谷「でも伊藤先生お言葉なんですけれども、前作はちょっとイマイチだったかなぁと。」

伊藤「前作もAC/DCです。なら、前作の「Stiff Upper Lip」と今作の「Black Ice」の違いを渋谷陽一流に言うとどうなるの。」

渋谷「ぜんぜん新作の方がAC/DCですね。」

伊藤「わかった。あんまり聞き込みが足りない。」

渋谷「前作はちょっと薄い感じがしたの。濃縮度が新作の方が濃いんだよね。本来的なAC/DCらしい、なんかちょっと彼ら自身もこの7年間のインターバルで気合をもういっぺん入れなおしたという。プロデューサーもよかったという。」

伊藤「ブレンダン・オブライエン(Brendan O'Brien)さんだね。結構オーガニックな音を作る人ですよ。」

渋谷「この人との相性がよかったみたいな。私は前作と比べて新作の方が全然いいなぁと。」

伊藤「この新作がベストセラーを記録している理由は、ここ7~8年の間に世の中大きく変わったことはクラシックロックへの逆流というかクラシックロックという言葉が定着して、伝説的なバンドを見直そうという当時を知らない若い世代のファンが伝説のバンドを、これはヨーロッパが発信ではあるんだけれども。その中でAC/DCの新譜が出る、ツアーをやるということで、ツアーなんか即日完売。」

大貫「ツアーは分からなくもないんだけどさぁ。クラシックロックが今年のキーですか。去年も同じようなこと言ってたじゃないですか。」

渋谷「そんなことないよ。今年はそう。俺たちの時代なんだよ。」

伊藤「去年、ツェッペリン(Led Zeppelin)の時も同じようなことをいってたんじゃないの。」

大貫「言ってたね。」

渋谷「だからあそこからはじまったんだよ。」

大貫「その前じゃないの。ピストルズ(Sex Pistols)の再結成とか。」

渋谷「日本で唯一、ツェッペリンの再結成を喜んでいない大貫憲章さんには分からないでしょうけれども。あそこからだよ。ツェッペリンの再結成から時代はクラシックロックに。」

大貫「そうですか。」

渋谷「昔のことしか知らない俺たち三人の時代だから。」

伊藤「本当ですかぁ。」

渋谷「AC/DCをかましたいんですけれども、何をいったらいいでしょうか。」

伊藤「リードトラックのこの曲を行きましょう。AC/DCでRock N' Roll Train。」



伊藤「曲がかかっている間に重要な会議をしましたが、クラシックロックでもモダンなものに対する若いファンの再評価というか。」

大貫「AC/DCのこの曲はモダンなんですか。」

渋谷「モダンでしょう。ツェッペリンも分からないからAC/DCも分からないんじゃないの。」

大貫「どこがモダンなのか君らに説明してもらおうと思って。」

伊藤「モダンっていうのは、AC/DCは30年以上同じことをやってるけれども、風化せず現在でも成立するロックって、別にモダンテクノロジーを使っているわけじゃないけれども。」

渋谷「さすが伊藤さん。そうだよ。本当に伊藤さんが言ったとおり、時代的な普遍性というのがキーだと思いますね。」

大貫「それならチャック・ベリー(Chuck Berry)も同じじゃないですか。」

渋谷「そうだよ。本当そうだよ。だから、クラシックロックの中でも風化してしまったものもあるけれども、そういう中でスタンダードとして残るAC/DC、ツェッペリン、クラッシュだってそうだと思いますが。」

大貫「ある種雛形は作れてるからね。」


カニエ・ウェスト(Kanye West)、歌はイマイチ

world rock now 20081212 

 カニエ・ウェストの最新作「808s & Heartbreak」を紹介したいと思います。まさにアルバムタイトルHeartbreakという言葉が入っているんですけれども、これは彼自身が婚約者と別れたということが大きなモチーフになっていますが、それよりも大きいのがもともと大学の先生をやっていたお母さんがカニエが芸能活動をすることになってマネージメントを手伝っていて、まだ56か57くらいの若い人だったんですが、ハリウッドの整形美容手術をやってその合併症かなにかで突然なくなってしまって、愛するお母さんを失ったということがものすごくカニエにとって大きい事件で、それがこのアルバムの基本的なトーンを決定している作品でございます。今までの華やかなカニエの佇まいよりももうちょっとセンチメンタルで、何よりも歌物の作品になっております。まずはアルバムのオープニングナンバーから聞いていただこうと思います。Say You Will。



 続いてはアルバムのエンディングナンバーを聞くんですが、ある意味一曲目とラストナンバーがこのアルバムの基本トーンを決定しているような気がするんですけれども、Coldest Winter、もっとも寒い冬というタイトルでございます。お母さんが亡くなったという話をしましたけれども、カニエ的にはハリウッドに来て成功して、それが彼女にものすごい高額の美容整形のチャンスを与え、それがあることによって彼女自身が死んでしまったという自責の念に彼は強くさいなまれていて、そうした思いがこのアルバムを作らせている大きなファクターにはなっているんですよね。そんなことを思いながらこのColdest Winterの詩の朗読を聞いていただきたいと思います。

  物悲しき夜僕は消えかかる
  彼女の愛は1000マイル向こう
  思い出は凍てつく冬に作られた
  さようなら僕の友達
  これから僕は愛するだろうか
  思い出は凍てつく冬に作られた
  午前四時僕は眠れない
  見えるのは彼女の愛だけ
  さようなら僕の友達
  これから僕は愛するだろうか
  春に雪解け水となるならば
  僕たちの過ちも全部洗い流してくれるのだろうか
  思い出は凍てつく冬に作られた
  さようなら僕の友達
  僕はもう二度と愛さない
  もう二度と



 かっこいいですよね。このトラックものすごいと思います。言っちゃいけないことなのかもしれませんけれども、歌がもうちょっとよかったらなぁっていう・・・。君の作ってるトラックは歌詞にものすごい歌唱力を要求してるんだけどなぁ。ちょっと歌いきれていないんじゃないかなぁと。でも、いままでのカニエとはまた違う形で、またいつものようにビックマウスのカニエ・ウエスト。「俺はこのアルバムを作ったのはチャートの一位になることだ」というようなことも言ってますけれども、彼自身の思いがこのアルバムの中に込められている、そんな感じがいたします。 
  

どうして世界中でAC/DCがこんなに盛り上がっているのか?

world rock now 20081107

 AC/DCでSpoilin' For a Fight。



 AC/DCの9年ぶりの新作。いまや世界中でAC/DCが盛り上がっております。世界の何十カ国でチャートの一位を獲得し、なんと日本でも邦楽と洋楽を合わせたチャートで3位。いったい世界はどうなってしまったのでしょう。ながくAC/DCを聞き、アルバムのライナーノーツも書いたことがある渋谷陽一としてはなんだかよく分かりません。なんでこんなにAC/DCが盛り上がる世の中になってしまったのでしょうか。その事態を把握できないまま、この最新作を聞いてすごいなぁと感心しているんですけれども、何なんでしょうかね。むしろ私はみなさんに聞きたい。なんでみんな急にAC/DCが好きになってしまったのか。もともとハードロックシーンを代表するバンドであり、アンガス・ヤング(Angus Young)
の独特のギタースタイル、そしてこの圧倒的なリフのオリジナリティーのグルーヴに基づくすばらしいハードロックワールドは古典として誰にも評価されて愛されているんですが、こんな世界中でナンバーワンになるのは、AC/DCの歴史の中でも最高の黄金期ではないだろうかというくらいな状況を迎えております。そして、「動けば雷電の如し」でございます。伊藤政則さんがライナーノーツを書いておりまして、そこの一番最初のコピーが「動けば雷電の如し」。意味が分かりません。けどなんとなくすごいなぁという感じなんですけれども、ものすごくこの作品がすばらしいものであるということを力を込めて書いているんですけれど、実際に聞いてみるとAC/DCは何枚も作品を出しておりますが、彼らの音楽的スタイルの中においてもこのみずみずしさというのはやはりちょっとすごいなぁと。なぜこの時期にこれだけのすぐれた作品が作られたのかというのはライナーやいろいろな資料等に書かれているんですけれども、ブレンダン・オブライエン(Brendan O'Brien)という大ベテランプロデューサーの力が大きいと誰もが認めているところでございます。彼が何をやったのかというと、AC/DCに多くの時間をあげて、彼ら自身のポテンシャルを十二分に出し切るようなレコーディングスタイルと曲作りのスタイルを与えたというのが大きかったようでございます。それにしても世界中AC/DCというこの状況は、長くみてる私としてはちょっと驚くと同時に、ロックの古典がこのような形で正しく繰り返されてものすごい熱狂をもって迎えられているということは幸福なことだなぁと改めてそんな感慨に浸りながら次に曲へとなだれ込みたいと思います。Rock 'n' Roll Train。



 すごいいいですよね。音のクリア度から途中で入ってくるアンガス・ヤングのギターソロのアプローチって、ものすごく古典的ではあるけれどもどこか非常にモダンな響きもあって、AC/DCが持つ普遍的なロックをそのまま体現しているなんともいえない独特のスタイルはあらためてすごいなぁと思います。でも、変わらないAC/DCでもコンテンポラリーな要素も自分たちなりに取り入れていくというのがすごい。でもそれを取り入れてもAC/DCがAC/DCであるところは全く揺らいでいない。そんな彼らのモダンでありそしてクラシックでもあるナンバーを聞いていただこうと思います。Anything Goes。




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